「最後の命」を観てきました。
ストーリーは、
幼い時代に集団婦女暴行事件に巻き込まれ、その記憶に苦しみながら成長してきた桂人(柳楽優弥)と冴木(矢野聖人)。ある夜に思わぬ再会を果たした二人だったが、桂人の部屋で顔見知りだった女が殺された状態で発見される。警察の取り調べを受けることになった桂人は、刑事から冴木の名前を告げられ、彼がある事件の容疑者として全国指名手配中であることを知る。その事実に桂人が動揺する中、彼と冴木がひた隠してきた秘密や、これまで歩んできた人生があぶり出されていく。
というお話です。
可哀想な話でした。これ、子供への精神的虐待ですよ。子供の頃に体験してしまった事って、どんなに振り払おうとしても、頭に残ってしまうんですよね。だからこそ、子供の頃の環境って、大切だと思うんです。良い地域だと思っていても、子供は、結構、行動範囲が広いので、気を付けてあげないと、変な事件に巻き込まれたり、恐ろしい目に合ってしまいます。日本は、アメリカほど危険ではないので、お迎え制度はありませんが、ちょっと気を付けた方が良いのかも知れません。
桂人と冴木は、小学校からの友達で、放課後も一緒に帰っていました。桂人は、ちょっと臆病な性格で、冴木は、子供の頃から良く出来る頭の良い子供でした。時々、家の近所の廃工場の付近に居るホームレスの男の買い物を頼まれ、お駄賃を貰っていました。

ある日、2人は家出をして、秘密基地に隠れるのですが寒さに耐えかね、温かい場所を求めてうろついていると、廃工場で変な声が聞こえます。近づいてみると、ホームレスたちが、ちょっと頭の弱い女性を捕まえて集団レイプをしている現場でした。驚いた2人は逃げるのですが、捕まり、お前たちも触ってみろと言われます。恐くなった2人は、その腕を振り払い、家に逃げ帰ります。
この事件をきっかけに、桂人は、性的な事に敏感になり、大人になるにつれ、女性に反応してしまう自分が穢れているような気持ちになり、内にこもるようになってしまいます。一方、冴木は、見た目には、普通の明るい男子高校生のように成長しますが、その心の内には、ドロドロしたものが渦巻いていました。
高校を卒業した桂人と冴木は、会う事も無かったのですが、ある日、突然に冴木が桂人のところに訪ねてきます。そして、懐かしい話をして消えてしまいます。その後、桂人が部屋に帰ると、いつも呼んでいたホテトル嬢が、部屋で殺されているのを見つけます。警察に事情聴取をされるのですが、何も話す事が無く、家に帰される途中、冴木の指紋が桂人の部屋で見つかり、冴木は、連続婦女暴行の容疑者として指名手配されていると教えられます。
子供の頃に観た事件で、全てに臆病になった桂人と、罪に飲み込まれてしまった冴木。そして、2人が関わった同級生の香里、この3人がどういう未来を歩いて行くのか、映画を観て下さいね。
子供にとって、大人は巨大な悪であり、汚らわしい生き物なんだけど、同じ人間なんです。誰もが、昔は子供だったのに、汚い事を覚え、どんどん鈍くなって、大人になる。そうしないと生きて行けないんです。もちろん酷い事件を観てしまったのは可哀想だったけど、どこかでそれも飲み込んで、納得して行かないと、生きられない。それは、誰もがぶち当たって解決していく事なんですよね。汚れなければ生きられない、それが真実だと思います。

人間って、まるで、タンポポの綿毛のようですね。産まれて、宙に浮いて、空に上がり過ぎると、鳥に食べられたり、そのまま干からびてしまう。上手く地上に落ちても、アスファルトなどの上だと、やっぱり干からびてしまう。運良く、土のある場所に落ちたものだけが、根を張って命を永らえる事が出来る。泥だらけになって、やっと生きられる。綺麗なままで生きて行ける人間なんて、いないんです。
なんか、この映画、とっても深くて、感動的でした。実は、私、映画を観ている途中で、桂人が二重人格で、桂人の中に冴木が居るのかと思ってしまった。柳楽くんが上手過ぎて、他の人達とレベルが違うので、彼の中に全てがあるように見えてしまったんです。本当は、ちゃんと3人いるんですけどね。でも、桂人の中に3人とも居るのでも面白いなと思いました。罪を背負った部分は死んで、罪を許容する自分と、罰を受けている女を自分の中に取り込んで、生きて行く事が出来るのかもって思ったら、それも有りじゃないかなと思ってしまいました。
この映画、私は、お勧めしたいと思います。でも、とても哲学的な内容なので、あまり映画を観て、考えたくない人にはお勧め出来ないかも。映画で、哲学を語りたいと思ったら、ぜひ、観てみてください。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
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