TIFFコンペ「ある理髪師の物語」を観ました。TIFF6作目です。
ストーリーは、
未亡人となったマリルーは、夫が営んでいた町で唯一の床屋を相続する。夫に理髪師としての教育を受けていた彼女は、自分の手で床屋を再開するものの、女性が理髪師をしているという事で、顧客の信用を得る事が出来ない。そんな時、甥の友人を助けたことから、飲み屋の女性や親族から支援を受けて、床屋は繁盛し始める。そして、彼女は運命の渦に巻き込まれて行く。
というお話です。
マルコス独裁政権下の1970年代頃のフィリピンの田舎のお話です。まだ、女性は男性に尽くすべきだという考えがあり、女性が男性の散髪を行うという事に違和感を感じていたようです。でも、周りの人々の協力により、古い考え方から新しい考え方へ。それまで、タブーだったことが、大丈夫になって行く。そして、それは、マリルーの成長の第一歩だったんです。
床屋を経営するようになり、仕事も増えて、市長の散髪まで請け負うようになります。そこで、新しい出会いもあり、社会情勢にも興味を持つようになって行きます。それまでは、夫の後ろに立ち、社会の事など気にせず、夫の世話を焼くことのみが自分の仕事だと思っていたのに、前に立つ夫が居なくなったことから、彼女の人生が動き出し、社会情勢や人々の心を映し出していくのが、とても面白いと思いました。
マルコス独裁政権って、酷かったんですね。日本に居ると、マルコス大統領側の話しか報道されず、イメルダ夫人が靴を山ほど持っていたとか言う、無駄な情報しか入ってこないですもんね。ジャーナリズムと言いながら、全く真相を報道出来ない無駄な日本のマスコミは、マジで無駄ですね。フィリピンの人民が、戒厳令でどれほど大変な目に合っていたのかなんて、今になって知りましたもん。新聞は嘘ばかりです。
マリルーは、市長の散髪を請負うようになり、市長夫人と友達になります。とても美しい市長夫人は、市長の浮気や、マルコス独裁政権の為にやっている悪事を知っていて、とても悩んでいるんです。そんな夫人を癒す為に、話し相手になり、花を届け、一緒に散歩に出かけたりするのですが、夫人の気持ちは軽くなる事はありません。

そして独裁政権に対しての反乱軍に参加した甥を助けるために、マリルーは、集会場所を提供したり、食事を提供したり、世話をすることとします。
この市長夫人との出来事と、甥の反乱軍参加が、彼女の考え方を大きく変える事となり、ただ、従っているだけでは、何も始まらないという事を理解して行きます。自分の為、みんなの為、出来る事をやり、動き出すことが必要なのだと悟ったマリルーの行動を、ぜひ良く観て欲しいです。女性の自立する姿を観て、感動して欲しいです。
私は、この作品、お勧めしたいと思います。フィリピンにこんな時代があったのだと、ぜひ知るべきだと思いました。映画の構成もとても上手くて、良く出来ていたと思いました。これ、日本公開、あるかなぁ。フィリピン映画だから、あんまり日本の配給会社が買ってくれないかなぁ。でも、面白いものは面白いから、出来れば、ぜひ、皆さんに観て欲しいな。もし、公開してくれたら、ぜひ観てくださいね。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
http://tiff.yahoo.co.jp/2013/jp/lineup/works.php?id=C0003