イタリア映画祭にて「サルヴォ」を観てきました。
ストーリーは、
パレルモのマフィア社会で非情なヒットマンとして生きるサルヴォは、ある日、敵対するマフィアの襲撃を受ける。襲撃を命じた敵の名前を聞き出し、報復をするために敵の家に忍び込み、敵の組織の人間を殺し、ボスを殺す事に成功するのですが、その家の中に、敵のボスの妹と思える盲目の娘が居ます。彼女との関わりによって、サルヴォは、危機に陥る事に。
というお話です。

このサルヴォ、まるで"ゴルゴ13"のように、全く笑わず、表情も変わらない男で、典型的なヒットマンなんですね。その身体の中に、心って入っていないんじゃないかって思えるような雰囲気なんです。まして、殺す事に関しては、全く躊躇せず、どんどん殺ってしまうんです。只の殺人マニアかと思ってしまうほど、簡単に、軽く殺していきます。

そんなサルヴォの前に、目の見えない寂しそうな女性が現れます。彼女は、マフィアのボスの妹であり、出会った時は、お金を数えていました。と言う事は、彼女も、マフィアの中で、何らかの仕事をしていたのだと思います。悪の道を歩いていたハズなんです。だけど、サルヴォと出会い、何故か、目が見えるようになります。この目が見えるようになったというのは、悪の世界に居たので、目を使っていなかったのかなと思いました。そして、サルヴォに殺されると思った時、人間に戻り、目が見えるようになったのではないかと思いました。
目が見えるようになった彼女を、サルヴォは殺す事が出来なくなりました。何故かは解りません。でも、私が思うに、彼女の真の姿をそこに見て、自分が住んでいる世界から良い世界に戻った彼女を殺してはいけないと思ったのかなと思いました。日本で言う、堅気の人間は殺してはいけないっていう、ヤクザさんたちの掟のようなものかな。

生かしてしまった彼女は、自分のボスを殺そうとした敵の妹であり、生かしている事を知られたら大変なことになるので、サルヴォは、彼女を廃工場に匿い、隠す事にします。そして、甲斐甲斐しく食事を運び、彼女の世話をするようになり、サルヴォの心に潤いが満ちて来て、人間らしい人間と変わって行きます。人間と関わる事をしなかった男が、一人の女性と出会う事で、これ程に人間になるのかというほど、人間らしい時間を過ごす事になります。
人間って、人と関わる事が大切なんですよね。ネット上の文字だけでは無く、出来れば、話をしたり、触れ合ったりする事が必要なんだと思います。必要最小限の文字だけで交流しているなんて、交流に入りません。やっぱり、相手の顔を観て、声を聴いて、人間の体温を感じて、関わって行けるようにする事が、人がしあわせになって行く一つなのではないかと思いました。

サルヴォは、小さな町で、彼女を隠し通せる訳も無く、破滅へ向かっていると解っても、彼女との関わりを持つことを選び、人間として息を吹き返す事を選びました。とても人間らしい選択だと思います。いつまでもロボットのように、人殺しを重ねるような人生が、決して良い人生とは言えません。パレルモ社会には、マフィアがはびこっていて、小さな頃から、こういう道しか選択出来なかったのかも知れませんが、その間違いに気が付いたサルヴォは、しあわせだったのだと思います。

話としては、とても単純な解りやすい話ですが、初めて長編映画を撮影したとは思えないほど、迫力があって、生きる力のようなものを感じました。2人の脚本家が、監督を務めているのですが、今度は、優しい映画を作って欲しいなと思いました。この映画、日本公開はあるかなぁ~。もし、公開されたら、観に行ってみて下さい。
ぜひ、楽しんでくださいね。
下記に、両監督がお気に入りのアラン・ドロンが殺し屋を演じた「サムライ」という映画を紹介します。
これにインスパイアされているのかも。
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