「25年目の弦楽四重奏」を観てきました。
ストーリーは、
ダニエル(マーク・イヴァニール)、ロバート(フィリップ・シーモア・ホフマン)、ジュリエット(キャサリン・キーナー)、ピーター(クリストファー・ウォーケン)から成る弦楽四重奏団は、結成25周年を迎えようとしていた。そんな折、チェリストのピーターがパーキンソン病を宣告され、引退を申し出たことで残されたメンバーは動揺する。それを機にライバル意識や家庭の不和など、それまでセーブされてきた感情や葛藤が噴出し……。
というお話です。
25年も一緒に組んで、演奏の仕事をしていたら、家族のようになってしまうのでしょうね。音楽って芸術だから、絵と一緒で、精神面に色々問題があったりすると、直ぐに音色に出てしまうと思うんです。隠すことが出来ないですよね。もちろん、プロなら、ある程度は技術で隠す事が出来るのでしょうけど、でも、専門の方には、解ってしまうんだろうなぁ。
だから、パーキンソン病を宣告されたピーターは、ある程度は技術で隠せても、完璧と言える演奏は出来なくなるということが解り、引退をすることに決めたのだと思います。それは、プロであれば、当たり前だと思うのです。会社に勤めていれば定年というのがあるけど、自分で仕事をしていると定年って無いから、いつまでも、ダラダラと仕事を続けている人っていますよね。

確実に身体も脳も衰えているし、仕事に支障が出ていると思うのに、全く気が付かない人って、見苦しいと思います。お客様に迷惑をかけているのに、自分の利益のみしか考えないのは、老害と言って良いでしょう。若い人に教えて、譲って行くのが、年寄が出来る事なのに、いつまでも自分で手綱を握っているのは悪ですね。本当に、みっともない。
ピーターが引退するに当たり、他の3人も、それぞれ、今までの25年を考え始めます。
今までずっと第2バイオリンを弾いていたロバートは、前に出たい自分を抑えて、引き立て役に居るという事に不満を持っていたという事に気が付き、前に出ることを望みます。今まで、第1バイオリンのダニエルに遠慮をし、彼の言うとおりに進めていた事に耐えられなくなり、爆発します。

そして、ビオラのレイチェルは、音楽家である前に、ロバートの妻であり、母親であるはずなのに、その仕事をおろそかにしていたと言われ、ロバートとの仲も、ある出来事で上手くいかなくなり、まして、父親代わりだったピーターが引退する事になり、その上・・・と色々な事が重なって、八方塞がりとなります。
最後に、第1バイオリンのダニエルは、完璧な演奏を目指す芸術家タイプなのですが、ピーターに、完璧でも情熱が無いと言われ、傷ついているところへ、ある女性(この女性がミソです。)と出会い、愛し合い、昔失った愛を取り戻して、これから情熱を取り戻すというところまで来るのですが・・・。色々、問題はありますよね。
一人が欠けることで、四重奏全てが崩れ始めてしまうのですが、それは、抜けて行くピーターが補修して、立て直すしかありません。どんな仕事でも、抜けて行くものが、問題無いようにしていかなければならない。「飛ぶ鳥、跡を濁さず」と言うでしょ。そして、後に引き継がなければね。それが、老人の役目です。
音楽がメインのお話ですが、人の引き際というものが、どれほど大切なのか、後に引き継いで、自分は美しく消えて行くというのが、どれほど素晴らしい事なのかと教えてくれて、感動でした。自分の引き際は、美しくしたいですね。迷惑な人間だと思われて消えて行く事だけは、イヤだと思いました。
私は、この映画、すごくお勧めしたい作品だと思います。親子の愛や、男女の愛、色々な人間の人生を、音楽に合わせて、奏でてくれて、とても楽しめる作品です。但し、これも完璧な単館系映画なので、静かな映画が苦手な方は、辞めておいた方が良いかも知れません。
ぜひ、楽しんできてくださいね。
・25年目の弦楽四重奏@ぴあ映画生活