TIFFコンペティション「馬々と人間たち」を観ました。TIFF14作目です。
ストーリーは、
アイスランドの荒涼たる大地。人々にとって馬は単なる動物を超えた存在であった。馬と人間の欲望と生と死を、奇想天外なエピソードの連続で語る未曾有の「人馬ドラマ」。アイスランドには、アイスランド馬と呼ばれる独自の種が存在しており、荒天や噴火などの厳しい自然環境を生き延びてきた馬に対し、人々は並々ならぬ共感を寄せているという。本作は、単なる動物と人間という関係を超えた馬と人との強固な結びつきを、奇想天外なエピソードの連続で語るものである。
というお話です。
これ、とっても感想が難しいです。ある小さな町でのお話だと思うんですけど、馬の牧場がいくつもあって、そこに住む人々の小さなエピソードがたくさん入っているんです。それぞれの牧場には、もちろん、馬が居て、人が居て、それぞれに隣の牧場の事は気になったり、妬みがあったり、心の中に潜めている思いがあったり、難しいんです。
もちろん、人間のことなど、馬にはお構いなしなんだけど、人間に飼われている以上、人間の掟に従わなければならず、馬は自分たちの好き勝手には出来ないんです。でも、馬と人間との信頼は厚く、馬も、人間に従う事を、それほどイヤだと思っているようには見えません。本当は、すごくイヤなのかも知れないけど、一度従うと決めたら、それを最後まで貫くという掟が馬の中にはあるのかも知れません。
馬は、人の移動手段になり、人の食物にもなり、人の体温にもなり、命をすべて人間に捧げてくれているんですよね。どんな時も、人間の助けになってくれる。でも、人間は、その分のお返しを馬にしているんだろうか。馬は、ただ、道具として使われ、死んでいく。やっぱり、一番残酷なのは人間なのかなって思いました。
アイスランドの人々は、馬と生きる事を選択し、馬もそれを良しとして、それが人間のエゴだとしても、一緒に暮らして行く事を楽しんでいる。それは、馬は人間を、人間は馬を受け入れていて、そこに信頼があるからこそだと思いました。馬のつぶらな瞳の中は、いつも何かを訴えているように見えて、それは、あなたを信頼しているから、僕たちを裏切らないでと言っているようです。
エピソードの一つに、ある牧場ともう一つの牧場の馬が、突然、交尾を始めてしまいます。その二つの牧場主は、お互いに思い合っていて、出来れば付き合いたいと思っているんですけど、馬同士がいきなり交尾をしてしまい慌てます。この地域の掟では、いきなり他人の馬に交尾をするというのは屈辱を与えたというように思われます。交尾をされたメス馬は、牧場主に従わず、交尾をされたという屈辱のため、牧場主に殺されてしまいます。交尾をしたオス馬の牧場主は、屈辱を与えたということで、このオス馬を虚勢するしかありません。お互い、馬を愛しているのに、そして、お互いも思い合っているのに、掟の前にはどうする事も出来ず、2人は気まずくなり、交流が出来なくなってしまいます。馬の為に、人間の関係も左右されるんです。
他にもたくさんのエピソードが出てくるのですが、全部は書けません。一つ、気になったのは、寒い地域に取り残されてしまった人と馬が、救助が来るまでの間、凍え死ぬのを避けるため、馬を殺して、馬の内臓を出し、そのお腹の中に入って温まって生き延びるというエピソードがありました。これ、スターウォーズで、ルークが寒いところで、馬ではないけど、怪獣のお腹を裂いて、”臭い!”と言いながらも、その中で温まって助かるという場面を思い出しました。アイスランドなどの寒い地方では、寒いところで生きながらえる手段として、この方法を取るそうです。
色々なエピソードがあって、それぞれに、笑える部分も、楽しい部分も、辛い部分もあったりして、とても楽しめるし、馬と人間という関係を、考えさせられると思いますよ。日本公開は、まだ決まってないようですが、これ、どうかなぁ。あまり万人受けしそうにないけど、面白いことは面白いです。もし、公開されるようなら、馬というモノを知る為にも、ぜひ観てみてくださいね。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
http://tiff.yahoo.co.jp/2013/jp/lineup/works.php?id=C0009