【TIFF2014】「ナバット」アゼルバイジャンの戦地の話だけど日本でも同じ事が起きている。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
スミマセンが、ペタの受付を一時中断しています。ごめんなさい。

東京国際映画祭2014にて、「ナバット」コンペティション部門を観ました。2日目の1作目です。


ストーリーは、

ナバットと夫のイスケンデルは、村から遠く離れた小さな一軒屋で暮らしている。イスケンデルは、かつて森林作業員として働いていたが、今は年老いて病を患っていた。かなり以前から戦争がはげしく続いており、彼らの息子は戦士した。ふたりが生計を立てる唯一の手段は、1頭しかいないメス牛のミルクをナバットが2日に1度搾り、村に行って売る事だった。やがて村の周辺にも戦争の影が忍び寄り、村から次第に人が居なくなって行く。今や、ナバットは、1頭のオオカミがうろつく廃墟となった村で、生きて行かなくてはならない。

というお話です。


ナバット

アゼルバイジャンで、戦争中にある女性が家族の墓があるから避難しないというニュースがあり、そのニュースを見て、監督が、この映画を作ったそうです。ナバットという女性が主人公なのですが、それ以外には、ほとんど、人が出てきません。村人や、家族が出ては来るのですが、あまり印象に残らないんです。あまりにも、ナバットの印象が強くて、彼女を描いている映像が美しく、考えさせられる映画でした。

ナバット

ナバットは、夫の看病をしながら、細々と山の上で暮らしています。2日に一回、牛乳を村に売りに行くのですが、最近は、村人も減って、ミルクも、あまり喜ばれません。その村には、戦争が直ぐそこまで迫っていて、村人たちは、ゆっくり寝る事も出来なくなっているんです。次々と、村から離れて行く住民たちの中、ナバットだけは、その村から離れる事が出来ません。夫が病気で寝込んでいるからです。

夫は病気で動けず、息子は、既に戦争で死んでいて、お墓が家の近くに作ってあるんです。だから、きっと、誰もが逃げようと言っても、彼女はそこに留まったのではないかと思います。ナバットは、人がどんどん居なくなっても、いつもと同じ生活を続けようとしていたのですが、さすがに、あまりに人が居なくなり、彼女は、ある事を空家に行って、やる事にします。誰も居ない村に、いつまでも灯る灯り。しかし・・・。後は、映画を観て下さいね。

ナバット

私、この映画、素晴らしいなって思いました。色々な考えが頭に浮かび、ぐるぐる考えてしまいました。まず、映像が素晴らしく美しいです。まるで、フェルメールの絵を観ているようなんです。光の入り方、暗い中に灯る明かり。全てが計算されているように、美しい光と影のコントラストを生んでいるんです。この映像を観るだけでも、価値があるなぁと思いました。

ナバット

それだけでは無いんですよ、この映画。一つづつ書いていきますが、まず、ナバットは、村の外れの山の上に住んでいて、村の人との関わりが薄いんです。同じ地域に住んでいながら、夫の繋がりは沢山あったものの、ナバットとしての繋がりは少ないんです。良く、だれだれさんの妻ですっていう紹介があるでしょ。まるで、夫の付属品のように考えられているのかなと思いました。その夫が病気で出てこれないとなると、ほとんど関わりが無くなるんです。

ナバット

だから、村人が居なくなっても、別に連絡がある訳でも無く、いつの間にか居なくなるという感じ。そして、一人になって行く。誰も、ナバットを気にしてくれる人はいない。戦争から避難しなくてはならず、人の事なんて考えていないんです。これって、日本でも起こっている、老人の孤独死を思い出しませんか?同じアパートやマンションに住んでいながら、誰も気にしていない。そこに残っていても、誰も気が付かないんです。悲しい事ですよね。もう少し関わりを持って、お年寄りなら気にしてあげて欲しい。人の気持ちが乾いているんです。

ナバット

そんな事を、ナバットを観ていて思ってしまいました。悲しかったです。ナバットを気にしていたのは、オオカミだけ。ナバットの飼っている牛を狙っていたのですが、このオオカミだけ、ナバットが大丈夫なのか、気にしていたように思えました。


そして、このオオカミ、子供を4匹ほど産んでいるんです。だから、ご飯が欲しかったんですね。人間が、酷い戦争を起こして、戦ったり、逃げたりしている山の中で、オオカミは、子供を産み、必死で育てているんです。まるで、人間の戦争を嘲笑うかのように、冷たい目で見ながら、ちゃんと自分たちの生活は確保している。そう、人間が一番、野蛮で邪魔な生き物であり、お互いに殺し合っている。動物たちは、生きる為に必要な物しか手に入れようとしないんです。どれだけ人間が貪欲で、残酷なのかと言う事が解ります。


ナバット

ああー、あまりに感動して、感想が長くなってしまった。本当に、ステキな映画でした。でも、とても静かな映画なので、日本公開はあるかなぁ。この映画の良さを、どれだけの人が解ったんだろうか。素晴らしい映画でした。


私は、超お勧めなんだけど、日本公開は、まだ解りません。もし、観る機会があったら、ぜひ観てみて下さい。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ





東京国際映画祭「ナバット」    http://2014.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=19