「薄氷(はくひょう)の殺人」の試写会に行ってきました。
ストーリーは、
中国・華北地方で切断された死体の断片が次々に発見され、刑事ジャン(リャオ・ファン)が捜査に当たるが、容疑者の兄弟が逮捕時に射殺されたため詳細は誰にもわからなくなってしまう。5年後、しがない警備員となっていたジャンは以前の事件と手口が類似した猟奇殺人が発生したことを知り、独自に調査を開始。やがて、被害者たちはいずれもウー(グイ・ルンメイ)という未亡人と近しい関係だったことを突き止めるが……。
というお話です。
バラバラ死体が発見されるのですが、何故か、県内の沢山の場所で見つかっており、何処で誰が殺されたのかが解らず、警察は振り回されます。見つかった場所の土砂が一か所から運ばれていることが解り、捜査をすると、死体の身元は男で、クリーニング店に勤める女性の夫であることが判る。悲しむ妻はとても美しく、捜査をしていたジャンは惹かれるのだが、事件は迷宮入りとなってしまいます。
それから5年、また、同じようなバラバラ死体が見つかり、この殺人事件にも、前の、クリーニング店に勤めている未亡人・ウーと関係がある人物が殺されていたんです。既に自信の問題で警察を退職させられていたジャンは、彼女に疑惑を持ち、独自に捜査を始めます。
ウーは、夫を殺し、他の男たちも殺したのか。女の力では無理な殺人に思えるので、誰かにやらせているのか、ジャンは、美しく魅力的なウーにどんどん惹かれながらも、疑惑を持ち、彼女を追い詰めて行く。そして、ジャンが掴んだ真実とは・・・。後は、映画を観て下さいね。
元警察官のジャンの目線で描かれているので、殺人犯を追い詰めて行くというサスペンスタッチで描かれていて、それが面白いのですが、この監督が上手いなぁと思ったのは、追われているウーという女性の気持ちが、それほど画面に出ていなくても、セリフが無くても、何となく解るんです。
ネタバレになってしまうので、あまり書けないのですが、これに触れないと、言いたいことが言えないので、ちょっと触れますね。ウーの話を聞いていると、何か困難な事になると、男が助けてくれて、”助かった”と思うのですが、今度は、助けてくれた男に良い様にされてしまい、何処まで行っても、男の欲望の対象にされてしまうんです。
とても美しくて、イイなぁと思うのですが、美しいと言う事は、それだけ罠が多いんですよね。自分がしっかりしていないと、結局は、何処までも助かる事が無いんです。女というだけで、守って貰えて得だなんて思っていると、足を空くわれます。自分の足で立つことをしなければ、自分の人生など開けない。そんな風に思えました。
ジャンだって、捜査をしながらウーに言い寄って、あわよくばって感じですもん。2人の関係が、最後、どうなるのか、ジャンもウーを守るのかは、映画を観て下さいね。もー、この映画を観ていると、男って、やっぱり汚いことするなぁと思ってしまいました。女性には、母性という無償の奉仕というものが備わっているけど、男性には、そういうものが一切無いので、どうしても、ギブ&テイク的な考え方になってしまうのかも知れません。
でも、まぁ、女だって、男に守って貰うのが当たり前と思っている部分もあるので、それもいけないんですよね。何でも頼れば、男が何とかしてくれるから、私は座っていればいいなんて思っているから、付け込まれるんです。もちろん、そこに愛があるんだからとか言うんでしょうけど、それだけでは生きて行けないでしょ。必ずツケは払わされるんです。
最後にウーが微笑むのですが、愛を感じて微笑んでいるというのが正解なのかも知れませんが、私は、彼女は、全てから解放されて、やっと一人になれたというのを喜んでいるかのように思えました。女の立場としては、男に振り回された人生から解放されて、もう、守られる必要も無い自分になれたというのを喜んでいるのかなって思ってしまいました。それこそ、修道院に入ったり、出家したりという感じになれれば、男というものから切り離されるので、幸せになれるのではないかと思うでしょ。
私は、この映画、お勧めしたいと思いました。サスペンスな内容に、スリルもあり、映像が迫ってくるようで、その上、ちょっとホラー的な死体の写し方が、何とも恐さを増大させて、面白いと思います。中国系の映画って、こういう薄暗い怖い映画が上手いですよね。怖い映画が大丈夫な方は、ぜひ、観てみて下さい。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
・薄氷の殺人@ぴあ映画生活