舞台「キレイ-神様と待ち合わせした女-」を観てきました。
ストーリーは、
三つの国に分かれ、100年もの間、民族紛争が続く"もう一つの日本"。民族解放軍を名乗るグループに誘拐され、監禁されていた少女が、10年ぶりに地上へ逃げ出す。過去を忘れた少女は自ら "ケガレ"と名乗り、ダイズ兵の死体回収業で生計を立てているキネコたちと出会い仲間に加わる。回収されたダイズ兵は、食用として加工され、その加工をする会社の社長令嬢・カスミと奇妙な友情で結ばれていくケガレ。戦場をうろつき、死体を拾って小銭を稼ぐ、そんな健気なケガレを見守るのは成人したケガレ=ミソギだった。愛人宅に入り浸りのキネコの夫ジョージ、頭は弱いが枯れ木に花を咲かせる能力を持つ次男ハリコナ、誘拐・監禁することでしか女性と一緒にいられないマジシャンらとの出会いのなか、ケガレは忘れたはずの忌まわしい過去と対決してゆくことになる。
というお話です。
小さい頃に誘拐されて、そのまま家に帰る事が出来ずに、大人になってしまったケガレ。10年間、地下で育てられ、外に出てみると、そこは戦争地帯。過去を忘れてしまい、自分の名前も解らなくなった彼女は、ケガレと名乗るようになる。何故、ケガレなのかは、彼女の過去に関係があるようです。
ケガレは、地上でキネコに拾われ、ダイズ兵の死体回収で生計を立てて生きて行く事になる。このダイズ兵というのは、ダイズから出来ていて、兵士として働き、死ぬと人間の食糧となっていくのです。ダイズで出来てはいますが、形は人間であり、意志も持っているので、戦地で見分けるのは、製造番号を確認するしかなく、人間の死体と間違える事がしばしばあり、キネコは、いつも気を付けるように言っています。
キネコの息子のハリコナは、頭が弱いのですが、とても優しく、花を咲かせるという不思議な能力を持っていて、ケガレと恋に落ち、結婚の約束をするのですが、戦争に送られてしまいます。戦地で怪我を追い、帰ってきたハリコナは、以前の姿とは全く変わり、IQ160の天才となり、その上、ゲイとなってしまっていました。
戦争によって、運命を何度も左右されるケガレなのですが、自分の過去に向き合わなければ、本当のしあわせは手に入らないと思い、10年間、監禁されていた地下に行ってみようと思います。そして、地下に残してきた何かを見つけなければと、全てを振り払って向かっていきます。そして・・・。後は、舞台を観るか、本を読んでくださいね。
あまりにも内容が多くて、全部説明は出来ないのよね。色々な問題が描かれていて、考えるところが多かったです。まず、人間は、戦争を止められないって事。どうして人の物を欲しがるのか、どうして人を自分に従わせたいのか、どうして優位に立ちたいのか。それは、人間が動物から進化出来ていない部分なのかしら。戦争好きな人間を、皮肉を込めて描いています。
ダイズ兵に関しては、ブレードランナーのレプリカントっぽい感じです。レプリは食べられないけど、ダイズ兵は食べられるのよ。豆腐とかおからで出来ているようなものかな。人間型で、意志もあるから、ちょっと残酷な感じがするんですけど、ダイズ兵は、人間に食べられたがっていて、死ぬのを恐がっていないんです。寿命も短いので、早く死んだ方が、納豆にならないうちに食べられるから良いみたいですよぉ。(笑)こんな、人工生命の悲しさも描いています。
そして、ハリコナ。頭が弱い時の方がしあわせだったのか、頭が良くなった方がしあわせなのか、人間にとっては、何が幸せなのかということを描いているように見えました。頭が弱い方が幸せに見えるけど、でも、本人にとっては、バカと呼ばれることの悔しさがあるだろうし、いつも下に見られているという劣等感が拭えないでしょ。頭が良ければ、沢山の発明も出来るし、お金も手に入るし、誰からも崇められる。でも、幸せに見えないんですよね。何がしあわせなのかは、自分が決めることなんですけどね。
最後に、誘拐というものが人を変えるし、幼児虐待というものが、どれだけ人に対して傷を与えてしまうのかという事が描かれています。子供を傷つける大人たち、そんな人間たちは、やっぱり許せない。どんな理由があろうとも、私は、許したくないと思いました。そして、子供の頃に傷を負ってしまった大人には、強くなって子供を護って欲しい。痛みを知った人間しか、守れないんです。その気持ちは、解らないんです。
とっても笑えるコメディでありながら、凄く重い問題を描いていて、ショックを受けました。本当は、もっともっと、色々な内容があるんですけど、全ては書けません。何ページも書かないと終わらなくなっちゃいますもん。(笑)でもね、この舞台、観た後に、何度も思い返して、色々な考え方が浮かんでくる作品なんです。観た時は、こう思ったけど、良く考えてみると、本当は違ったのかもとか、自分の中で、話が広がって行くんです。面白そうでしょ。

ケガレ役の多部さん、本当に美しくなりましたね。映画”ヒノキオ”で出てきた時は、男の子と見せて女の子という役で、男の子にしか見えなかったのに、いま、こんなに美しくなっちゃって、おまけに演技も上手くて、良い成長をしましたね。ハリコナ役の小池さん、”シダの群れ”の時は、それほど感じなかったけど、舞台俳優として、安定してきましたね。他の役者さんは、ベテランなので、安心してのめり込んで観る事が出来ました。本当に面白かったです。
私は、この舞台、凄いお勧めなんですけど、既に、チケットは完売かな。立ち席の販売があるくらいかも知れません。でも、もし、観る事が出来たら、ぜひ、観てみて下さい。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
キレイ -神様と待ち合わせした女-
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