東京国際映画祭2014にて「ロス・ボンゴス」 コンペティション部門作品を観てきました。
ストーリーは、
RAS(ラス)は、建設現場の仕事を負えると、毎晩、近所の壁に落書きをしている。ラスと母親のマリアは、パシフィック・ジャングルからカリ東部の町へ移住してきた。ラスは眠れない日々が続き、白昼夢を見始める。そんなある日、ラスは、絵を描くためのペンキを盗んだ事が仕事場にバレて、解雇されてしまいます。彼は、もうひとりの若いクラフィティ・アーキテクト、カルヴィンを探しに行く。ふたりは、目的も無く町をさまよう。さながら、道に迷って、戻れなくなる事を望むかのように。
という内容の映画です。

スケボーをするラスという青年と、絵を描くことが好きな大学生カルビンが、今、自分たちの目の前に開けている社会にどう向かっていくべきなのかと言う事を悩みながら、家族の事、政治の事、宗教の事、学校の事、友達の事、彼女の事、何もかもに対して、夢中になる事も出来ず、かといって、投げ出す事も出来ない自分たちに、ちょっと物足りなさを感じながらも、前に進んでいこうとする青春ムービーです。
ラスは、黒人であり、ちょっと低い階級の家族のように見えました。たとえ頑張ってみても、上の階層の人間より優遇される訳では無く、どちらかというと、ハジかれてしまう世界で、彼は、スケボーをする事や絵(カリグラフィ)をする事で、自分というものを表現しているよう思えました。

カルビンは、ちょっと良い家庭なのではと思えましたが、裕福というほどでもないのかな。祖母と2人で暮らしていて、若いのに、祖母の介護をしています。両親は離婚したのかな?母親は別に暮らしていて、スカイプなどで話している姿が描かれていました。父親は、街に家を持っていて、そこで一人暮らしをしています。昔、歌手だったようで、タクシーから流れる音楽に自分の歌を見つけて、もっと音を大きくして欲しいと願う場面がありました。これを見ると、それほど生活に困っている訳では無く、中層階級より少し良いのかなという感じかな。

そんな2人が、壁に絵を描くという事で共感し、友達となり、一緒に行動するようになります。そして、大きな橋の側面に素晴らしい絵を描くというプロジェクトに参加し、警察に追われながらも、それまで、必死になった事が無かった2人が、協力して、「アラブの春」というアラブで発生した反政府運動の動画を見て感じた事を描こうとします。

そうそう、監督とのQ&Aの時に、映画の中の彼らのように、何をするべきなのか解らない、浮いた世代の事を”ニーニ”だか”ニーニョ”だかと呼ぶそうなのですが、日本でいう”ニート”と似てるなって思ったんだけど、元は同じなのかな。良く解らなかったけど、どの国でも、今の時代、ちょっと浮いている人が多いのかな。
地に付いて泥臭く戦うなんていうのは、流行らないのかも知れません。でも、私は、泥臭いの、スキだな。みっともないと言われようと、カッコ悪いと言われようと、やっぱり、戦いたい。自分でもウザいと思う事があるけど、でも、そうありたいし、好きな人には、そう在って欲しい。だから、こういう映画で、浮いているのは、不安定じゃないの?って問い掛けてくれるのは、大切だと思います。

でも、この映画、決して、それが悪いとかを言う訳では無いし、かと言って、それがカッコいいとも言っている訳では無いんです。そういう現実の中で、彼らがどうやって進んでいくのかなぁという未来を見る映画なので、雰囲気がとっても良いんですよ。特に、ラストの木の場面が、ステキなんです。大きな木の上って、気持ち良さそうだなぁ~って思いました。

私は、この映画、好きな部類ですが、万人受けは難しいかな。雰囲気で観る映画なので、何か、強烈なエピソードがあったりするものが好きな方には、無理だと思います。
日本上映は決まっていないみたいですが、単館系で上映するには、良い作品かなって思いました。もし、観る機会があったら、ぜひ、観てみて下さい。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
P.S : 映画の中に出てくるお父さん役は、監督の本当のお父さんだそうです。(笑)凄い声ですよ。
「ロス・ホンゴス」 http://2014.tiff-jp.net/ja/lineup/works.php?id=13