舞台、「盲導犬」 を観てきました。
ストーリーは、
新宿。 コインロッカーの前で、盲人の影 破里夫(古田新太)は“不服従”の伝説の盲導犬・ファキイルを呼んでいた。彼はフーテン少年(小出恵介)に出会い、自分の代わりにファキイルを探してくれるように頼んだ。そこへ、あかずのロッカーを開けようとする女、奥尻銀杏(宮沢りえ)が現れ、鍵を持つ夫はタイで現地の女・トハに殺害されたと言う。ロッカーの中には、銀杏の初恋の人タダハルの手紙が入っているのだ。
タダハルは、盲導犬学校の教師になるべく研修していて、ロッカーの前に現れる。何故か、盲導犬学校の先生(木場勝己)はいつしか、銀杏の亡夫/男として現れ、銀杏に犬の胴輪をはめて彼女を盲導犬にしてしまう。犬の毛が飛び散るなか、突如現れた自警団たちにリンチを受ける破里夫の爪でロッカーの鍵が開き、その中から探し求められていた黒い犬が飛び出し、銀杏の喉笛を噛み切って走り去る。鮮血にまみれた銀杏は何度も犬の名を叫ぶ。「ファキイル!」
というお話です。

ストーリーを読んでも、きっと、良く解らないと思いますが、この時代(1960年代~70年代)の社会情勢が、主人と服従者という、2方向に分類されて行くような時代で、服従させられるのを容認せず、自由に生きたいという思いが、このお話の中に入っているのではないかと思いました。
私も、服従することは絶対に出来ない人間で、首輪をされそうになると、首を切ってでも逃げてやろうと思うタイプなんです。束縛されるくらいなら、死んで自由になりたいと思う方なの。だから、この舞台を観ていて、盲導犬の胴輪をはめられた銀杏が悶え苦しむところで、私まで息苦しくなってしまいました。服従させられるくらいなら、ファキイルに殺して欲しい。

確かに、社会の倫理に沿った生き方をしろと言われるのも解るし、常識でものを考えろと言われるのも解ります。でも、倫理も常識も、振れ幅が大きくて、それぞれに違うものでしょ。社会には、たくさんの人間が居て、それぞれに考え方を持っているので、型にはめられて、それに従えと言われても、納得出来ませんよね。振れ幅が大きいということを認識した上で、良い道を探していく事が必要で、自分と違う考えでも、そういう考え方もあるよねと受け入れて行くことが、大切なのではないでしょうか。
今の時代も同じだと思うなぁ。だって、学校でも、みんな同じ事が良い事みたいに教えるし、学芸会をすると、全員が主役でしょ。主役は、いつの時代も一人で、それぞれ自分に合った役を見つけないとね。競争をさせないという事が、根本的に間違っているんです。優劣があるからこそ、助けたり助けられたり、自分に合った道を自由に探して、誰かを服従させるなんてこと必要無くなるんですよ。そうすれば、虐めも無くなるでしょ。だって、自分は、これでは誰よりも秀でているということが探せるんですから。自信を持てば、人の事なんて、気にならなくなる。

盲導犬というのは、盲人に付いて安全を確認しながら道を示す役目であり、自分で目的地が判っているのではなく、盲人の指示によって、その方角の安全を確認するのである。ということは、主人の指示に従い、目の前の安全確認はするものの、どこに行くかは判っていない。その場その場の事しか考えず、目的も何もない、自分の意思がどこにも無いという事ですよね。
別に、盲導犬を批判している訳ではなく、人間は、盲導犬であってはならないという事なんです。自分で考え、自分の意思を持ち、始まりがあれば、終わりもあるのだから、先を予想して、行動することが必要なのだという事だと思いました。
盲導犬は、大切な人間のパートナーだけど、人間が盲導犬にはなってはいけないんですね。それぞれに、役目がある。人間は、盲導犬の主人として生きる役目があるのならば、彼らに責任を持って、信頼と絆を結ばなければいけないんです。それぞれの立場、それぞれの考えを持ち、同じ方向ばかり向いているのでは無く、たくさんの視点を持ち、多方向を観ることが必要とされているのです。
人間って難しいけど、でも愛おしい。いつまで経っても、同じ間違えを繰り返し、同じ事に気が付いて、やり直していく。神様が愛おしいと思ってくれるのは当たり前ですね。同じ人間だって、そう思うんだから。相変わらず、アホでマヌケで、そして、どこかに優しい気持ちを持ち合わせている。そんな日本人で、いつまでも有りたいと思う、今日この頃でした。

この舞台、もう少し続くのかな。東京の後、大阪で上演されます。2時間弱の舞台なので、立ち見券でも、たくさんの方が観に来ていらっしゃいました。出来たら、ぜひ、今、観ておくべき舞台だなって思いました。こんな時代だからこそ、一人一人が考えて欲しいなって思う内容でした。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
(写真を、新聞のサイトなどからお借りいたしました。問題があるようでしたが、ご連絡ください。
すぐに対処いたしますので、ご了承ください。)
「盲導犬」 シアターコクーン http://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/13_moudouken.html