「私の男」の試写会に行ってきました。
ストーリーは、
奥尻島に猛威を振るった津波によって孤児となった10歳の花(山田望叶)は遠い親戚だという腐野淳悟(浅野忠信)に引き取られ、互いに寄り添うように暮らす。花(二階堂ふみ)が高校生になったころ、二人を見守ってきた地元の名士で遠縁でもある大塩(藤竜也)は、二人のゆがんだ関係を察知し、淳悟から離れるよう花を説得。やがて厳寒の海で大塩の遺体が発見され、淳悟と花は逃げるように紋別の町を去り……。
というお話です。
この映画、衝撃の内容でした。原作を、まだ読んでいないので、ビックリ!帰って来てから、原作を読み始めましたが、映画は、ほとんど原作を壊さずに映像化されているようですね。良かった。浅野さんと二階堂さん、ピッタリでした。色々な衝撃的な事実が解る度に、ゾッとして、2人が毒々しい血の赤に染まって行くように思えました。
津波で両親と兄妹を亡くした花は、遠縁の腐野淳悟に引き取られます。この腐野という苗字、凄くありませんか?”腐”という字であり、クサリと読んで、”鎖”と掛けてあるのかなと思いました。腐った汚れた関係で断ち切りたいんだけど、鎖で雁字搦めになっていて抜け出す事が出来ないという内容を、この苗字のみで表現してあって、これも驚きでした。映画を観ている時は感じないんだけど、観終わって、改めてチェックしてみたら、この感じが使われていて、ビックリ!この映画は、驚くことが多いです。
淳悟に引き取られ、家に帰る車中で眠っていた花は、津波の夢を見てうなされます。それを見た淳悟は、花に、「俺はお前のものだからな。」と手を握って、安心させます。この始まってすぐの場面で、「私の男」という題名の意味が解ります。でもね、この言葉が、2人を深くドロドロした方向に向かわせるとは思いませんでした。
それから何年か経って、花は17歳になり、少女から女性に成長し始めています。そんな彼女にとって、淳悟だけが自分の家族であり、味方であり、自分を解ってくれる人なんです。その2人が、親子以上の、男と女の関係になるのに、何の障害もありませんでした。でも、2人は遠縁と言えど、親子として生きてきた訳だし、それ以上に、2人の間には、大きな問題があります。それは、原作を読むか、映画を観て下さいね。それは、書けません。
2人は、2人で生きて行く為に、その問題を見て見ぬふりをして、それに異議を唱える人間は、消去するという暴挙を繰り返し、逃げ続けます。北海道から逃げた2人は、東京へ。花は、また成長し、大人になって行きます。もちろん、身体だけ成長するのではなく、精神的に成長して行くので、淳悟との関係にも罪悪感を抱いていきます。子供の頃は、全く、不思議に思っていなかったことが、大人になり、常識というもの、社会的な事を覚えるにつれ、自分たちの生活が、一般的なものと違っていると言う事に気が付き始めるんです。
そして、花は、普通の女性のように、男性と付き合い、結婚を考え始めます。でも、彼女のベースには、いつも、自分の男である”淳悟”の影があり、彼女にとっての”男”は、淳悟なんです。淳悟と花は、どうなって行くのか。そして、2人の大きな問題とは、映画を観て、考えて下さいね。
熊切監督は、「夏の終り」という作品では、あまりドロドロ、ねっとりした性描写などは感じられなかったのですが、今回は、ドキドキするような毒々しいシーンがあり、あからさまに描いている訳では無いのですが、すっごくイヤらしく感じました。禁断の交わりだからっていうのもあるのかな。二階堂ふみちゃんが巨乳だからってのもあるのかな。ドロドロして、ドキドキして、恐ろしいほど美しいんです。なんだか、前の映画と雰囲気が違い過ぎて、驚きです。
一番、恐ろしいと思ったのは、2人のシーンで、上から血が落ちてくるところがあるんです。イメージなんですけど、これが、超恐かった。2人が禁断の行動をしていると言う事を表していると思うんですけど、これを観た時、ミッキー・ロークの映画「エンゼル・ハート」を思い出しました。あれも、恐ろしい映画だった・・・。
最後に、私の好きな”高良”くんは、花と最初に付き合う男性で、淳悟が花を手放さなければと考えさせる男です。花と結婚をするのは、”三浦貴大くん”です。原作だと、この結婚の場面から始まるのですが、映画では違いました。
ネタバレ出来ないので、苦しい感想ですが、この映画、誰が観ても、衝撃的で、面白いと思うと思います。私は、この映画、お勧めしたい映画です。面白いです。さすがに、直木賞を貰った小説の映画化だなと思いました。でも、明るくて元気な映画が好きな方には、好まれないかも知れません。気になった方、原作を読んだ方、これから読まれる方、二階堂ふみちゃんが好きな方、浅野さんが好きな方、ぜひ、観に行ってみて下さい。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
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