今日は、舞台「かもめ」を観てきました。
ケラリーノ・サンドロヴィッチさんの演出で、ロシアの有名なチェーホフの「かもめ」を上演するとのことで、せっかく舞台を観る楽しみを覚えてきたので、そろそろ、こういう古典も観てみなければと思って、行く事にしました。チェーホフのお話って、良く、高校の演劇部とかが文化祭とかでやりますよね。でも、考えてみたら、キチンと、小説を読んだこともないし、舞台も観た事が無かったんです。
ストーリーは、
帝政ロシア崩壊前夜。ある湖畔の別荘地では、作家志望の青年トレープレフ(生田斗真)が、演劇の革新を目指し、女優志望の娘ニーナ(蒼井優)を主役に自作の芝居を上演する。有名女優である母アルカージナ(大竹しのぶ)は、愛人で有名作家のトリゴーリン(野村萬斎)と共に、その上演に居合わせるのだが、母アルカジーナは、芝居をちゃかしてばかり。彼女の言動にトレープレフは上演を止めてしまう。ニーナは、名声に憧れて、トレゴーリンに惹かれて行き、トレープレフは、母親のみならず、ニーナまでトレゴーリンに取られた気持ちになり、どんどん引きこもって行く。そして・・・。
というお話です。

ロシアの小説って、どうしてこんなに暗いのかしら。しあわせになりました、ちゃんちゃんっていうお話って、聞いたこと無いです。ロシア系の人達って、そんなに暗そうに見えないんだけど、時代がそういう時代だったのかなぁ。寒い国だしね。
トレープレフという青年は、とても繊細で、ネガティブなタイプなのだと思います。彼をそんな性格にしてしまったのは、母親のアルカージナ。アルカージナという女性は、自分を中心に世界が回っていると思っているような女性で、とても強い女性です。有名女優で何年もやってきたような人だから、強くなるのは当たり前なんですが、それにしても、典型的なわがまま女優という感じでしたね。そんな母親を見て育ってきたトレープレフは、大人しくてかわいい雰囲気のニーナに惹かれて行きます。やっぱり、母親みたいなタイプはイヤだったんでしょう。でも、結局は、どんな女性も、母親と同じように強く、自分一人で立ち上がれるようになってしまうんです。男の理想とは、かけ離れてしまうというのが、現実かも知れません。
ニーナを思うトレープレフは、ほとんどストーカー状態で、彼女が他の男のところに行ってしまっても、その消息を追い続けていたようです。これ、女からすると、マジでキモいよねぇ。演じているのが生田くんだから、キモいっていう気分にならなかったけど、これ、普通にやっていたら、ストーカー規制法で接近禁止になってると思うなぁ。

母親の愛人トリゴーリンは、有名小説家なんだけど、こと女に関してはフラフラしていて、若いニーナが新鮮に見えた時は良かったけど、段々と飽きてきて、やっぱりアルカージナのところに戻るということになります。男の立場からすれば、安心出来る年上の女性のところの方が、精神的に安定するのかも知れませんが、女の立場からすれば、なめてんのかオッサンと言ってしまいそう。まぁ、若い女性って、名声とかに弱いから、直ぐに引っかかって、騙されちゃうのかも知れませんが、気を付けましょうね。
この舞台を観て、男と女の有り方と言うか、立ち位置と言うか、なんて言うんだろう、今更ながら、男と女は、完璧に種類が違うのだと思いました。だから、オネエとかって、本当はあり得ないと思うんです。脳の構造からして、男と女は違うんだから。
この話に出てくる人物は、とても個性溢れていて、まるで小さな社会を構成しているように見えました。その中で、男と女の役割、男と女の立場がはっきり分かれていて、そのバランスによって、世界が出来上がっている。面白いと思いました。誰が欠けても、成り立たないの。こういうところが、この話が、長い間、人々に好まれている要因かなって思いました。
もう、話については知っている方の方が多いと思うから良いですね。舞台ですが、しっかりした俳優さんばかりで、文句の付けようが無いと思いました。私のような素人がどーのこーの言えるようなレベルのものでは無いという事です。本当に、のめり込んで観てしまいました。特に、大竹さんのアルカージナ役、凄かったです。母親であり、大女優であり、自信に溢れているこの役は、大竹さんにピッタリだったと思います。何度も大竹さんの舞台を観ているのですが、今回は、特に、凄い人だと思いました。

生田くんのトレープレフ役も、繊細さが良く出ていて、ステキだったな。どんどん悲劇に向かっていく役なんだけど、どこかお坊ちゃま的で、抜けている感じがあって、母親が頭を撫でるのも解るような、そんな男性でした。ニーナ役の蒼井さんは、無垢な少女時代と女に成長した時のギャップがすごく大きくて、まるで別人のように見えて、凄いなって思いました。たった2年の間に、人間としての苦労を一気に受けたような感じで、あまりの変化に、本当に同じ蒼井優ちゃんかなって思っちゃいました。
トリゴーリン役の野村さんは、ピッとしていて、色っぽくて、目が離せなくなりました。やっぱり、ステキですねぇ。ちょっと座っているだけなのに、そこだけ空気が違うような感じなんです。良かったよぉ~。
この話は、きっと、観る度、読む度に、違う考え方が出来るような気がしました。やっぱり、古典と言われるお話は、深いんですね。今回、観る事が出来て良かったです。この題材、色々な人の舞台を観てみたいと思いました。だって、演出する人によって、全然違う描き方になると思うんです。今回は、ケラリーノさん版で、こんな悲劇になりましたが、もしかして、コメディにだってなっちゃうような話かも知れない。面白い題材だなと思いました。
この舞台、もし、観れるようなら、ぜひ、観てみたら良いと思います。大御所俳優さんたちの共演で古典が観れるなんて、こんなしあわせな事って、そんなに無いと思いますよ。舞台、素晴らしかったです。私は、もしチケットが取れるようなら、また観てみたいと思う舞台です。ただ、既に、立ち見が出ていたので、これ、完売なんだろうなぁ。すごい舞台だもんなぁ・・・。
でも、古典演劇に触れるって、とても大切だということを知りました。また、古典を観たいです。
シス・カンパニー「かもめ」
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