「キリングゲーム」を観てきました。
ストーリーは、
アメリカ北東部からカナダへと大自然が広がる、アパラチア山脈。そこに山小屋を構え、一人暮らしをしている元アメリカ軍人のベンジャミン（ロバート・デ・ニーロ）。そんな彼の前にセルビア人の元兵士コヴァチ（ジョン・トラヴォルタ）が現れ、一緒に狩りを楽しむことに。しかし、山へと足を踏み入れるや、コヴァチはベンジャミンに向けて矢を放つ。混乱しながらも、軍隊と山での生活で得た経験と技術を生かして応戦するベンジャミンだが、この人間狩りにはボスニア紛争で起きたある事件が深く関わっていた。
というお話です。
結構、深い事を描いていて、驚きました。復讐劇だけかと思いきや、そんな簡単な事では片づけられない、戦争と言うものの深い悲劇を描いていて、良く考えられていると思いました。まず、ボスニア紛争での、虐殺の映像が出るんです。あまりにも残酷な映像に、観ているこちらも、何でこんな酷い事が人間に出来てしまうんだろうという気持ちになりました。その映像から一転、現代に戻るんですね。
セルビアの元兵士コヴァチは、ボスニア戦争時にアメリカ軍とＮＡＴＯ軍に制圧され、瀕死の重傷を負った過去があり、その時の敵に復讐するため、情報を集め、やっと、その時の敵を見つけます。そして、復讐をするために、ベンジャミンの前に立ちます。その執念たるや、何ものにも揺るがないような感じで、まるで、日本で言うと、鬼のようになっているんです。
最初は、何の疑いも無く、狩りを一緒に始めるベンジャミンでしたが、いきなり自分を狙ってきたコヴァチに驚きます。そして、段々と、コヴァチがボスニア紛争時の、セルビアのサソリの部隊に居た事を思い出していきます。ベンジャミン自信も、ボスニア紛争での惨状を見てから、人間としての在り方を見失い、全てから目を背けるという生活をしていたのですが、コヴァチと出会い、ボスニア紛争での事に向き合わなければならなくなります。
戦争では、どちらが悪いとか、加害者と被害者というものは無いんです。どちらも悪いし、どちらも被害者なんですよね。自分の立ち位置によって、正反対の解釈になってしまう。コヴァチは、自分がやられたから復讐するって事なんですけど、コヴァチ自身が、紛争で沢山の人に残酷な事をやってしまっているんですよね。だから、ベンジャミンからしたら、コヴァチは加害者で、加害者に制裁を与えたと思っている訳ですよ。これ、不思議ですよね。どちらも加害者であり、どちらも被害者なんです。
戦争って、本当に人間を狂わせてしまうんですよね。ボスニア紛争でも、残酷な虐殺が沢山行われていたそうです。セルビア人からすれば、殺さなければ殺されるし、神も自分たちのやっている事は許してくれていると思っちゃうんでしょうね。同類同士で殺し合うなんて、神が許す訳が無いのに、全く、罪悪感が欠けてしまう。本当に、恐ろしい事です。きっと、日本も、第二次世界大戦で、同じような状態になってしまったのでしょう。だから、日本人なら、こういう状況が解ると思いますよ。
コヴァチとベンジャミンは、殺し合いのゲームを始めます。殺るか殺られるか、ギリギリの攻防を重ねて、すごい戦いを繰り広げます。それはもう、残酷で、相手をギリギリまで追い詰め、犯した罪を神に懺悔させることを強要するんです。２人の男が、自分が封印してきた事実に向き合って、どういう決着をつけるのか、映画を観て下さいね。結構、深いものがありますよ。
自分の罪を見つめもしないで、人を責めるだけの人間は、最低の人間です。戦争と言うものに、加害者も被害者も居ないんです。だから、誰かを責めるというのはお門違いなんです。それでも、誰かを憎まなくては生きてこれなかったというのは、悲しい事ですね。そこから抜けない限り、先に進む事なんて出来ないのに、気が付いていない。そんな事を描いていて、イイところを突いているなぁって感心しました。
この映画、私は、お勧めしたいと思います。但し、アクションなどの戦いのみを楽しむのなら、この映画が伝えたい事では無いので、他のアクション映画を観に行った方が良いと思います。でも、戦争と言うものが生んでしまう悲劇を理解するために観るのなら、とても良い作品だと思います。戦争には被害者も加害者も無いので、謝罪するなど、あり得ないんです。それが解らない近隣国がある日本なら、この映画が描いている事が、とても良く解ると思いますよ。日本はベンジャミン状態なんです。ぜひ、観てみて下さいね。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
・キリングゲーム＠ぴあ映画生活