フランス映画祭で、「アクトレス 女たちの舞台」(原題は、シルス・マリア)を観てきました。
ストーリーは、
映画界でその名をとどろかすマリア(ジュリエット・ビノシュ)は、マネージャーのヴァレンティーヌ(クリステン・スチュワート)と一緒に仕事に励んでいた。そんなある日、マリアは若いころの出世作のリメイク版への出演をオファーされるが、彼女が演じた若き美女ではなく、ヒロインに振り回される中年上司役だった。リメイク版の主役には、ハリウッドの新進女優ジョアン(クロエ・グレース・モレッツ)がキャスティングされていて……。
というお話です。
有名女優のマリアは、ある映画祭の賞を受取る為に列車に乗っています。その賞は、マリアの出世作を書いた作家の代わりに受け取るためなんです。長年、作家と親交を続けていたマリアは、その列車の中で、作家の死を知らされます。驚いたマリアは、作家の妻に連絡をすると、終わったら来て欲しいとの事だったので、映画祭が終わって直ぐに向かうと、妻は、マリアに、心臓発作では無く、自殺だったという事を話します。取り残されたような気持ちになるマリアですが、気持ちを切り替え、次の仕事に向かいます。
次の仕事のオファーは、昔、自分の出世作となった作品のリメイクであり、昔、彼女が演じた若き野心的な女性ジグリッド役では無く、彼女に振り回される中年上司のヘレナ役。今の年齢からすれば、それは、妥当な役なのですが、それを受け入れる彼女の心境はとても複雑なもので、マネージャーのヴァレンティーヌに当たったりしてしまいます。
マネージャーのヴァレンティーヌは、誰よりもマリアを理解しており、彼女を尊敬していて、彼女の為になるように仕事を進めて行こうとするのですが、大女優ですから、それなりに見栄もあり、プライドもあり、その対処は、とても難しいものでした。それでも、ヴァレンティーヌは、その場その場で対処し、マリアをサポートしているのですが・・・。
一方、オファーを受けたリメイク作品の相手役は若手女優のジョアンが決まっており、彼女とのリハーサルが迫る中、ジョアンは、不倫スキャンダルが浮上し、マスコミに追われることに。その影響をマリアも受けて、微妙な距離でリハーサルに入るのですが、女優同士の対決はスキャンダルなど関係無く、その対比をあからさまに表していく。そして・・・。後は、映画を観て下さいね。
ジュリエット・ビノシュとクリステン・スチュワートとクロエ・グレース・モレッツという、3人の女優が入り乱れて、どの絵を切り取っても、美しくて、強い印象を残すものばかり。そして、今回、これは上手いというのが、クリステン・スチュワートです。彼女は、今回、裏方の人物の役なのですが、その強いオーラを抑えて、マリアという女優のマネージャーの立場を崩しません。ある時は影のように、ある時はボディーガードのように、ある時は娘のように、マリアに付き添って、マリアを輝かせるために行動します。それは、徹底していて、素晴らしいと思いました。
クロエ・グレース・モレッツ演じるジョアンは、マリアとは対照的に、若く、輝く存在であり、若手の女優に有りがちな、自由奔放で、自分の美しさに敵う者は無いと思って、強く、無礼で、相手をねじ伏せるように前に出てくる存在であり、クロエも、ジュリエット・ビノシュ相手に、すごい戦いを挑んでいます。この対決は、凄いと思いました。
もちろん、この若手女優2人を相手に、強く、静かに、そして輝く月のように佇むのが、ジュリエット・ビノシュ演じるマリアです。やっぱり大女優だと思ったのは、2人を見る目の中に、優しさがあるんです。役の上で、敵対したり、従えたりという場面があり、強い怒りを持つ場面もあるのですが、そこには、何ものにも動じない強さと優しさと、そして哀しさがあって、誰もが年を取るという事を理解し、受け容れている姿がそこにあるんです。やっぱり凄い女優さんなんですね。
この3人の対決は、素晴らしいです。しかし、内容に関しては、ちょっと不満だったかな。ドラマチックなんですけど、もう少し、亡くなってしまった作家との関係を分かり易くして欲しかったかな。そして、マネージャーのヴァレンティーヌとの事も、突然に起きてしまって、そのままなので、どーもしっくり来ていません。もちろん、解る展開ではあったのですが、イマイチ、物足りないんです。ジョアンとの話は、若手女優との対比として、面白いと思いましたが、キッついなぁ~っていう最後だったので、助けて~って思ってしまいました。これが現実なのでしょうが、私の年齢だと、マリアの気持ちが痛いほど解るので、辛かったです。
私は、この映画、お勧めしたいと思います。内容は、ちょっと難しくて、キツい映画ですが、大女優3人の対決は、見ものです。これは、見逃してはイケません。スイスのシルスマリアという美しい風景が、そのドロドロした対決を、清々しい空気で癒してくれるので、とてもバランスの良い映画だと思います。ぜひ、観に行ってみて下さい。今年の10月に公開予定です。
ぜひ、楽しんできてくださいね。