TIFFアジアの未来「流れ犬パアト」を観ました。TIFF16作目です。
ストーリーは、
犬を飼うことが禁止されている町で、妻とのトラブルを抱える男が飼っている犬の名はパアト。トラブルの末に男は殺される。パアトは家を飛び出して都会をさまよい、様々な人々との出会いと別れを繰り返していく。そこから浮かび上がる人間社会の光と影…。
というお話です。
ちょっとシェパードっぽいパアトくん。彼は、ある男性に飼われていて、とっても可愛がられているのですが、その男性は妻との問題を抱え、おまけに、犬を飼ってはいけない地域で、警察から、パアトを隠しているんです。そんな状態ですが、男性とパアトはとてもしあわせに暮らしていました。ある日、事件が起こり、男性が殺されてしまいます。
パアトは、主人が亡くなった事が解らず、ずっとそばに寄り添っているのですが、何日も動かないので、仕方なく、そばを離れ、テヘランの街をウロウロと歩き始めます。お腹も空くし、眠くなるし、寂しいし、人間が恋しくなり、公園で遊ぶ犬と飼い主に近づいて行ったり、お金の為に臓器を売ろうとしている女性に近づいて行ったり、不倫の末に妊娠してしまった女とその男にかまって貰ったり、色々な人々に出会い、発展したテヘランの街の裏で、どんな生活が営まれているのかが描かれています。
それにしても、このパアトくん、すごい役者なんですよ。何故、こんなにも悲しそうな顔をするのかしらと思ったり、楽しい顔をしてみたり、表情はほとんど無いはずなのに、そう見えるんです。その振り向き方とか、瞬きとか、道路にうつ伏せになったり、その時、それぞれ、その態度に、表情が現れていて、観ているこちらは、一緒になって、お腹空いたねーとか、誰か一緒に居てくれないかなーとか、思ってしまうんです。
やっぱり、動物と子供には勝てないですね。誰が演じるよりも、パアトくんの目を通して、社会を映すことが、一番、心に訴えてくるのだということが、すごいと思いました。今、イランでは、臓器の売買、売春、薬物取引、夫婦関係の問題、不倫の横行、等々、多くの問題があるそうです。でも、日本でも同じですよね。同じような問題が、社会では沢山起きています。それを、無垢な犬などの目を通してみると、本当に、人間って汚い動物だよねっていう気持ちになります。
この映画は、私がうだうだ感想を書くよりも、まず、観て貰うのが一番だと思うんですよね。パアトくんの目を通しての社会が、どのように映っているのか。本当は、何がイケないのか。誰が悪いのか。どこで間違って行ってしまうのか。この映画を観ると、そんな事を、色々考えてしまうと思います。
私は、この映画、お勧めしたいと思いますが、日本で公開があるかなぁ。映画祭では、すごい人気で、直ぐにチケット完売だったようなのですが、公開は、まだ決まっていないようです。この映画、スッキリ終わる映画ではないので、普通に邦画を良く観ているような方には合わないかも知れません。でも、動物が好きな方や、イランの一般市民の生活を知りたい方などには、とても楽しめる映画だと思います。
もし、公開されたら、ぜひ、楽しんできてくださいね。
http://tiff.yahoo.co.jp/2013/jp/lineup/works.php?id=A0002