「利休にたずねよ」利休という人間を構築した、妻・宗恩の女の闘いをその眼に焼き付けて。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「利休にたずねよ」の試写会に行ってきました。


ストーリーは、

3,000もの兵に取り囲まれ、雨嵐の雷鳴が辺り一帯に響き渡る中、豊臣秀吉(大森南朋)の命によって切腹しようとする茶人・千利休(市川海老蔵)の姿があった。ついに覚悟を決めて刃を腹に突き立てようとする彼に、利休夫人の宗恩(中谷美紀)は「自分以外の思い人がいたのではないか?」という、かねてから夫に抱いていた疑念をぶつける。その言葉を受けた利休は、10代から今日に至るまでの波瀾(はらん)万丈な道のりを思い出していく。

というお話です。


ゆきがめのシネマ。試写と劇場に行こっ!!-利休

もちろん、千利休の生涯を描いているのは確かなのですが、若い時代、茶人としての成長期、利休となってからの生き方を、描いていて、3タイプの利休を観る事になります。千利休と言うと、小難しい事を言いながら、「美とは私が決めること」なんて、高飛車な事を言い放つ、ムカつくオッサンだけど超人と思っていたのですが、この映画の中には、若く行動的な奔放な青年と、自分の過ちを心に秘めて美を追求する男性、利休として万人に崇められながらも秀吉に疎まれた老人、として描かれていて、何とも、人間的な人物なんです。美しい物を求める、人間なんです。超人じゃないんですね。それが、とても斬新だと思いました。


ゆきがめのシネマ。試写と劇場に行こっ!!-利休

人間としての利休は、若い頃は老舗の坊ちゃんで、道楽者なんですね。でも、ある女性と出会い、激しい恋をします。その恋が、利休が利休となる最初のターニングポイントだったと思うのですが、この恋により、本物の茶人としての第一歩を踏み出せたのではないかと思いました。そして、茶人として信長に重用されるようになり、その名を、世に知らしめるようになります。


利休が利休として有り得たもう一つのポイントは、妻の宗恩だと思いました。彼女の強さは、何事にも惑わされず、ピッと貫くような美しさがあり、利休の横に宗恩が寄り添っていると言う事で、利休も強くなれて、何事にも惑わされることが無くなったのかなと思えました。完璧な妻であり、完璧な女性に見えて、もう、私と同じ女とは思えないほど、美しく、凛としていて、自分が恥ずかしくなるほどでした。


ゆきがめのシネマ。試写と劇場に行こっ!!-利休

2人の女性が造り上げた利休という茶人は、本人が思うよりも大きくなってしまい、時の人である秀吉をも、嫉妬させるほどになってしまいます。利休は、天下を取るなんてことは微塵も思っていないのに、その美を追求する姿が、あまりにも大きくなってしまったので、目障りになってしまったのでしょう。本当は、誰もが彼を自分の物にしたかったのに、利休は誰の物にもならず、ただ、そこに在る自然の物として生きる事を選んでしまったが為に、不幸が訪れることになります。

利休の伝記のように思われているかも知れませんが、考えてみると、妻・宗恩と利休の初恋の人との闘いが、ずーっと底に流れているんです。利休を茶人として歩き出させたのは初恋の人であり、その影は、いつまでたっても、利休の後ろに付いていて、宗恩は、それが解っていながら、利休の妻であるが為に、その事を、最後の最後まで、口に出さずにいるんです。


ゆきがめのシネマ。試写と劇場に行こっ!!-利休

宗恩は、結婚して直ぐの頃かな、利休に、私のような者を妻として良かったのかと聞くのですが、利休は、「妻はお前でしか有り得ない。」というような事を言うんです。その一言で、宗恩は、昔の恋も何もかも受け止めて、妻として努めようと思ったと思うのですが、やっぱり、心のどこかに引っかかっていたのでしょうね。その静かながら、燃えるような心の葛藤を、ぜひ、観てみて下さい。利休を育てたのは私という強い思いがありながら、どんなに闘っても勝てない敵を側に感じて、宗恩はどんな気持ちだったのでしょう。最後に、宗恩が下した決断は何だったのか、映画で感じてきてくださいね。

ゆきがめのシネマ。試写と劇場に行こっ!!-利休

この映画、美しいということばかりが取り上げられていると思いますが、美しさに隠された人間の醜さが、とても良く描かれていたと思います。宗恩はプライドが高く、決して思い人が居る利休をなじる事はありませんでしたが、その心の奥には嫉妬という炎があったと思います。宗恩が利休の妻で無くてはならないのは、そのプライドの高さだと感じました。そして、自分の理解出来ない美を追求する利休を妬む秀吉、敬愛する秀吉を惹き付ける利休を憎む石田三成、どんなに利休を理解していても権力ある秀吉に逆らえない武将たちなど、人間がどれほど、その心の奥に醜い炎を宿しているかが解ります。そして利休自身も、一人命を長らえてしまったという、心の弱さを抱えています。人間とは、美しさだけではないと言う事が解りますよね。この対比が面白いと思いました。


ゆきがめのシネマ。試写と劇場に行こっ!!-利休

本当は、もっと、細かいこだわりが山ほどあるんですけど、もう感想が十分長くなっちゃった。きっと、これから徐々に、そういう説明も色々な記事でされると思いますが、何億もするような、本物の茶器を使っていたり、建物も凄い場所を使わせてもらって撮影しています。色使いも素晴らしいし、小物、特に花などの使い方も素晴らしいです。ここまでこだわるかって言うほど、こだわっていますので、ぜひ、見つけて下さいね。監督は、女性ならではの目線で観て欲しいとおっしゃっていました。

ゆきがめのシネマ。試写と劇場に行こっ!!-利休

時代劇なので、あまり若い人向けでは無い様に思われるかも知れませんが、究極のラブストーリーなので、若い人も、ぜひ観て欲しい。もちろん、女性は、ぜひぜひ観て欲しいです。その美しさは、ガサツな男性よりも、女性が観て楽しむべきものだと思います。グイグイ全面に出る女性が多い現代、いつも後ろで待っている女性に見えるけど、本当は前にいる男を創っているという女性を観て欲しいです。そういう勝ち方もあると言う事を理解して欲しい。私は、この映画、超超お勧めしたい作品です。

ぜひ、楽しんできてくださいね。カメ


P.S : あまりにも良かったので、公開されたら、また観に行くつもりです。思った事を、今回だけじゃ書ききれなかったので、再度、感想を書いちゃうかも知れませんが、許してね。(笑)




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