「蠢動」の試写会に連れて行ってもらいました。
ストーリーは、
享保の大飢饉(ききん)から3年の月日が流れ、山陰の因幡藩は一見平静さを取り戻しているように見えた。だが、城代家老の荒木源義(若林豪)の耳に、幕府から派遣された剣術指南役の松宮十三(目黒祐樹)が不審な動きをしているという知らせが届く。荒木は用人の舟瀬太悟(中原丈雄)に申し付け、松宮の挙動に目を光らせるよう手配するが……。
というお話です。
将軍吉宗の時代、地方への締付けがキツかったそうです。現代と同じように、公共事業をするための予算を地方の藩に出させるということをさせていたようで、その藩にどれくらいのお金が蓄えてあるのかを探っていたそうなんです。地方の藩は、貯めても貯めても、幕府に持って行かれてしまうので、出来るだけ藩の予算がいくらあるかということを、解らないようにしていたんです。そんな中、幕府から送られた武術師範が、予算を探るスパイであり、それを知った藩の家老たちは、なんとか予算を知られないように、色々な手を打つのですが・・・。

将軍吉宗って、倹約をして、幕府を立て直したすごい人と言われていますが、地方から見れば、倹約倹約で、年貢は取られるし、大変だったようです。これ、本当に、現代の日本と一緒ですよね。国を立て直すために消費税を上げたり、色々な予算を削ったりしているでしょ。でも、国民には負担になっていく。仕方ないと思いながらも、少しでも余裕が欲しいと思って、ヘソクリとかするでしょ。そんな感じです。

幕府は、国を維持させて発展させるためにインフラ整備をしなければならないし、藩の家老たちは、藩の民を守る為に予算を残しておいて、もし飢饉や災害があった時に使いたいし、下の者は、しあわせに暮らせることを望んでいるし、誰もが、それぞれの立場で、自分の為だけの事を考えている訳では無く、みんなの生活を良くしようと望んでいるんです。でもね、お金の量は決まっているから、誰もが納得出来るような配分は出来ないし、必ず不公平ってことが起こってくるんです。
そして藩は、藩の民を守る為に、仕方なく一人の青年に罪を着せる形で事態の収拾に当たる事とし、家老荒木の義理の息子である原田に命じて、動き始める事となる。原田は、自分の教え子である青年を犠牲として良いものか、深く悩むが、大勢の民を守る為には仕方のない事だと父に言われ、身を切る重いで、行動し始める。
これは、いつの時代も、永遠に解決しない問題ですよね。今でも、テロリストに人質にされた人間を救出したいけど、一度、テロリストの要求に屈してしまったら、また同じ事件が連続で起こる事になるし、究極の選択が必要ですよね。でも、やっぱり、一人の命と何千人の命を天秤のかければ、もちろん、何千人を助ける事になるでしょう。でも、捨てられた一人と、その家族の気持ちは、行き所がないですよね。本当に、辛いと思います。他の人たちを助けるためと言われても、納得が出来ない。そりゃ、当たり前です。
今の時代にも通じる問題を、武士道精神が生きている時代、まして吉宗の時代に持って行って描いていて、とても深いお話になっていました。武士の時代は、義理と人情が重んじられていたにも関わらず、民を助けるためには、人情を捨ててもやらなくてはならない事があったという悲しいお話です。辛いでしょ。
主人公原田を演じた平さん。ステキでした。舞台では良く観ていたのですが、時代劇にとても合う顔ですね。サムライとはこうあって欲しいという感じの顔なので、もっと時代劇をやって欲しいと思いました。他の大御所たちは、もう、文句の付けようがないですね。安心して観ていられます。でも、若者たちと、さとう珠緒さんは、ちょっと観ていて辛かったな。特に、さとうさん、時代劇、合わないっ!日本髪がまったく合わないんです。セリフもたどたどしいし、この時代の女性のキリッとしたものが一切無いので、私はダメでした。青年たちはかわいいんだけど、平さんと対すると、平さんの存在感が強いので、若者がちょっと物足りなく感じました。
でも、全体的には、深くて考えさせられる良い映画だったと思います。若い方には、時代劇なので、ちょっと辛いかも知れませんが、年配の方には、とてもお勧めして良い作品だと思います。若い方も、時代劇にちょっと触れてみて、昔も今も、同じ問題があるのだなという事を、感じてみてはいかがでしょうか。この作品は、本当に、昔からの時代劇の流れを汲んでいるような映像でだし、内容なので、時代劇と言うものに触れるには、とても良いと思います。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
・蠢動-しゅんどう-@ぴあ映画生活