「鑑定士と顔のない依頼人」利休と同じ目を持ち、秀吉でなく女に追い詰められた男。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「鑑定士と顔のない依頼人」を観てきました。


ストーリーは、
天才的な審美眼を誇る美術鑑定士ヴァージル・オールドマン(ジェフリー・ラッシュ)は、資産家の両親が遺(のこ)した美術品を査定してほしいという依頼を受ける。屋敷を訪ねるも依頼人の女性クレア(シルヴィア・フークス)は決して姿を現さず不信感を抱くヴァージルだったが、歴史的価値を持つ美術品の一部を見つける。その調査と共に依頼人の身辺を探る彼は……。
というお話です。


鑑定士

この映画を観る前に「利休にたずねよ」を観ていたので、同じ美を探求する者としての共通点を見ました。美を追い求めるのは良いけど、どうしても、他に目が行かなくなるんですよね。自分が一心不乱に追い求めている周りで、どれだけの人が、イヤな思いをしたり、腹を立てたり、時には絶望して倒れて行く者も居たり、そんな事が回りで起こっている事に目を向けること無く進めて行けば、灰汁が溜まって、自分の周りの水が濁って行ってしまうということに気が付かない。困ったもんです。

利休には、宗恩という自分を理解してくれる味方が居たけど、このヴァージルには、味方が誰も居ないのです。天才であるが故に、自分と同じレベルにある人間でないと対当と思わずに、見下げていたのだと思います。だから、味方も出来ず、信頼も得られず、ただ、憎しみの目を向けられるだけだったんです。とても可哀想だとは思いますが、それは、自業自得であり、誰が悪いわけでも無い。どうして、そんな老人になるまで、そういう事に気が付かなかったのか不思議ですが、ま、仕方ないですね。

鑑定士

サスペンス映画なので、ネタバレ厳禁ということで、またも、感想が難しいのですが、なんとか書いてみましょうか。


ヴァージルは、ハッキリ言って、高慢ちきなジジイって感じで、成り上がりという臭いがプンプンしていました。そんな彼でも、協力者は居て、一応、彼から報酬を貰い、彼の仕事を引き受けているんです。そんな彼の仲間の道具屋に、ヴァージルは、ひとつの”ギア”を持ち込みます。どーも、そのギアは、この世で最初に作られたロボットのものではないかと解り、そのギアを手に入れた不思議な館の秘密にのめり込んでいきます。

鑑定士

その館の家具などの鑑定を頼まれたヴァージルですが、何故か、依頼人は姿を現さず、壁の向こうから話しかけるだけ。でも、声の感じから、若い女性であるということは解り、ヴァージルは、どんどん興味を惹かれて行きます。その女性、クレアは、何年も外に出た事は無く、その部屋で一人、暮らしていたというんです。うーん、私は既に、その時点で、胡散臭いなぁと思っていたのですが、ヴァージルは、全く疑うそぶりも見せず、マヌケ顔で彼女の顔を盗み見ようと、スケベなオッサン丸出しで、隠れたりしています。ちょっとかわいいですよ。

鑑定士

彼女と対面し、彼女の館にあったロボットのかけらを拾い集め、彼女の館のものをオークションに出品するための鑑定をし、と、色々な関わりを持ちながら、親密な関係になっていくクレアとヴァージルなのですが、観ていると解ると思うのですが、何か、2人の間には、違和感があるんです。ヴァージル本人は感じていないのだろうと思いますが、きっと、観る人には解ると思います。

一体、クレアにはどんな秘密があるのか、ロボットのカケラの意味はあるのか、他にもバレーリーナの絵の意味、買い戻された贋作の女性の絵、等々、沢山の蜘蛛の糸が張られ、ヴァージルは、その謎から逃げることが出来なくなります。それは、とても周到に張り巡らされており、とんでもない結末を迎えるのですが、それは、観てのお楽しみです。

鑑定士

良く出来たストーリーでした。この構成と進み方は、すごいです。とっても楽しめました。こんな展開になっているとは思いませんでした。題名からして、ヒューマンドラマかと思っていたのですが、すごい推理サスペンスに出来上がっていましたよ。

完璧な鑑定士だったけど、人を見る目は無かったんですね。そして、自分を見る目も無かったのだと思います。美しい物は見えても、人を見る事が出来なかったんです。不思議な話でした。

鑑定士

私は、超お勧めしたい映画です。この年末に、極上のサスペンス映画をどうぞって感じです。これは、若い人が観ても、とっても面白いと思いますよ。私が観に行った時、何となくお年寄りが多かったけど、若い人の方が、これ、楽しめるんじゃないかな。ぜひ、観に行ってみて下さい。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ




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