イタリア映画祭にて「自由に乾杯」を観ました。
ストーリーは、
野党のリーダー、エンリコは気が滅入っていた。選挙が迫るが支持率は低迷し、このままでは負けるのは確実。回避する手立ても見つからず、八方塞がりになっていた。そして、ある日突然、エンリコは失踪してしまう。腹心の部下と妻が知恵を絞った末の解決策は、エンリコとは双子の兄弟であるジョヴァンニだった。ジョヴァンニは、精神科の病院を退院したばかり。まだ、薬を服用している状態なのですが、背に腹は代えられず、ジョヴァンニをエンリコの身代わりとする事に。そして・・・。
というお話です。

とっても面白い作品なのですが、内容は、ハリウッド映画の「デーヴ」に似ています。そっくりさんじゃなくて、双子の入れ替わりなんです。でも、イタリアの映画だから、ちょっと雰囲気が違うかな。イタリアの政治の仕組みが良く解らないので、誰が一番偉いのか、ちょっと解らなかったんだけど、幹事長だから、偉いんだろうなぁ。

エンリコは、支持率が下がり、選挙で負けることが確実となり、精神的に追い詰められて、とうとう逃げ出してしまいます。幹事長のくせに、責任感が無さすぎでしょ~って思うけど、まぁ、気持ちが解らないでも無いんです。だって、ほとんどの議員が汚職まがいの事をしていて、それを全く悪い事と思っていないんですもん。そりゃ、国民からの信用は無くなるよね。自分が汚職をしていて、自分が責任を取るなら出来るけど、政治家全員が汚職を良しとしているのでは、手の打ちようがありません。だから絶望してしまったんでしょうね。

逃げてしまうのは簡単だけど、残された秘書や奥さんは、きゃ~どうしよう!ってことになる訳ですよ。でも、失踪しましたとは、口が裂けても言えないでしょ。具合が悪いとか、入院したとか、ごまかしているんですけど、どうしようもなくなり、最後の一手を打ちます。それは、エンリコの双子の弟であるジョヴァンニを連れてくること。このジョヴァンニ、精神病院から退院したばかりで、まだ薬を服用していて心配な状態なんだけど、一か八か、身代わりを頼む事にします。

秘書のアンドレアは、病気の哲学者(ジョヴァンニは哲学者です。)に国を任せて良いのかと悩みますが、もう走り出してしまったものは仕方ないと腹を括ります。すると、ジョヴァンニは、詩などを絡めながら、人々を魅了する演説をして、国民の気持ちを惹きつけて行きます。色々なしがらみによって、目が曇っていたエンリコよりも、社会を見ていなかったジョヴァンニの方が、現状を見極める事が出来たんです。
私たちだって、いつも同じ仕事をやっていると、一方方向からの見方しか出来なくなって、問題が起きた時、解決方法が見つからない事ってありますよね。そんな時、全く、畑違いの人に問題を相談してみると、案外、簡単に答えが見つかったりする事ってありませんか?固定観念が無い分、視野が広がって、良い答えが出てくるんだと思うんです。大切な事ですよね。

ジョヴァンニは、頭が良くて、とても優しく、物事を正直に見られる人なのですが、キレイな心を持っているからこそ、今のイタリアでは、平常心では居られなかったのかも知れません。観ていると普通に見えるのですが、話を聞いたり、行動を見ていると、ちょっと社会からハズれている感じがするんです。この人では、汚い取引が横行するような政治の世界に長い間居る事は出来ないだろうなと思いました。今回は、短時間だから、汚い事をしなくて済んだので、良かったのかなと思いました。
最後に、画面で微笑んでいる幹事長は、エンリコなのかジョヴァンニなのか、それは、映画を観て、確認してくださいね。

私は、この映画、日本公開しても、結構、ウケるんじゃないかなと思いました。”デーブ”にそっくりではあるけど、でも、イタリア版だから。軽く観れて、考えさせられる映画だと思いますよ。公開されたら、観てみて下さい。ぜひ、楽しんでくださいね。
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