フランス映画祭で「ヴィオレット」を観てきました。
ストーリーは、
、“ボーヴォワールの女友達”と呼ばれた実在の女性作家、ヴィオレット・ルデュックの半生を描いた感動作。ボーヴォワールに才能を見いだされ、パリ文学界に大きな衝撃を与えるものの、当時の社会に受け入れられず、愛を求める純粋さゆえに傷ついた彼女が、やがてプロヴァンスの光の中に幸福を見いだすまでを、生涯にわたり続いたボーヴォワールとの関係を中心に描く。背景となる40~60年代、サルトル、コクトー、ジャン・ジュネが出入りする出版社ガリマールなど当時の文学界の様子や戦後パリの新しい文化の胎動も見所の一つで、ヴィオレットのフェミニンなファッションとボーヴォワールのシックなファッションとの対比も大きな魅力。
というお話です。
ボーヴォワールやサルトルと言えば有名ですが、彼女とつるんでいたというヴィオレット・ルデュックという小説家が居た事は、全く知りませんでした。この映画で初めて知り、調べてみたのですが、日本で彼女の小説を読もうと思っても、廃盤では無いようですが、手に入れるのは難しいようです。再版してくれると良いのですが・・・。この映画がヒットすれば、読めるようになるかも知れませんね。
主人公のヴィオレットは、シングルマザーから産まれ、母親は生活をする為に、直ぐに男を探しに行き、彼女は祖母に育てられます。母親は、ヴィオレットに、何故か触ろうとせず、彼女は母親に認められないというトラウマを持ってしまいます。この頃から、誰からも愛されないという思いに付きまとわれていたヴィオレット。
戦争に入り、モーリスという小説家と出会い、彼と偽装結婚をして疎開します。何故偽装なのかと言うと、モーリスはゲイであり、女性に興味が無いんです。でも、ヴィオレットは、彼に恋をしてしまい、愛を求めてしまいます。モーリスは、男女の愛は無理だと言い、その不満を書くこと(小説を。)に向けなさいと言われ、文章を書き始めます。
そんな関係も終わり、戦争も終わって、パリで生活を始め、自分の作品をシモーヌ・ボーヴォワールに読んで貰いたいと思い、ちょっとストーカーもどきの行動でボーヴォワールを付け回し、彼女の自宅を訪ねて、自分の作品を読んで貰いたいと頼み込む。シモーヌは、ヴィオレットの作品を読み、優れた小説家だと見抜き、彼女をパリの小説家仲間に加えて、その作品を世に知らしめようと奮闘するのですが、商業的には成功しません。
ヴィオレットの作品は、コクトーやジャン・ジュネ、ゲランなどにも絶賛されているのですが、まだ、一般市民が読むには、内容が進み過ぎていて、受け容れられなかったんです。この時代、まだ女性は解放されておらず、男性の付属品的な扱いをされていました。それに対して挑んだフェミニズム運動を、ボーヴォワールは先頭に立って訴えていたんです。ですから、ボーヴォワールは、ヴィオレットの作品を理解し、彼女の後押しをしたのだと思いました。
ボーヴォワールの後押しがあり、本の出版もされるのですが、世間からは認められず、ヴィオレットは、ついに、精神的に追い詰められてしまい、精神病院に入る事になります。病院で、段々と安定していき、母親もヴィオレットの世話をするようになり、退院する事になります。そして、ヴィオレットは、プロヴァンスの田舎に安息の場所を見つけることに・・・。後は、映画を観て下さいね。
ヴィオレットという人物は、男性でも女性でも、性別は関係無く、愛してしまうようでした。最初に出会うモーリスへの愛は受け入れられず、ボーヴォワールへの愛も報われず、レンガ職人と関係を持ったりするのですが、それにも満足せず、何処までも愛を求めて行くタイプなんです。それは、子供の頃から、母親に愛されなかったことが原因になっていて、それは彼女の最後まで続いて行く事なんです。
彼女の書く小説も、その愛故に、激しい、内面から吐き出される赤裸々な文章であり、性描写なども、この時代の社会では、受け容れられなかったのだと思います。今、読んでみると、どおって事無い文章なのだと思うのですが、その時代、女性が女性の性描写を描くなんて、許されなかったのだと思いました。

そして、ヴィオレットが卑屈になってしまう要因が、容姿だったようです。彼女は、それほど美しい人では無く、ボーヴォワールなどと並ぶと、貧相な女性に見えたようです。この映画では、あの美しいエマニュエル・ドゥヴォスが、監督に言われて、醜い女性に変身して演じているんです。でもね、容姿は醜く見せているのですが、ドゥヴォスが演じる事によって、ヴィオレットの奥深い美しさとオーラが見えてくるんです。これは、凄いなと思いました。演じる人によって、容姿では無い美しさを表現する事が出来るんだなって思いました。
ああー、もっともっと、書きたいことが沢山あるんだけど、長くなり過ぎてしまうので、ここら辺で止めておきます。この映画、マジで良かったです。またも超!超!お勧め作品の1作になりました。こんなにも魅力的な小説家が、あの時代に、ボーヴォワールやサルトル、コクトーたちと一緒につるんでいたのかと思うと、もっと早く知りたかったなぁと思う次第です。彼女の小説は、超エロそうだもんなぁ。ぜひ、この作品を観に行って、この時代の才能豊かな人々に思いを馳せてみて下さい。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
P.S : 公開する劇場がまだ少ないようなので、ぜひ、皆さんで、色々な所で上映して欲しいと盛り上げて下さい。沢山の人に観て欲しいな。そろそろ第3の性の解放が来そうな時代なので、まず、ボーヴォワールの第2の性に触れてみるのもいかがでしょうか。
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