【イタリア映画祭】「ローマ環状線、めぐりゆく人生たち」観る人を魅了する美しいドキュメンタリー | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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イタリア映画祭にて「ローマ環状線、めぐりゆく人生たち」を観ました。


内容は、(ドキュメンタリーなので、ストーリーはありません。)

全長役70キロ、イタリア最長の環状高速道路GRAは、ローマを土星の輪のように取り囲んでいる。空也を問わず、環状線に出動する救急車で人命救助に向かう救急隊員。ヤシの害虫駆除に情熱を傾ける植物学者は、ヤシの幹に巣食う害虫の音声を録音して回る。トレーラーハウスの老いた女性2人組。テヴェレ川でウナギ漁をする老漁師。大学生の娘のアパートに身を寄せる年老いた父親。貴族を自称する男性と家族は、その邸宅を撮影などにレンタルしている。他にも、沢山の環状線沿いで生活する人々の姿を活き活きと描き出す。
という作品です。


環状線

ローマの環状線沿いに住んでいる人々を追って、現代ローマの現状を描いている素晴らしい作品です。色々な人々の生活を通して、人の優しさや、生きる事の辛さ、苦しさ、そして人間の欲望や傲慢さも感じたり、観ていると、本当に、色々な事を思ってしまう内容です。


感想を書こうと思っても、ドキュメンタリー映画だし、これ、思い出す度に、毎回、違う考えが浮かんでくるんです。それぞれの場面が、思い出す度に、もしかして、ああなのかも、とか、こうなのかも、とか、本当に、何種類もの解釈があって、悲しい場面だと思ったけど、次に思い出すと嬉しい場面なのかもって思ったりするんです。それくらい、多種多様な顔を持つ映画なんです。だから、感想、書けないんだよねぇ。

環状線

感想が書けないから、このロージ監督がおっしゃっていた事を少し書きますね。ドキュメンタリー映画を撮っているのですが、今、ドキュメンタリーとフィクションの境が無くなって来ているし、失くして行っても良いのではという話なんです。脚本があって、映画を撮っていても、その時々に、色々な事が起こって、それによって、脚本が変わって行ったりと言う事があるのだし、ドキュメンタリーを撮っていて、ここをこうした方が美しいとか、この時間が一番キレイだから、ここだけ切り取るとか、それって、当たり前ですよね。本当のドキュメンタリーと言いながらも、やっぱり、作為があるし、どちらにしろ編集をするんだから、作っている訳ですよ。

環状線

少し前に、「ガレキとラジオ」という、震災後の姿のドキュメンタリー映画が、やらせだって言う事で、問題になりましたよね。それなら、最初から、ドキュメンタリー風映画とうたっておけば良かったのに。普通、どんなドキュメンタリー映画だって、編集するのだし、家具の位置を動かしたりするし、作為はあるでしょ。完璧にそのままの映像というなら、90分映画を、ずーっと90分、撮り続けて、それをそのまま流すって事じゃないの?そんなの観ても、面白くないと思うけどね。


環状線

どんなドキュメンタリーだって、ドキュメンタリー風の部分はあるのだから、それを、あえて、問題視するのは、おかしいんじゃないの?それを、”一般人”に一流と呼ばれている朝日新聞が、わざわざ記事にするなんて、おかしいでしょ。それがやらせなら、新聞の記事なんて、ほとんどいい加減じゃないですか。”知識人”は、バカな事を記事にしているなぁと思ったと思いますよ。

監督の話に戻ると、ドキュメンタリーを作る時だって、脚本を書いて撮り始めることもあるし、ほとんどフィクションと変わらないんだよっておっしゃっていたんです。そりゃ、そうよね。脚本があったって、そこで起こる事はドキュメントなんだから。ドキュメンタリーの定義ってなんなのかな。本当に、変なこだわりだなって思って、不思議でした。ドキュメンタリーだって、フィクションだって、映画なら、面白いということが一番重要なんじゃないの?そのままか、作為かなんて、どっちだってイイのよ。

環状線

この映画は、ロージ監督が2年という歳月を、出演してくれる方と過ごして、相手が監督の事を空気と感じるようになった時の映像をまとめたようです。いつもカメラを回している訳では無いので、ああー、撮っておけば良かったと思う場面もたくさんあったそうですが、それは、仕方ないと思って諦めたそうです。だけど、観れば解りますけど、この映像以外に、撮りたかった場面があったっていうのに驚いてしまうほど、完璧に美しいし、感じる映像ばかりですよ。

でも、映像を観て、自分で考えなければ、そこからは何も生まれません。この映画は、とても頭を使う映画だと思います。ウナギが動いている映像、ヤシの木の中の虫の映像、救急車の中で病人に語り掛ける映像、全てをそのまま観ているだけでは、映画は、何も語り掛けてきません。その映像を観て、この人は、どういう生き方をしてきたんだろうとか、このウナギは、”捕まっちゃった!”って思っているだろうなとか、ヤシの木は、病気を観てくれてありがとうって言ってるなとか、出てくる色々なものに同化してみると、どんどん世界が広がって行くんです。

環状線

私は、この映画、とってもお勧めしたいけど、色々なものに同化して、頭で考えて観れる方は良いかも知れませんが、ただ、お話を追って行き、アクションを楽しんだりする方には、つまらないと思います。ヴェネツィア映画祭で金獅子賞を貰った作品なので、気になったら、観てみて下さい。

ぜひ、楽しんできてくださいね。夏に公開予定です。カメ