「GIVER ギヴァー 記憶を注ぐ者」の試写会に連れて行って貰いました。
ストーリーは、
文明が荒廃した社会から、人類は完全に平等で争いもない平和な理想郷を作り上げる。その社会で育ち次世代に記憶を伝える「記憶を受け継ぐ者」に選ばれたジョナス(ブレントン・スウェイツ)は、全ての記憶を持つ「記憶を注ぐ者」(ジェフ・ブリッジス)と対面したことで、恐れや憎悪といった人間の本能的な感情や、理想社会に隠された暗い過去に気付いていく。社会の秩序を守る主席長老(メリル・ストリープ)は、そんな彼の存在を注視しており……。
というお話です。
これは、SF児童文学が原作だそうで、本格的SFを観慣れてしまっていると、ちょっと物足りない感がありますが、話としては、とっても深い事を伝えようとする内容なので、面白いと思いました。この映画というか、この原作が、何を子供たちに訴えたいのかっていうことを、良く考えて観て欲しいなと思います。
荒廃した世界を経て、人類は完璧な世界を求めて理想郷を創り上げます。そこは、人種の差別も、肌の色の違いも、宗教も無く、全てが平等となった世界。人口も管理され、愛という言葉も忘れ去られ、人々は、感情もありません。一見、面白く無さそうですが、争いは無く、穏やかな生活を送る人々が、そこには住んでいます。
彼らは、ある年齢に達すると、職業任命をされて、それぞれの適正職業を任命されるのですが、ジョナスは、最後まで任命されず、最後に”ギヴァー”を任命されます。ギヴァーとは、記憶を受け継ぐ者であり、平和な世界で、過去の記憶を捨て去った人間の中にあって、1人だけ、記憶を受け継ぐことを許された者なんです。
ジョナスは、次期ギヴァーとして、今のギヴァーから記憶を受け継ぐ仕事に就き、毎日、ギヴァーの元へ通う事になります。ギヴァーは、他の人間には許されない感情を持つことを許され、嘘を付くことも許されます。そして色彩も持つことになります。今までの生活とは、全く違う道を歩き出すジョナスは、感情を手に入れ、段々と自分が今まで住んでいた世界が、間違っていたと言う事に気が付いていきます。
同時期に、ジョナスの家族ユニットに、ゲイブという赤ちゃんが預けられます。ゲイブは、他の子供に比べて、発育不全であり、感情の起伏が激しいようなので、ゲイブの父親にしばらく預けて様子を見るということなんです。良く見ると、ゲイブにはジョナスと同じ位置に痣があり、ゲイブにもギヴァーとしての資質がある事に気が付きます。だから、感情の起伏が激しいんです。
ギヴァーから受け継いだ記憶が溢れるほどあるのに、誰とも、それを共有出来ないジョナスは、その感情を抑えきれなくなり、幼馴染のフィオナへの恋愛感情を、彼女にぶつけてしまいます。戸惑うフィオナですが、ジョナスに言われた通りに、薬の投与を辞めてみると、彼女もジョナスの気持ちが理解出来るようになって行きます。
そんな時、ゲイブが発育不全と診断され、”解放”される事となってしまいます。ジョナスは、ゲイブを”解放”から救う為に、フィオナに協力を頼み、ゲイブを奪還し、コミュニティーの外へ出て行こうと決意します。そして・・・。後は、映画を観て下さいね。
一見、「天空の城」的に見えるコミュニティーに住む人々。そこには、戦争は無く、争いも無く、そして感情も無いんです。戦争はイヤだけど、でも、感情を失くさなければ争いを失くせないなら、私は、感情を持って、争いのある世界を望みます。でなければ、生きている意味がないでしょ。
でもね、感情があれば、怨みも妬みもある訳だし、勝者が居れば敗者も居るんです。アンブレイカブルですよね。悪人がいるからヒーローも居るけど、ヒーローが居るから悪人も居るんです。人間が感情を持って生きていれば、そこに、必ず争いが出てくるのは必然であり、それを止める術はありません。
凄く難しい問題ですよね。だって、何処まで考えても、答えは出ないんですもん。それを児童文学で描いているなんて、素晴らしいです。子供の頃から、こういう問題を考えていれば、いつの日か、やんわりと解決出来る術が見つかるかも知れません。争うなとは言いません。争って、勝ち負けがあって良いんです、人が傷つかなければ。争いが、人間を高みに上げて行くのですから。
それにしても、児童向けということで、SF的な設定が曖昧でしたね。その地域をバリアーらしきもので囲って、管理社会を築いているというのですが、その原理も良く分からないし、それを破ると、人々の感情が湧いてくるみたいなのも良く分からなかったです。記憶を継ぐというのも、超能力で映像を見せているだけみたいで、それなら、データ映像を見せればいいだけじゃんって思ったのは私だけなのだろうか。やはり、SF映画と思って観ると、話が粗いなと思います。
またも、パクリじゃないの?と思ったのは、日本の漫画「樹魔・伝説」の「伝説」の方で、同じような設定があるんです。管理社会のコミュニティーがあり、そこで、主人公が、赤ちゃんの中に、他と違う反応をする子供が居る事に気が付きます。それは、人間の精神の限界のストレスがバリアとなって地球全体を包み、人間が宇宙に出れないように自分たちで封印していて、そのストレスを打ち破る新人類として産まれてきている赤ちゃんたちが居ると言う事なんです。
このギヴァーも、ゲイブという赤ちゃんがキーとなっているし、バリアーという設定も、主人公が外に出て行くという設定も一緒かなと思って、ちょっと驚きました。日本の漫画は、1980年に描かれているので、この原作の10年以上も前です。まぁ、オリンピックのシンボルデザイナーと同じで、見た事も無く、SFと言えば、同じような設定が沢山出てくるんだと言われてしまえば、そうなんですが、日本の漫画家は、随分前に、もっと細かい設定で漫画を描いているんだよと、ちょっと誇らしく思っただけなんです。
私は、この映画、お薦めしたいと思います。争いと人間らしさを天秤にかけて、子供に分かり易く、人間とはという事を解いていて、面白いと思いました。大人にも、とても分かり易いと思います。ぜひ、観に行ってみて下さい。
ぜひ、楽しんできてくださいね。![]()
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