「シャニダールの花」その花は命の炎を灯し、下等動物の人間を見下げているのかも知れない。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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「シャニダールの花」を観てきました。お友達が舞台挨拶があるらしいよって教えてくれて、急いでTOHOシネマズ川崎のチケットを取りました。前から2番目だったので、ちょっと映画が観にくかったけど、キャストの方は、超近くて、感動でした。綾野さん、会えて嬉しかったなぁ。舞台「サイケデリック・ペイン」以来だったので、感激でした。


ストーリーは、

レアなケースだが女性の肌に植物の芽が出現し、この世のものとは思えないきれいな花が開花するという奇妙な現象が起きていた。満開時の花びらの持つ特殊な成分に目を留めた製薬会社は、探し出した花の提供者を「シャニダール」という特別な施設に集める。そこで働く研究者の大瀧(綾野剛)と新人の響子(黒木華)は、提供者たちのケアにあたる。段々と、花の影響が人間に出るということが解り・・・。

というお話です。


ゆきがめのシネマ。試写と劇場に行こっ!!-シャニダール

この映画で、とても印象に残ったセリフが「人間が進化の最終形態だと思ったが、違うのかもしれない。」という言葉です。言われてみれば確かに、人間が一番進化しているかのように、地球上で振る舞っているけど、進化出来ているなら、こんなに人間がわざわざ動いて社会を構成する必要ってあるのかな。進化が最終段階に行ったら、植物的な感じで、動かなくても社会が構成され、何の害も無く、ただ脳で考えるだけ感じるだけで良くなるのかも知れない。感情も緩やかになり、自然の風に揺らされるだけ。


手塚治虫先生の火の鳥の漫画で、確か、最終形態が植物の星に行きついて、猿田博士となる青年が驚くという話があったと思うけど、もしかして、植物が一番進化しているのかも知れない。テレパシー的な物で意思の疎通もしていて、人間を笑っているのかも知れない。そして、人間が花になるのも、時間の問題なのかも。そんな思いに行きついた映画でした。


ゆきがめのシネマ。試写と劇場に行こっ!!-シャニダール

主人公の大瀧は植物学者で、人間の女性の身体に生えてくる花の経過を見守る職務に付いています。大切に育てて、開花させられれば、その花から新薬開発の成分が抽出出来るとのことで、皆、心待ちにしているのです。育てて行く中で、宿主の女性の心理状態が花にも影響し、花の状態が宿主の心理に影響を及ぼすという事が判ってきて、大瀧と一緒に働く響子は、花と人間の関係を調べ始めます。

恐いですよね。自分の身体に、ある日、月下美人のような花がポッコリ生えてきたらどうします?私なら、直ぐに抜くけどなぁ。どう考えても、身体に種子が入ってしまったのではないかと思い、根がはっていたら困るから、ちょっと身体を切って、種子を掘ろうかと思います。でも、この映画の中では、とてもその花を大切にして、育成するんです。不気味ですよね。

ゆきがめのシネマ。試写と劇場に行こっ!!-シャニダール

大瀧は、とっても大人しくて従順そうな人なんですけど、恋人である響子が花の影響を調べ始めて、おかしくなって行くのを見て、段々と、怒りを覚えて、彼女を守りたいという人間的な動きをしていきます。それまでは、植物的と言うか、あまり感情を外に出さないようなタイプだったのですが、人間的になるんです。

そんな大瀧と響子が、どのようになって行くのか。花とは、いったい何なのか。人間は、花と、どのように関わって行くのか。すごく深い結末が待っています。人間とは何なのか。生きているというのは、どういう事なのか。私は、すごく考えさせられました。働かずに、ただ施しを受けるだけの人間は、植物と同じではないのか。反対に、植物は高次元で活動をしているのではないのか、世界を動かしているのではないのか。この世界は、解らない事ばかりだなって思いました。

ゆきがめのシネマ。試写と劇場に行こっ!!-シャニダール

綾野さん、大瀧という人物の意思の動きをとても良く表現してくださっていて驚きました。植物から動物に変わり、また植物的に変わって行く様子が、とても良く解りました。感情を受け止める側から、放出する側に変化して、また受け止める側へ、その大瀧という人物は、とても複雑で、悲しい事実を受け入れて行かなければならない。難しい役だったと思います。

響子役の黒木さんも、感情を出さず、とても植物的な人物を、美しく、気高い雰囲気を醸し出して演じていてくださって、あの花を、そのまま人間にしたような雰囲気でステキでした。一見、妖艶でグロテスクに見える赤い月下美人に似た花が、響子とリンクして、上品で清潔そうに見えて行くのが、バランスが取れて良かったです。


ゆきがめのシネマ。試写と劇場に行こっ!!-シャニダール

私は、この映画、とても面白かったし、考えさせられて良かったです。お勧めしたい作品です。アクションなどとは違いますが、ある意味、すごいSFだし、人間とは、植物とは、進化とは、などなど、考える部分が多くて面白いです。キャラクターも個性的で、私は、好きです。ガチャガチャした楽しい作品とは違いますが、静かに考えられる映画が好きな方は、ぜひ観てみてください。


ゆきがめのシネマ。試写と劇場に行こっ!!-シャニダール

この映画を観たら、手塚治虫の「火の鳥」を読みたくなりました。なんか、壮大な話だなぁ。

もう一つ、綾野さん、また舞台をやって欲しいな。また、彼の舞台を観てみたくなりました。あの繊細な表現の仕方が、映像だけではなく、舞台で観てみたい。お願いします。


ぜひ、映画、楽しんできてくださいね。カメ




シャニダールの花@ぴあ映画生活



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