イタリア映画祭にて「マフィアは夏にしか殺らない」を観ました。
ストーリーは、
1970~80年代のパレルモ。マフィアも反マフィアの立役者たちも、隣人としてアルトゥーロ少年の日常生活に存在していた。「恋をしたら殺される」と信じていた彼は同級生のフローラに告白出来ない。そんな彼の心を知っているのは彼女と同じ建物に住むキンニーチ判事だけ。フローラがスイスに引っ越す日に路上に告白を書くが判事の暗殺が起こり、告白は届かなかった。青年になったアルトゥーロは、TV局に就職し、現場でフローラと再会する。紆余曲折ありながら、2人は結ばれ、父となったアルトゥーロは、マフィアの教団に倒れた人々の記念碑を幼い息子と周り、パレルモの歴史を思い返す。
というお話です。

アルトゥーロは、フローラに告白したいけど、どうしたら良いのか分からないでいると、TVで、その時の首相のアンドレオッティが、「妻に墓場で告白したんです。」というのを聞き、何故か自分も墓場で告白すれば上手く行くと思いこんでしまい、その時から、アンドレオッティの大ファンになってしまいます。小さな子供が政治家のファンだなんて、可笑しいんだけど、そこから、アルトゥーロは、政治にも興味を持ち、町にマフィアは居ないというアンドレオッティの言葉を信じてしまいます。
マフィアは居ないと信じながらも、自分の周りで、マフィアに沢山の人が暗殺され、事件が起こっているのを見て、段々と現実を認識し始めます。そして、アルトゥーロは大人になって行くんです。この時代、政府とマフィアの抗争は激化していて、政治家の中には、マフィアに取り込まれている人間もいたようで、マフィアの一掃は難しかったようです。ここに出てくる、アンドレオッティという政治家も、マフィアとの噂が絶えなかったということです。
アルトゥーロという役は、本当に、何処にでも居る普通の市民です。普通の人間が、どのように自分の国の政治を見て、どのように関わっているのか、また、どれほど関わっていないのかという事が、とても現実的に描かれています。ニュースで政治の事を聞いてはいるけど、でも、自分の生活からは程遠いところで行われている事で、でも、自分たちの生活の基盤は、政治で決められているのだから、気にしなければいけないし、どうしようもない政治の事を、眺めているという姿が、とても理解出来ました。私たちも同じですもんね。
だけど、政治の事を知らなくてよいのかと言うと、やっぱり知る必要があるし、歴史は知っておくことが大切です。このアルトゥーロは、自分の息子に、自分たちが住んでいる場所の歴史を、キチンと教えて行くんですよ。これ、やっぱり、親の役目ですよね。学校が教えてくれるのは、ただ、本に書かれている文字だけなんです。だから、親が、その場所に連れて行って、解っても解らなくても、ちゃんと伝える事が大切なんです。そうすれば、子供は、歴史がある自分の住む町を好きになるし、国の政治にも興味を持ち、色々考えるようになる。人間、考えなくなったらおしまいです。
アルトゥーロという男性は、ダメ男に見えるけど、とっても優しくて、人から好かれるタイプなんじゃないかな。真面目で信頼出来る男だと思いました。容量が良くて、頭が良さそうに見える男より、信頼出来る男の方が絶対に買いだよね。あまりに容量が良いと、自分も騙されそうで、ムカつくんだもん。その点、このアルトゥーロは、ぼちぼち進めて行って、最後まできちんとやりそうで、良いお父さんになりそうでした。

この映画、日本公開はあるかなぁ~。イタリアの歴史を知っている日本人は少くて、この映画でピンとくる人間は少ないと思うから、日本で人気が出るのは難しいかも。イタリアの歴史をある程度、勉強してから観ると、楽しめるだろうと思います。もし、観れる機会があったら、観てみて下さい。
ぜひ、楽しんでくださいね。