「それでも夜は明ける」を観てきました。
ストーリーは、
1841年、奴隷制廃止以前のニューヨーク、家族と一緒に幸せに暮らしていた黒人音楽家ソロモン(キウェテル・イジョフォー)は、ある日突然拉致され、奴隷として南部の綿花農園に売られてしまう。狂信的な選民主義者エップス(マイケル・ファスベンダー)ら白人たちの非道な仕打ちに虐げられながらも、彼は自身の尊厳を守り続ける。やがて12年の歳月が流れ、ソロモンは奴隷制度撤廃を唱えるカナダ人労働者バス(ブラッド・ピット)と出会い……。
というお話です。
今から1世紀半以上昔のアメリカで実際にあった事件のお話です。まだ、奴隷制度があり、でも既に自由黒人という制度もあり、この自由黒人になれば、奴隷として使われる事も無く、一人のアメリカ人として生活が出来た時代です。そんな時代に、自由黒人となり、音楽家として生活をしていたソロモンの数奇な運命を描いています。
ソロモンは、ニューヨークで妻と子供2人と幸せに暮らしていたのですが、騙されてワシントンに連れ出され、そこで拉致されて、南部の農園の売られてしまいます。最初は、カンバーバッチ演じる上品な農園主フォードに売られ、そこでサトウキビの収穫や、材木の切り出しなどの仕事をしています。彼は頭が良く、機転も利くので、農場主に気にいられるのですが、白人の農場監督官に嫉妬され、命の危険に晒される事に。結局、農場内の問題を解決するために、ソロモンを他の農場に売る事になります。
今度はマイケル・ファスベンダーが演じるエップスの農場に売られ、そこで、奴隷に対する酷い仕打ちを目の当たりにします。いつの日か、必ず家に帰りたいという望みを捨てないソロモンは、自分の命を危険に晒さない為に、頭の悪い素直な黒人奴隷として働き始めます。色々な問題があり、黒人は虐げられていて、何度も辛い目に合いながらも、決して希望を無くすことをしませんでした。そこで、カナダ人労働者のバスに出会い、自分の境遇をコッソリ話始めます。
この時代、自由黒人というものが出来ていましたが、まだまだ、黒人への差別はキツかったようです。そして、自由になる黒人が居るということは、奴隷となる黒人が減って行くということなので、コッソリ、北部の黒人を拉致して、南部に売っていたのではないかと思います。今でも、子供をさらって兵士にする国とか、労働者にする国とか、ニュースで聞くことがありますが、日本では、そんな事、考えられないので、この映画の深刻さは、アメリカ人ほど解らないのではないかと思います。日本は、本当に幸せな国です。

でも、ソロモンという人の苦しみは、伝わってくると思います。この演技、素晴らしいものですし、周りの人間も、素晴らしかったですもん。特に、ルピタさん演じるパッツィーという女性、農場主エップスの慰み者になっているのですが、そんな中でも、彼女なりに必死で生きているという姿が、何とも悲しくて、辛くて、それでも、生きて、自由になる日を夢見ている彼女は、美しいと思いました。
こんな時代があったのだと描くことで、もう、決して、こういう時代には戻らないという気持ちが見えて、アメリカの覚悟のようなものを感じました。こういう作品にアカデミー賞が目を向けるようになって良かった。大統領の執事の涙でも描かれていますが、初めて黒人の大統領が選ばれ、本当の自由の国となってきたアメリカが、これからどういう道を辿るのか、日本もしっかり見ていないとね。日本は独立国だけど、いまだ、アメリカが作った日本国憲法を護っている、仮の独立国家ですよね。だから、アメリカの動向に気を付けていないと、大変な事になります。
私は、この映画、とてもお勧めしたいと思いますが、アカデミー賞を貰った作品というのは、内容的には単館系っぽいものなので、アクションやコメディで楽しんで映画を観たい方には、眠くなる内容だと思います。それを解って、観に行ってくださいね。ムチ打ちの場面などは、残酷なのでそういうのがダメな方も、辞めた方が良いかも知れません。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
・それでも夜は明ける@ぴあ映画生活