「フォスター卿の建築術」を観てきました。
内容は、
イギリスに"モダニズムのモーツァルト"と評される建築家がいる。ロンドンを訪れたことがある人なら、ノーマン・フォスター卿の設計した圧倒的に優雅な建築物をいくつも目にしているはずだ。大英博物館グレート・コート、ミレニアム・ブリッジ、スイス・リ本社(通称ガーキン)、ロンドン市庁舎など。その活躍はイギリス国内に留まらず、世界中で多くのプロジェクトを手がけ、国際的な評価を受けている。現在78歳のフォスター卿はノートと鉛筆を携え地球を飛びまわる。その建築は革新性と洗練を兼ね備え、リチャード・ロジャース、レンゾ・ピアノと並ぶハイテク建築の御三家の一人として世界に名を広め、エリザベス女王より貴族爵位を与えられる。
というものです。
私も、建築という仕事に付いているので、とても興味があり、観てきました。フォスターさんの建築物は、力強い中に柔らかさがあるもので、リチャードやレンゾとは、ちょっと違う、宇宙的な建物なんです。構造的にどうなのかなぁと思うのですが、ちゃんと、すっごい構造エンジニアが付いていたので、強度も完璧なんでしょうね。但し、日本で、あの建物を建てようとすると、役所の許可が出るかどうかは判りません。日本は、地震国ですからね。でも、デザインは素晴らしいですよね。

フォスターは、家が貧しかったそうですが、ちゃんとマンチェスター大学で建築を学び、その後、イェール大学の建築にも奨学金で通った、勤勉な方です。彼の時代は、まだ、バウハウスの教育を受けた方が教授をやっていて、建築の基礎から徹底的に教育され、最高の英才教育を受けることが出来たようです。私などから見れば、本当に羨ましい限りです。バウハウスのモダニズムなんて、ぜひ、講義を受けてみたかったな。

フォスターは、大学を出て、友人たち4人で共同で事務所を持ち、仕事を受け始め、そして、独立をしたそうです。どこの建築事務所にもある悩みですが、無いモノは仕事と資金だけ、という状態になり、仕方なく、色々な工場の設計を受け始めたのがきっかけで、段々と、その才能が認められていったそうです。何が、その人のチャンスになるか解りませんよね。

そこから、フォスターの設計は色々な場所で建築されていくのですが、建築というものは、芸術ではありません。建築物は、建築家とクライアントの共同作業であり、旅であるというセリフが映画の中にも出てきます。芸術ならば芸術家の創造で出来上がるものですが、建築物は、建築家の想像力とクライアントの希望と動線、そして資金で決まるものです。決して、創造のみで出来上がるものではありません。そして、出来上がった後も、その建物を使う人間により、変化していくのです。それって、芸術では無いと思うけど、芸術に匹敵するほどの造形物ですよね。素晴らしいと思いました。

フォスターさんのドキュメンタリーなので、何とも、感想が出てこないよなぁ。凄いなぁとか、羨ましいなぁとか、見習いたいなぁとかいう感想しか出てこず、素直な映画の感想として、書きようが無いんです。自分の仕事が関係している映画だと、どーも、客観的に観れないと言うか、ちょっと、対抗心が出てしまうと言うか、複雑になってしまって・・・。(笑)
でも、素晴らしい建築物が、どうやって出来上がったのかと言う事が良く解って、楽しめると思いますよ。フォスターの建築物は、まるで火星や、デューンに来たかのような気持ちにさせてくれるんです。霧の中に現れる、未来の世界のようで、ステキですよ。日本とは、ちょっと違う世界を感じてきてください。

この映画、やっぱり、建築に興味がある人でないと、あまり楽しめないかも知れません。ドキュメンタリーだし、専門用語も出てくるので、興味が無いと、眠くなるかも。建築に興味のある方、ぜひ、観に行ってみて下さい。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
「フォスター卿の建築術」 http://www.uplink.co.jp/foster/