イタリア映画祭で「われらの子供たち」を観てきました。
ストーリーは、
売れっ子弁護士と献身的な小児科医の兄弟は、気質も生き方も対照的で、妻同士も争いが絶えない。しきたりに従って月に1回は高級レストランに集まる4人だが、ディナーの席でも会話はかみ合わない。そんな二つの家族に重大な問題が起こり、難しい選択を迫られることになる。アレッサンドロ・ガスマン、ジョヴァンナ・メッゾジョルノ、ルイージ・ロ・カーショ、バルボラ・ボブローヴァの豪華キャストが円熟の演技を見せる。
というお話です。
この映画、とても骨太で、考えさせられるお話でした。弁護士と医者の兄弟は、全く性格も何もかも違います。兄は、弁護士であり、正しい事をしていると言いながら、結構、汚い仕事もしているようで、弁護士としての腕は良いものの、憎まれる事も多いようです。一方、医者の弟は小児科医であり、誰からも信頼される良い医者であり、利益を追うような人物ではありません。
そんな二人の子供たちは仲が良く、現代っ子らしく、流行りの動画サイトで残酷な映像を楽しんだりしているような子供たちです。ある日、二人は遊びに行き、酷い事件を起こしてしまう。もちろん、そんな事を親には話さないのですが、防犯カメラの映像がTVで放映され、警察には解らないものの、親たちには解ってしまいます。
映像を観た弟夫婦は、驚き、息子を警察に連れて行くべきなのか、警察に見つからないように隠すべきなのか迷います。息子の為には、罪の重さを解らせた方が良いのかとも思うのですが、一度、犯罪歴が付いてしまうと、息子の未来に傷がつくとの思いがあり、簡単に答えを出すことが出来ません。
一方、兄夫婦は、娘が犯罪を起こしたと知るのですが、何かの間違いでそうなってしまったと考えて、娘はやりたくてやった訳では無いと納得しようとします。しかし、心の中には、不安と疑心という思いがあり、とても悩みます。
二つの夫婦が出した決断とはなんだったのか。そして娘と息子が起こした事件の真実とは何なのか、それは、映画を観てくださいね。
この映画、とても考えさせられました。自分の子供が犯罪をしてしまったら、親はどうするべきなのか。普通に考えれば、警察に連れて行き、出頭させるのが道理だとは思います。相手が死んだりしたら、なおさらだとは思うのですが、こと、自分の子供だと思うと、常識が見えなくなるんです。そりゃ、そうですよ。まだ10代の子供が逮捕されたら、どんなに未成年だから名前は出ないと言っても、生涯、その犯罪が付きまとう事になるんです。名前が出なくても、その地域では、解っちゃいますもんね。
守りたいと思っても、子供の教育としては、悪いことをしても罪に問われないという前例を作ってしまうことになるので、それも子供にとっては悪い事ですよね。大人になったら、責任を取るという事を知るべきなのに、責任を取らなくて良いと勘違いさせてしまいます。それって、子供を守ることにはならないような気がするんです。
出頭させても、隠すにしても、どちらも子供の為にならないように思ってしまう。自分の子供の事となると、こんなにも、周りが見えなくなってしまうんですよね。常識が解らなくなってしまうんです。とても常識的な真人間の大人たちが、どんどん違う方向に考えが行ってしまう。それって、とても身に詰まされることだと思いました。悩むよねぇ。
死んでしまった人の事を考えたら、やはり子供に罪を償わせるのは当たり前の事なんですけど、それが、今回は、浮浪者で、身元の特定も出来ない人物となると、誰も困る人が居ないのならって思ってしまうのかも知れません。でも、同じ人間の命なんですけどね。不思議です。この話は、どんなに考えても、答の出ない事だと思いました。今、この感想を書きながらも、どうするのが正しいのか、解りません。
そして、映画の中でも、ハッキリした答えは出ていないと思います。これは、観る人にどうするべきなのか、考えさせる映画なのだと思いました。
兄の弁護士は、人の罪を軽減させるために色々な裏工作をするような敏腕弁護士なのですが、こと自分の子供の事になると、そうすべきなのか、とても悩みます。そして、ある決断をするのですが・・・。ここで、少しネタバレをさせていただきます。何故なら、鑑賞後のトークセッションにて出た質問で、理解出来ていない人がいたので、あー、なんで気が付かないんだろうって残念に思ったので。
ここからネタバレです。
ある決断をした兄は、レストランの外で立ち止まっていると、車に轢かれます。轢かれたところは映像にありませんが、音だけするんです。これは、きっと、映画の最初の事件で被害にあった男性と子供の家族が、犯人の罪を軽減してしまった弁護士への復讐だったのだと思います。罪を認めようと考えた矢先に、罪をごまかしてしまった報いを受けたのだと思います。これ、すごいショッキングでした。でも、良く出来た話でしょ。
私は、この映画、すごくお勧めしたいと思います。でも、日本公開するのかな。これは、ぜひ、公開して貰いたい作品だと思います。この内容は、国など関係なく、誰にでも問題を定義していて、考えてみるべきお話だと思ったからです。ぜひ、観てみて欲しいです。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
イタリア映画祭 http://www.asahi.com/italia/2015/