イタリア映画祭で「緑はよみがえる」を観ました。
ストーリーは、
2014年が第一次世界大戦開戦から100年にあたるのを機に、戦争を非難し平和を願って作られた『木靴の樹』『ポー川のひかり』の巨匠オルミ監督の新作。1917年の冬、激戦地の一つだった北イタリアのアジアーゴ高原における一夜の戦いが描かれる。前線のイタリア軍は大雪で覆われた塹壕の中にこもり、オーストリア軍と対峙していた。寒さや飢え、病気に苦しむ中、司令部からは不条理な命令が下され、オーストリア軍からは容赦ない攻撃を受ける。
というお話です。
第一次世界大戦中、北イタリアのアジアーゴ高原での戦いを描いています。塹壕の中で、栄養も悪く、薬も無く、戦いに疲れ、ボロボロになった兵士たちは、風邪で半数ほど倒れて、寝込んでいます。残った半数も、疲れ切り、無謀な戦いなど放棄したい気持ちになっているんです。
そんな時、司令部から、幹部がやって来て、狙撃兵が狙っている場所を通り、通信を行う事という、訳の解らない、無理な命令が下され、現地を知っている兵士たちが無理だと話しても、命令を聞かなければ命令違反として裁くと言います。命令を聞いて外に出ても、狙撃兵に殺され、残っても命令違反で裁かれるという状況で、どうにもならず、仕方なく出て行く兵士や、自殺をする兵士など、酷い状況になって行きます。
これでは、どうしようもないと話している所に、敵からの砲撃が始まり、塹壕に激しい攻撃が始まります。次々とやられて行く兵士たち。そして・・・。後は、映画を観て下さいね。
この映画、実際にあった戦いを描いていて、戦争の不条理さを良く描いていると思いました。だって、誰が考えても、現場で状況を知っている人間の判断が正しいですよね。それなのに、現地を全く知らない司令部が指令を下していくという、ダメダメな戦い方を平気でしてしまうところが、酷かったんだなって思いました。
寒い中での戦いなので、次々と風邪をひいてしまい、兵士がバタバタ倒れて行くんです。せめて薬があれば、何とかなるのに、それも来ない。寝ているだけで、栄養の良い物も与えて貰えず、もう、死ねと言われているようなものじゃないですか。なんでこんな戦争をしちゃったんでしょうね。まぁ、その時代だし、仕方ないとは思いますが、今考えても、無駄な戦いだったんだよなって思います。
酷い中でも、兵士たちの心には、ちょっとした優しい心が残っていて、ご飯を少し残して、ネズミちゃんにあげたり、どんな場所でも、人間としての心を忘れなかったところが、素晴らしいと思いました。とても人間的な兵士たちを、人間とも思わずに、簡単に命令を下す司令官たちの非情さというか、無知さに驚きました。大体、見ればわかるでしょ!もう、無理だってことがっ!撤退でしょ、撤退っ!!アホかって言いたくなりました。
そんな人間たちを静かに見ている周りの自然が美しくて、良かったです。息遣いが聞こえるような静寂さの中に、佇んでいる木々と、何事も無かったかのように餌を探す動物たち。人間たちの戦いなど、どこ吹く風という感じで、自然にとっては、意味の無い、邪魔なものなんです。人間は、死んで、壊れて行くのに、自然は、何があっても、また蘇り、同じように、美しく、そこに佇んでいくんです。
人間の哀しさと自然の美しさの対比が、とても美しく感じました。この北イタリアという地方は、本当に美しい自然が多いそうです。ここに収められている映像も、すべて加工はしていなくて、そのままのものであり、色彩だけ、ちょっと手を加えて、単色にしてあるということでした。この単色使いも上手いと思いました。

私は、この映画、お勧めしても良いと思います。でも、全ての人にはダメかな。戦争の一夜の出来事であり、凄い展開のある映画では無いので、単館系が好きな方にのみ、お勧めいたします。何か、大きな出来事などが無いとつまらないという方には、ちょっと無理だと思います。ぜひ、観に行ってみて下さい。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
P.S : 来年、日本公開が決まっているようです。
イタリア映画祭 2015 http://www.asahi.com/italia/2015/