「ジミーとジョルジュ 心の欠片を探して」を観に行ってきました。
ストーリーは、
アメリカ・モンタナ州で生活しているネイティブアメリカンのジミー(ベニチオ・デル・トロ)は第2次世界大戦から帰還後、原因のわからない諸症状に悩まされ軍の病院に入院する。そこで人類学者でもある精神分析医ジョルジュ(マチュー・アマルリック)と出会い、対話診療を繰り返すうちにジミーは自らの心に潜む闇と向き合うことになる。やがて二人は、患者と医師という立場を超越した友情を育んでいき……。
というお話です。
モンタナのネイティブアメリカン(先住民)のジミーは、戦争で頭に傷を追い、帰還してきた。その傷のせいなのかわからないが、酷い頭痛と身体の不調を訴え、軍の病院に入院する事になる。病院では、頭の傷から何から、沢山の検査をしてみるのですが、ジミーの頭痛の原因を掴む事が出来ません。精神面から痛みが来ているのではないかと考え、病院側は、人類学者であり先住民に詳しいジョルジュを呼び寄せることとします。
ジョルジュはフランス人として生きていますが、本当はハンガリー系ユダヤ人であり、過去を隠して生きています。精神分析医としてジミーとの対話を進めて行くジョルジュですが、ジミーの中に、幼少期からの女性に対してのトラウマがある事に気が付き、母親との確執、姉との関係、17歳の時の恋愛、戦地へ行く前の結婚など、彼が女性と接した話を全て聞き、彼が女性に対して、強く出る事が出来ず、抑えてしまう事が、自分を追い詰めていると解ります。
その女性に対して抑えるという性質は、先住民として生きている彼らが、表向きは手厚く保護されているように見えていても、何をやるにも許可が必要だったり、いつも先住民だという先入観で見られている事が、起因しているようでした。
ジミーの頭痛の原因が、”心的外傷”と分かり、ジミーとジョルジュの対話も最終段階に差し掛かっていた。2人は、医者と患者という関係以上の友情を築き、今後もその関係は続いて行くのだろう・・・。後は、映画を観て下さいね。
この映画、あらすじを書いて簡単に伝えられる内容ではありません。戦争での心の傷、人との関わりの心的外傷、狭いコミュニティー(先住民)での確執、アメリカでの先住民の扱われ方、という、沢山のアメリカの問題を含んでいます。だから、ただ、表面上のジミーとジョルジュの会話を見て、精神分析医と患者としての関係を観ているだけでは、内容が全く伝わらないと思います。
私も、ネイティブアメリカンとアメリカ人の関係、戦後のユダヤ人の立場など、解らない事が多かったので、この映画のパンフレットを購入しました。これは、原作を読むか、パンフレットで勉強をしないと、解読出来ない映画だと思います。
ただ、ネイティブアメリカンと言っても、部族によって上下があり、その部族の中でも優劣があるのです。アメリカ人に差別されるだけでなく、同じネイティブアメリカンの中でも差別があるんです。そして、ジョルジュは、第二次世界大戦で苦しい思いをしたユダヤ人であり、その歴史を隠す事により、安心感を得ているんです。社会にはびこる差別、迫害など、沢山の内的要因を含んだ、ジミーとジョルジュの会話なんです。
そして、ジミーもジョルジュも、女性が好きでありながら、信用が出来ない立場にあり、それがトラウマになって心に残っています。心は繊細なものだから、どうしても傷つくのですが、それに対処出来る強い心を持てるよう、自分の心と相対して、理解して、受け止める事が大切なんです。2人も、自分がトラウマを抱えている事を受け入れ、それは仕方のない事だと受け止める事により、対処が出来るようになるんです。それは、誰もが必要な成長なのではないでしょうか。
この映画、とても難しいと思いますが、私は、とてもお勧めしたいと思いました。もし、出来れば、映画のパンフレットか原作本を読んで、この映画を観ると、より理解が深まると思います。民俗学、精神分析学など、沢山の要素が詰まっているので、簡単には解明出来ませんが、観ていると、とても面白くなって行くと思います。1本の映画で、戦争の歴史、アメリカの歴史、インディアンの歴史、精神医学の歴史が解って来るので、それが理解出来てくると、本当に面白い映画だと思いますよ。ぜひ、観てみて下さい。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
・ジミーとジョルジュ 心の欠片を探して@ぴあ映画生活
- ジミーとジョルジュ 心の欠片を探して [DVD]/パラマウント ホーム エンタテインメント ジャパン
- ¥4,298
- Amazon.co.jp
原作本は、現在、販売されていないようで、国会図書館にあるようです。
G.デヴエロー著
「夢の分析:或る平原インディアンの精神治療記録」