舞台、「わが闇」を観てきました。ケラリーノ・サンドロヴィッチさん演出の舞台で、横浜でも1回だけ公演すると知り、急いでチケットを頼んで、観てきました。
ストーリーは、
三十余年前———柏木家は、人口1000人にも満たない小さな村「御五色村」に引っ越して来る。小説家である柏木信彦には三人の娘がいた。長女・立子は齢10歳にして文壇デビュー。同業者として、信彦は立子に嫉妬の念を抱いていた。一方で、妻の基子がふとした事で情緒不安定に陥るようになり、ある事柄をきっかけに自らの命を絶ってしまう。月日は流れ、現代。病床に臥せた信彦のドキュメント・ムービーを製作する為、二人の男が柏木家を訪れる。一見、さしたる悩みもなく日々を過ごしているように見える柏木家の三姉妹だったが、それぞれが人には言えない「事情」を抱えて暮らしていた。季節が過ぎ行く中、彼ら彼女らの「事情」が浮上してくる……。
というお話です。

話としては、表立って、すごい出来事がある訳では無いのですが、人が生きていれば、それぞれに思いがあり、ふと言われた一言が、心に突き刺さり、いつまでも自分の周りに闇を作ってしまう事ってありますよね。そんな日常に潜む闇を描いている舞台です。
なんか、父親が小説家だったりするけど、このお話に出てくる家族は、一般的な家庭だと思うんです。たまたま、娘も小説家になってしまったけど、でも、たとえ小説家で無くても、同じ事が起こったと思うし、色々な出来事が心に積み重なって、性格も出来上がって行くから、どの家庭にも起こることを描いていたと思います。それなりに自分を抑える術も身に着けて行くし、キレてしまう時はキレるし、人生って、どんな道を辿っても、同じだよなぁって感じた内容でした。
長女の立子は、小説家という職業に付いてしまった為に、父親と確執が出来てしまい、悩んでいます。次女の艶子は、長女と三女に挟まれ、大人しくすることが家族の為になると思い、感情を抑えています。三女の類子は、感情的で、あまり周りを見ずに行動してしまう女性です。結構、典型的な姉妹の性格ですよね。そんな3人にプラスして、色々な人が関わってくる。
まず、3人の父親の柏木ですが、普通の男性だと思うんです。でも、妻の基子が異様に神経質で、それが精神の病気だという事で病院に入って、その間に、他の女性を好きになってしまう。まぁ、当たり前だと思うんですよね。確かに、妻にとってはすごい裏切りかも知れないけど、夫を暖かく見守るような事が出来ない妻なら、妻なんて要らないって思われても仕方ないような気がするんです。やっぱり、お互いに思いやることが出来なければ、それは別れるのが一番だと思います。
そして、両親があまり上手く行っていないと、やっぱり長女がしっかりするし、三女は反発するって、お決まりですよ。次女が大人しくなるのも理解出来ます。本当に、ここら辺の姉妹の性格は、王道だと思いました。
姉妹の関係で、あるあるって思ったのがお金の問題。次女だけ結婚しているのですが、次女が受け継ぐお金に、夫が口を出すんです。これ、最悪ですよね。夫が受け継ぐお金に、妻が口を出すって、良くあると思うんですけど。結婚していても、夫のお金は夫のお金、妻のお金は妻のお金。いくら夫婦でも、そこは口をだしてはいけない部分なんですけど、口を出す人間、居ますよね。どこまで欲深いんだって思います。お金が欲しいなら自分で稼いで来いって!結構、こういう話を聞くので、人間性を疑ってしまいます。
もう一つ気になったのが、長女が、どこまでも頑張ってしまうところ。色々な事があるんですけど、全部抑えて、自分の中に押し込んで、自分が家長として、家族の事を一番に考えてしまうんです。普通なら、ブツッとキレてしまうと思うような事が起きても、冷静にしなくちゃと頑張ってしまう。あまりにも痛々しくて、かわいそうでした。そんな痛みを姉妹も解り、お互いを思いやって、暮らして行くという姿が、良かったなと思いました。
このお話は、感想をどう書いてよいのか解りません。観方によっては、ただ、普通の生活を淡々と描いているだけに見えるんですけど、でも、それぞれに、闇が積み重なって行く姿が描かれていて、だけど、それを押し込めて、人は前に進まなければならなくて、闇があるからと言って、それが不幸なのではなく、それなりに幸せを感じて、人生はプラスマイナス0になるのではないかと思わせる感じが、私には、感動でした。あー、そうだよなー、人生って、そんなもんだよなぁ。いつも良いことがある訳ではないけど、その時々に、しあわせを感じる事もあるし、決して、それは、不幸なのでは無いのだと感じたんです。
雰囲気で感じる舞台なのかなって思いました。これは、好き嫌いが分かれる内容かも知れないけど、私は、結構、自分の生活の中と同じものを感じることがあり、感動でした。
まだ、地方も周られるようなので、お時間があったら行ってみてくださいね。
ぜひ、楽しんできてください。
ナイロン100℃結成20周年記念企画 「わが闇」 http://www.cubeinc.co.jp/stage/info/nylon40th.html