「野火」を観てきました。
ストーリーは、
日本軍の敗戦が濃厚になってきた、第2次世界大戦末期のフィリピン・レイテ島。1等兵の田村(塚本晋也)は、結核を発症したために部隊を追われて野戦病院へと送られてしまう。だが、病院は無数の負傷兵を抱えている上に食料も足りない状況で、そこからも追い出されてしまう羽目に。今さら部隊に戻ることもできなくなった田村は、行くあてもなく島をさまよう。照りつける太陽、そして空腹と孤独によって精神と肉体を衰弱させていく田村だったが……。
というお話です。
第二次世界大戦末期、フィリピン・レイテ島。一等兵の田村は、結核で病院に送られるも、怪我人でいっぱいの病院に出て行けと言われ、行くところも無く、島内をうろつきながら、食べるものを探し、彷徨っています。もちろん、米兵に見つかったら殺されてしまうので、探りながら、隠れながら、野山を進んでいきます。しばらく行くと、どこかから煙が出ているのを見つけます。そこに食べるものがあるのかと思い、銃を構えて近寄って行くと、現地人が教会に入って行くのが見えます。
田村は、教会に押し入り、現地人に銃を向けると、女が悲鳴を上げ続け、あまりの大きさに、田村は、女を撃ってしまいます。そして、殺したのを見た男も、撃ってしまいます。そして田村は、教会の中に食糧は無いかと探し始めると、床下に塩があるのを見つけ、それを奪って、また森へ逃げます。
森の中で、芋を掘って、何とか飢えを凌いでいると、5人ほどの日本人部隊に出会います。そして、日本軍はレイテ島のある浜に集まるようにとの命令が下っているから、そこに向かえと言う命令を受け、その部隊に合流し、一緒に浜へ連れて行って貰うことにし、森の中を、黙々と歩き始めます。
歩く先々で、日本兵の死体が転がっているのを見て、その酷さに目を背けながら、また先を急いで浜へ向かいます。そして・・・。後は、映画を観て下さいね。
この映画、悲惨な状況が描かれていて、どう感想を書いてよいのか、良く分かりません。「野火」という原作は、50年前に市川監督が映画にしているようですが、今回は、塚本監督が、リメイクでは無く、原作から感じたものを、映画として描いたそうです。なので、以前の映画とは、違うものと思った方が良いのかも。まぁ、私は、昔の映画は観た事が無いので、比べられませんが。
主人公の田村という男は、とても真面目な男なんです。仕事を聞かれて、物書きをしてましたと答えているので、あまり兵隊には向いていない男だったと思われます。そんな男が、何も無い地で、生きる為に、銃を持ち、人を殺めてまで食べ物を手に入れようとしてしまうまで、追い詰められるんです。それまでは、自分が食べる分まで、人に与えてしまうほどの御人好しなのに、段々と悲惨な状況の中で、人間から恐ろしいものに変わってしまうんです。
そして、他の日本人が、恐ろしい事をしている姿を見ると、自分の狂気を思い知り、なんとか人間であり続けなければならないと思ってみたりと、正常と狂気の間を行ったり来たりしているのではないかと思いました。何故だか、日本人以外を、人間と思わなくなって行くんですよね。同じ形をしているんだから、何でと思うのですが、そこが狂気というものなのかな。人を食べるなんて、信じられないけど、生きる為には仕方ないと思って、そうするのかしら。いやぁ、やっぱり、無理だと思うんだけどなぁ。
最後には、同胞だってなんだって、生きる為なら殺してやるって感じになって行くんです。ただ、残酷になるだけでは無く、狂っているんです。精神が、壊れているんです。もう、戦争というものが、どれだけ、人間を狂わせていくのかという事が、あまりにも生々しく描かれているので、実は、途中で、あまり観たく無くなりました。残酷なホラーは、全然、大丈夫なのですが、こういうリアルなものは、やっぱりキツいです。人間が、撃たれて、バラバラに壊れて行くのを見せられたら、そりゃ、キツいでしょ。笑えるホラー映画とは違いますもん。
この映画、素晴らしいとは思うのですが、人に薦めて良いのか、私には判りません。戦争の悲劇と現実を突きつけている映画だと思いますし、映画としても、良く、ここまで描いたなとは思うのですが、この恐ろしさは、誰もが観て感動するというものでは無いような気がしました。気分を悪くする人もいると思うのです。だから、簡単には薦められません。残酷な現実を受け止める気持ちを持てるならば、観て頂きたいと思います。
最後に、戦争は、何があっても、やってはいけないと思います。だから、周りの国が武器を持って、向かってこないように、ちゃんと日本も準備をすべきです。決して、戦争にならない為に、それなりの装備をして、相手が恐がって攻めてこれないようにすべきなんです。防御が完璧なら、戦争にはなりません。強い国を造って欲しいと思います。侵略しない、侵略されない国を。
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