「ぶどうのなみだ」を観てきました。
ストーリーは、
北海道の空知に暮らす、アオ(大泉洋)と一回り年の離れた弟のロク(染谷将太)。父親が遺(のこ)したぶどうの木でアオはワインをつくり、ロクは小麦を育てていた。黒いダイヤと称されるぶとうピノ・ノワールから醸造した理想のワインづくりに悪戦苦闘しているアオとそんな彼を見守るロクの前に、キャンピングカーに乗って旅をしているエリカ(安藤裕子)という女性と出会う。何とも言えぬ不思議な魅力を放つ彼女との交流が、兄弟の生活にちょっとした変化をもたらす。
というお話です。
アオは、指揮者として未来を有望視されていたのですが、ある日、突発性難聴を発症し、指揮が出来なくなり、絶望して、この空知の故郷に帰ってきました。そこには、弟のロクが小麦を作っていて、そこで、アオはワインを作り始めます。アオは、ピノ・ノワール種を育て、ワインを作っているのですが、何度作っても、泥臭くて、美味しく無いんです。真面目な性格のアオは、沢山の本を読み、研究を重ね、指揮では失敗したけど、ワインでは成功したいと思っているんです。
ある日、2人の家の隣の土地にキャンピングカーを止めて、穴を掘る女性が居るのを見つけます。はぁ?と思った2人は、警察を呼ぶのですが、警官のアサヒさんは、エリカという女性に夢中になり、許してしまいます。飽きれたアオとロクは、気にしないようにしているのですが、何故か気になってしまい、段々とエリカに近づいていってしまいます。
町の住民は、直ぐにエリカに懐くのですが、アオは受け容れようとせずに、エリカといがみ合っています。ある嵐の夜に困っているエリカをアオが助け、それからは、アオ、ロク、エリカは、何となく上手く行っちゃって、仲良くなります。だけど、3人は、それぞれに、色々な悩みを抱えていました。

ロクは、随分年の離れた兄アオが、父親が死んでも帰って来ず、ずーっと一人、農家に取り残され、寂しい毎日を過ごしていたんです。その頃、アオは指揮者として売り出していて、ロクには全く関わりを持とうとしませんでした。ロクは、父や自分を捨てたアオを憎み、アオが空知に戻って来てからも、そのシコリは残っています。
エリカは、幼い頃に父親と自分を捨てて出て行った母親に対して、どうしても素直になれず、許す事が出来ません。でも、母親への想いも残っていて、自分の中の矛盾に苦しんでおり、穴を掘ったり、色々な事をして、その解決策を模索しています。
アオは、空知に戻って来ても、昔、父親に自分が取ったトロフィーを捨てられた事をまだ気にしていて、自分を認めてくれなかった父親への確執が、いまだに残っています。そんな気持ちを振り払い、ワインに打ち込むことで、もう一度、立ち直りたいと思っていたのだと思います。
こんな3人が助け合って、新しい道を見つけるまでを描いています。一人だと、どうしても行き詰まっちゃう事ってあると思うのですが、誰かが周りにいれば、新しい風を起こしてくれて、何か、新しい事が見つかったり、今まで気が付かなかったことに気が付いたりすることが、あるのかも知れないですよね。そんな気持ちにさせてくれる映画です。
それにしても、勝手に他人の土地に穴を掘る女って、どーなのよ。映画だから良いけど、普通は、不法侵入だし、土地を掘削などしたら逮捕されます。良くあるんですよ、他人の土地を掘らないと水道管やガス管が通せないっていう事が。そんな場合、私たち建築屋は、本当に苦労して、沢山の方に承諾書を貰い、申請をして、ちょっとだけ掘らせてもらいます。苦労するんだから、こんなに簡単に掘らないでよ。泣きたくなりますよ。(笑)
話戻して、このエリカ役の方、初めて観た気がするのですが、「IWGP」や「催眠」に出ていたんですね。全く知りませんでした。自然っぽいから使われたのかな。あまり役者として慣れていないのか、ちょっとぎこちなくて、イライラしました。最近、若い役者さんたちが、とても上手くなって来ているので、自然体と言うだけで出てくると、どーも、鼻に付くんですよね。これが良い人もいらっしゃると思うのですが、私は、ちょっとダメでした。
大泉さんや染谷君は、もう、文句の付けようが無いですね。上手いっす。もっと観ていたくなっちゃいます。特に、染谷くん、色々な監督が使いたがるのが解ります。演じる度に変わって行く、素晴らしい役者だと思いました。これからも、もっともっと観たいな。
私は、この映画、まぁ、お勧めしても良いかと思います。大きな事が起こる訳ではありませんが、それぞれのキャラクターの心が細かく描かれていて、うーんと唸ってしまうような場面がいくつもあります。この映画を観て、自分の中にあるシコリのようなものを、取り去る方法を探してみようかなって考えてみる事も良いかも知れませんよ。ぜひ、観に行ってみて下さい。
ぜひ、楽しんできてくださいね。