「ナショナル・シアター・ライブ『ハムレット』」を観てきました。
ストーリーは、
デンマーク王が急死。王の弟クローディアスは王妃と結婚し、跡を継いでデンマーク王の座に就く。父王の死と母の早い再婚とで憂いに沈む王子ハムレットは、従臣から父の亡霊が夜な夜な城壁に現れるという話を聞き、自らも確かめる。亡霊に会ったハムレットは、実は父の死はクローディアスによる毒殺だったと告げられる。復讐を誓ったハムレットは狂気を装い、復讐の時を待つ。そして・・・。
というお話です。
シェイクスピアの4大悲劇の一つであり、「生きるべきか、死ぬべきか、それが問題だ。」というセリフと、オフィーリアが水に浮かぶ絵が有名ですよね。もちろん、何度も映画化されているし、舞台でも演じられているので、内容はご存じだと思います。
でも、やっぱり、演出によって、全然違うものに見えてくるんですね。今回は、話は同じですが、舞台が現代になっていて、何処に居ても監視されている社会を、現代の監視カメラやセキュリティーを使って描いていて、誰もが王に逆らえない、独裁政権時下のデンマークを描いていました。
国王や王妃、そのセキュリティーたちも、皆、スーツを着ていて、軍人のみ軍服らしきものを着ていました。ハムレットは王子なので、ラフな格好で、スウェットみたいなものを着ている時もありました。オフィーリアは、なんとTシャツにスパッツという姿。ちょっと、あの弱弱しいオフィーリアとは、似ても似つかないものでしたが、精神は、オフィーリアそのものでしたよ。

父親を暗殺され、母親を奪われたハムレットの苦悩は、計り知れないほどであり、父を殺した犯人と交わる母親は、もう、汚いものでしかないんです。母親として愛しているけど、汚い女とも思っている。父親の亡霊には、早く復讐しろと言われるし、もう、ああ~!!ってなっちゃいますよね。頭の中、ぐちゃぐちゃになっちゃうし、義父は、自分をイギリスに送って、暗殺させようとするし、本当に、この話は、これでもかって言うほどに、ハムレットを虐める話なんです。
今更ながら、ハムレットという話について書くのもなんですが、今回のシアター・ライブを観て思ったのは、ハムレットが、もっと年齢が高くて、人生経験を積んでいれば、父親の亡霊に復讐しろと言われても、簡単に殺すという考えに至らなかったのではと思いました。もっと狡賢く立ち回り、それこそ、義父がノイローゼになるほどに追い詰めて、呪い殺されたように見せる事だって出来ただろうに。
オフィーリアだって、もっと年齢が高ければ、ハムレットの行動を理解することが出来たかも知れないし、父親を殺された時点で、狂う事無く、ハムレットに憎しみを向ける事も出来たかも知れない。憎しみをぶつけられれば、もしかしたら、レアティーズでは無く、オフィーリアと決闘をする事になったかも知れない。それも、面白いかもね。愛する2人が決闘をすることになるなんて、これもまた、悲劇になって、良さそうです。
このハムレットだけでなく、シェークスピアのお話って、とてもまとまりが良いので、現代でも、原作を元にストーリーが作りやすいと思うし、面白くなると思うんですよね。だって、今、ハムレットを観ても、面白いもん。最近のTVドラマも、漫画原作をドラマ化するのばかりでなく、こういう古典と言われる小説を、もっと現代風にアレンジして、ドラマ化すれば、もっと沢山の人が古典文学に触れる事になるし、古い小説が面白いのだってことが理解されると思うんですけどね。それこそ、「吾輩は猫である」だって、「源氏物語」だって、「徒然草」だって、現代風にアレンジしてドラマ化したら、面白いと思うよ。ぜひ、考えて欲しいものです。
私は、このナショナル・シアター・ライブ、お勧めしたいです。これからも、色々なラインナップが出てくると思うので、気になる作品を観に行ってみては?ちょっと、普通の映画を観るより高いけど、それだけの価値はあると思いますよ。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
・《ナショナル・シアター・ライヴ『ハムレット』》@ぴあ映画生活