イタリア映画祭にて、「初雪」を観ました。
ストーリーは、
北イタリア、トレントにある山間の小さな村で、難民申請者として暮らすダニとその娘。トーゴ出身の彼は、内戦から逃れるためにこのイタリアに流れ着きました。逃げる際の疲労で、ダニの妻は、娘を産むのと引き換えに命を落としてしまいます。以来、激しい喪失感から、母親の面影を残す娘ファトウと向き合う事が出来ません。本格的な冬の訪れを前に、養蜂を営むピエトロの手伝いを始めたダニはピエトロの孫のミケーレと出会い、友情を結んでいく。ミケーレは、事故で父親を亡くした心の傷を抱えながらも、健気に生きていた。難民申請が許可されたダニは、何もないイタリアの田舎町から、都会のパリへ行こうと思い始めていた。
というお話です。

難民という難しい問題を描いた作品です。難民申請をしているダニは、許可が下りるまで、トレントの小さな村で暮らさなければなりません。北イタリアの小さな村には、仕事は少なく、小さな子供を連れて暮らすには、辛い場所です。でも、ダニは、良い人々に恵まれて、仕事を与えられ、仕事中は、子供を見てもらえる環境があり、傍から見れば、それほど苦しい状況とは思えません。
でも、ダニは、内戦地から小さなボートで命からがら逃れて来て、妻は酷い移動環境の為に子供を産むのと引き換えに命を落としてしまいました。娘は授かったけれど妻は亡くしてしまい、悲しみでいっぱいなんです。娘の顔は妻に似ていて、見る度に妻の事を思い出し、悲しさを消すことが出来ません。過去に囚われてしまっているんです。
ピエトロの手伝いを始めたダニは、その孫のミケーレと出会い、仲良くなっていきます。ミケーレも、父親を亡くし、過去に囚われていて、母親のいう事も素直に聞かず、明るく見せてはいるけど、内にこもったままのようでした。ダニは妻を、ミケーレは父親を、二人とも、大切な人を突然亡くし、心にわだかまりを残したまま、苦しみながら生きているんです。
そんな二人を、ピエトロは優しく見守っているのですが、ダニは娘を見る度に妻を思い出し、ミケーレは、母が新しい男性と仲良くなる事を父への裏切りと思ってしまい、どしても、新しい一歩を踏み出すことが出来ません。そればかりか、辛い気持ちは、どんどん大きくなるばかり。
ダニは、とうとう耐えられなくなり、難民申請が許可されたら、娘を置いて、パリへ移ろうと考え始めます。そんなダニの気持ちを察したのか、ミケーレは、父親の死を受け入れようと、父親の死んだ現場へダニを連れて向かいます。

大切な人を、突然亡くす悲しみは、他人には解りません。でも、いつの日にか、その死を受け入れなければならないし、自分は、先に進まなくちゃいけないという事に気が付きます。でもね、辛いことですよ。そりゃ、いつまでたっても忘れられないし、何かにつけ、思い出しちゃうし、難しいよねぇ。特に、このダニは、難民としてイタリアに来た訳だし、妻も亡くし、故郷も無くし、何も無くなってしまったんです。娘が残っているけど、妻の死の代わりに娘が生まれたという事が、どうしても受け入れられなくて、もがいているんです。その辛さが、本当に伝わってきました。

難民の問題って、日本だと、ほとんど受け入れていないので、あまり感じませんよね。でも、こんなに苦しんでいる人々が居るんです。日本も、韓国や中国の留学生や研修生を受け入れるのを辞めて、その分、難民の方たちを受け入れたら、彼らに技術を学んでもらって、内戦が落ち着いた時には、自国で、その技術を活かしてもらえば、そんなに良い事ってないんじゃないかな。近隣諸国との交流とか言いながら、何も交流になって無いんだから、切り替えればイイのに。ただ、技術を盗まれるだけなら、よっぽど新しく国を建て直そうという人たちの役に立った方が良いでしょ。色々考えさせられますよ。

私は、この作品、お勧めして良いかな~と思います。でも、とっても大人しい話なので、それ程、観てくれる人が居ないかも。単館系の映画ですね。でも、北イタリアの寒い雪の中で、アフリカの肌を持つ人が働いているのって、ちょっと、あまり見たことが無くて、不思議に思いました。子役のミケーレ君は、とっても白くて、ブロンドで、可愛かったですよ。日本公開は、どうかなぁ。ちょっと難しいかも知れないけど、もし、観る機会があったら、観てみてください。
ぜひ、楽しんでくださいね。