「悼む人」を観てきました。
ストーリーは、
不慮の死を遂げた死者の追悼を目的に、全国の旅を続けている坂築静人(高良健吾)。そんな彼の行動を疑問に感じる雑誌記者の蒔野は、その真意を暴くべく静人の周囲を調査する。一方、過去に殺した夫の亡霊につきまとわれる奈義倖世(石田ゆり子)は、出所後に訪れた殺害現場で静人と出会い、彼の旅に同行する。
というお話です。

静人は、新聞などから人々の死の情報を手に入れ、死んだ人を悼む旅をしています。雑誌記者の蒔野は、荒っぽい犯罪ギリギリの取材をして、下品な記事を書くことで有名な記者です。蒔野は、ある事件の取材をしている時に、死んだ人を悼む旅をしている男性が居る事を聞き、興味を持ちます。何の目的も無く、他人の為に、その死を悼んで旅をするなんて、理解が出来なかったからです。
蒔野は、静人の事を”悼む人”という名前で呼び、ネットで彼の情報を探し始めます。今、何処に居るのか、誰を悼んでいるのかを知る為にです。静人は、旅の途中で、夫を殺したという女性・倖世と出会い、倖世も、静人のやっていることに興味を持ち、彼の旅に同行することしします。

一方、静人の自宅では、ガンで余命少ない母親と、母親を深く愛している父親、そして妊娠しているのに相手の男性と別れる事になってしまう姉が暮らしています。死が近い母親と、新しい生命を宿っている姉。命が尽きた人を悼んで周る息子。それぞれに、自分が愛だと信じることをして、その命を大切に思っているんです。
静人に同行している倖世は、悼んでいる彼を理解しようとするのですが、愛があるなら殺して欲しいと夫に強要されて殺した、という過去を持つ倖世は、その死を悼んで忘れないと話す静人をいつまでも理解する事が出来ません。

それぞれの登場人物が、死というものに近づき触れて、命というものの大切さとか、人間が生きるという事がどれほど素晴らしい事なのかとか、そう言う事を感じて行くというお話です。登場人物たちが、どんな結末を受け入れて行くのか、絵がを確認して下さいね。
私、「悼む人」が、直木賞を貰った時に、直ぐに読んだのですが、全く理解が出来ず、共感も出来ませんでした。死んでいく者と生まれるもの、愛の為に死を与えた者と愛の為に死者を悼む者、憎みながらも愛する者とただ憎しみしか無い者、話の中で、両極端を描くことにより、美しいシンメトリーとバランスを取って、最後まで持って行くという手法は、素晴らしいと思ったのですが、なんとも、悼むという事が理解出来ませんでした。そして、映画を観ても・・・。

なんか、私、やっぱり、映画を観ても、この話が何を言いたかったのか、良く理解が出来ませんでした。悼むという事は、誰の為にやっているのか。自分の為だというなら解るんですけど、遺族の為に忘れないってこと?それとも死んだ人の為にやっているの?でも、悼んだ人の家族全てに会う訳では無いし、死んでしまった人の為って言っても、意識の無い死人に何が伝わるのかしら。伝わるから悼むというなら、それは、自己満足でしょ。という事は、自分の為に、死んだ人を悼んでいると採れてしまうのよね。静人は、自分を慰めるためにやっているとしか思えないんです。
自分を慰めるために、他人を悼んでいるって言うのも、すごく自己満足に思えるのは私だけなのかしら。私が遺族で、いきなり、静人のような人が現れて、「悼んでます、忘れません」って言われても、受け入れられないと思うなぁ。せっかく、死人が、社会のものでは無く、家族だけのものになって、戻ってきたのに、そこに他人が現れて、忘れないとか言われても、気持ち悪いし、忘れて欲しいって思っちゃう。私は、心が狭いのかしら。(笑)
母親は死にそうで、姉は子供を産むという時に、旅に出ている訳ですが、普通、直ぐに帰ってこいとか言うでしょ。人の為に悼んでいるから、良くやっているってお母さんは言っていて、静人の好きなようにやらせている訳ですが、どうなんだろうなぁ。生きている人の為に悼むっていうことなら、ここで、自宅に帰らないのはおかしいんですよ。だから、死んだ人の為に悼んでいるんだろうなぁという結論にたどり着くんですけど、私、どうしても、死んだ人の為に悼むという事が納得出来ないんです。ダメですね。
例えば、100歩譲って、死んだ人に意識があるとしましょう。幽霊として帰ってきたとして、その時に、他人が悼んで、忘れないと言っても、「アンタ、誰だ。」と言われるでしょ。そこで、アナタの為に悼んでいる者ですって言ったとして、幽霊は、ありがとうとは言わずに、「あー、そうですか。」って言いそうなんですけど、どう思います?そこに感謝って、生まれるのかな。やっぱり、私は、ダメだ。
スミマセン、やっぱり、私は、この映画ダメなので、お勧め出来ません。何度映画を思い出しても、小説を読み返しても、納得は出来ませんでした。私に、解りやすく解説をして欲しいです。もし、気になったら、観に行ってみて下さい。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
・悼む人@ぴあ映画生活
- 悼む人〈上〉 (文春文庫)/文藝春秋
- ¥637
- Amazon.co.jp
- 悼む人〈下〉 (文春文庫)/文藝春秋
- ¥616
- Amazon.co.jp