演劇「海をゆく者」を観てきました。
ストーリーは、
ダブリン北部の郊外にある海岸沿いの街、バルドイル。
中心には教会がひとつと、数件のパブがある。海岸から見えるホース半島の橋、ホース岬は小高く、やけに目立つせいで、数々の神話や伝説の舞台となっている。その街にある一軒の家に、シャーキーと兄のリチャードが暮らしている。友人のアイヴァンは、昨夜遅くまで飲んでいたせいで帰れなくなり、泊まったらしい。そこへ友人のニッキーが、クリスマスの挨拶にやってきた。最近知り合ったという裕福そうな紳士、ロックハートと共に。そして、彼らの大切な夜が始まった。
というお話です。

ほの暗い部屋に、明かりが灯り、朝が始まる。リビングで寝ていたリチャードを、部屋から起きてきたシャーキーが起こします。昨日、夜中遅くまで飲んでいたリチャードは、そのまま寝てしまったようです。フラフラしながら、杖を探し、起き上るリチャード。そこへ、アイヴァンが起きてきます。リチャードは、昨夜、アイヴァンと飲んでいて、アイヴァンは家に帰れず、この家の納戸に泊まったようでした。今日は、クリスマスの前日。シャーキーとリチャードは、クリスマスの用意をする為に、買い物に行き、大好きなアイリッシュウイスキーを買い、プレゼントや料理を用意して、クリスマスイブを待ちます。

クリスマスを祝う為に、またアイヴァンが訪れ、次にニッキーと、ニッキーが連れてきた友人のロックハートが、その家に訪れます。シャーキーは、ニッキーと会うのを嫌がっていましたが、来てしまったものは仕方がない。嫌がりながらも迎え入れます。何故、シャーキーがニッキーを嫌っているかというと、実は、昔、シャーキーが付き合っていた女性と、今、ニッキーが付き合っているからなのでした。
男5人が集まり、クリスマスの夜を向かえ、ポーカーをやろうと言う話になります。もちろん、お金をかけて。リチャードは目が見えず、アイヴァンもメガネが無くてカードが見にくいので、2人で1組となり、他は、1人づつ。5人4組でポーカーを始めます。

実は、ポーカーを始める前に、ロックハートがシャーキーにある事を話しかけます。内容は秘密なのですが、ある事で、2人は”賭け”をする事になるんです。
シャーキーは、一見、偏屈者の兄リチャードの面倒を見る為に、他の地方で働いていたのを切り上げて帰ってきた、良い弟のように見えるのですが、酒乱でいつも失敗して、もう雇ってくれるところも無いほどに、誰からも恨まれていたんです。そんなシャーキーのことを、いつも庇っているのが兄のリチャード、そして友人のアイヴァンでした。もちろんニッキーも、嫌われても遊びに来るほど心配しているんです。

誰もが、先のことは解らない。人間は、生まれ落ちた時から、小舟に乗って、海に漕ぎ出していて、道なきところを進んでいかなければいけないんです。でも、神様は、誰にでも、前に漕ぎ出す力を与えているし、同じだけのチャンスを与えてくれている。自分だけ、運が悪いとか、神に見放されていると思っていたら大間違いで、どこかで、必ず、同じだけのものを与えてくれるハズなんです。だから、投げやりにならず、自分を思ってくれる人たちがいたら感謝して、また、一から始めればいい。また漕ぎ出せば良いんです。
そんな事を考えさせてくれる、ブラックコメディでした。大笑いしちゃいましたよ。だって、オッサンたちなのに、とっても可愛かったり、ステキだったり、汚かったり、バカだったり、もう、メチャクチャなんですもん。やっぱり、これだけの大御所が集まると、凄い舞台が観れるんですね。目が離せなくて、目が乾きましたよ。(笑)

文句の付けようが無い舞台でした。内容も面白いし、とっても考えさせられたし、一人一人のキャラクターの味が、どんどん変わって行くところが、本当に楽しめました。最初に受ける印象が、5人が5人とも、話が動くにつれて、変わって行くんですよね。我が儘でイヤなオヤジが、本当は、とっても頭が良くて、深い思いを持っていたり、正直者に見えた人が、本当は一番の問題児だったりするところが、この舞台の面白い所なのかなって思いました。その変化って、この5人の凄い役者さんだからこそ、見せられることなんだと思うんです。本当に、凄いですよね。

私は、この舞台、超お勧めなんですが、あまり若い人には、この人生の深さのようなものが解らないかなって思いました。色々な失敗を重ねて、悩んだ人にとって、この内容は、心に沁みてくる話だと思うんです。人生経験を重ねて方にとっては、きっと、感動出来るものだと思いますよ。ぜひ、観に行ってみて下さい。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
海をゆく者 パルコ劇場 http://www.parco-play.com/web/program/seafarer2014/