「岸辺の旅」を観てきました。
ストーリーは、
3年間行方不明となっていた夫の優介(浅野忠信)がある日ふいに帰ってきて、妻の瑞希(深津絵里)を旅に誘う。それは優介が失踪してから帰宅するまでに関わってきた人々を訪ねる旅で、空白の3年間をたどるように旅を続けるうちに、瑞希は彼への深い愛を再確認していく。やがて優介が突然姿を現した理由、そして彼が瑞希に伝えたかったことが明らかになり……。
というお話です。
夫が失踪してから3年、妻の瑞希は、ある日、不思議な感覚に気が付き、ふと見てみると、夫の優介が帰ってきます。帰ってきた優介に、何処に居たの?と聞くと、自殺をして、海の中で魚に喰われていると思うけど、3年かけて、ここまで帰ってきたと話します。死んでも、魂が残っていれば、フラフラと這い出て、人間として、色々な所で生活が出来たようで、たくさんの思い出と共に、瑞希のところに帰ってきたんです。
優介は、自分が帰って来るまでに滞在した場所へ案内したいから、旅に出ようと瑞希を誘います。そして、彼がたどった道を、2人で周って行きます。まず、古い町の新聞屋さん。新聞屋さんの島影は、新聞の配達の傍ら、妻を亡くして、一人、寂しく花の写真のコラージュを壁一面に作っていました。そんな島影の寂しさを紛らわす為に、優介は、一緒にここで少しの間、暮らしたのかも知れません。そして、島影の秘密が解っていきます。
次に、中華屋さんにお世話になっていたという事で、そこに行きます。そして、中華屋を手伝いながら、優介が、そこで何をしていたのか、話を聞いていきます。店主の妻・フジエは、心に昔の傷を抱いており、ある日、瑞希がピアノを弾いたことで、その傷が蘇えり、辛くなって行くのですが・・・。
次に、田舎の農村に行き、そこのお爺さんに迎えられて、しばらく滞在します。優介は、ここでちょっとした先生のような事をしていたらしく、沢山の人に好かれていたようです。農家の嫁・薫は、そこの長男の嫁でしたが、長男が突然の風邪で亡くなってしまい、まだ、それを引きずっています。そして・・。後は、映画を観て下さいね。
突然、帰ってきた優介に、瑞希は、あまり驚かないんです。不思議でした。彼女も、3年も待って、諦めていたのだと思いますが、幽霊として戻って来て、それを平然と受け入れるという彼女は、とても疲れていたのかも知れませんね。それとも、ちょっと壊れていたのかな。そして、2人?は旅に出ます。大体、死んでいるのに、幽霊として、働きながら、家に戻ってくるって、何なの?笑えました。
その出来事は、笑っちゃうような事なんだけど、映画の中で2人が演じていると、しっとりしていて、なんだか、それでも帰ってきたんだって感じで、感動してしまうんです。普通なら、幽霊が働いて帰って来る?って思うと、笑えるんだけど、感動してしまうって、不思議でした。
話を観て行くと、優介という人は、歯医者であり、不倫をしていたりしたようで、生きていた頃は、瑞希は苦しめられたのではないかなと思えました。そして、突然、失踪をしてしまった男なんて、早く忘れて、次に行けば良いのにね。でも、瑞希は、ずーっと引きずっていたんです。なので、もしかしたら、これは、瑞希が観た夢だったのかも知れません。それは、誰にも解らないけど、でも、この旅で、瑞希の心にも踏ん切りが付いたのは確かなのかなと思いました。それが、たとえ、一人で旅をしていたのだとしてもです。
私、思うんですけど、失踪するって、一番、卑怯なやり方だと思うんです。ちゃんと死ぬなら死ぬで、死体が見つかるところで死んで欲しいし、ただ逃げるのなら、逃げるから探さないで欲しいとか、一言書いていけよと思うんです。でないと、瑞希みたいに、どうしたのかなとずーっと思い続ける事になってしまいます。そんな生殺し状態を続けさせるなんて、酷い事です。
私が失踪するなら、ちゃんと離婚届に印鑑を押して置いて行くし、探さないでくださいって書いていきますよ。もし、夫が失踪したらどうしよう。忘れる努力をするかしら。でも、忘れられないんだろうなぁ。恨むかもね。瑞希は、優しく受け止めていたから、不思議でした。性格かしら。
そんなもやもやしたお話ですが、寄り添う2人の姿は、感動を与えてくれます。それは、瑞希の理想の夫婦の姿だったのだと思います。そんな事があっても、良いのかも知れませんね。
私は、この映画、お薦めしたいと思います。派手な映画ではありませんが、じわじわと感動が押し寄せてくるような、そんなお話でした。ただ、一つ言いたいのが、優介が自殺した理由が分かりませんでした。どこかで話していたのかしら。私が気が付かなかっただけかも知れませんが、どーも、そこが引っかかっていて、イライラします。まぁ、映画の内容としては、自殺の原因なんて、どーでも良いことなんですけどね。ぜひ、観に行ってみて下さい。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
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