舞台「断色」を観てきました。
ストーリーは、
時は近い未来。
自然農法の畑作を行う小杉保(堤 真一)の母・小杉朝子(麻生久美子)が腎臓ガンで亡くなり、 まもなく保のもとに怪しげな保険外交員の刈谷(田中哲司)がやってくる。母・朝子はクローン保険に入っていたのだ。「残されたクローンは処分にするか、解放にするか?」刈谷の質問に「え、どうゆうこと?」と困惑する保。保険で作られたクローンは本人が亡くなることによって、殺されるか、普通の生活を営むかの選択をしなければならなかった。母親の遺した保険が、保を奇妙な運命へと導いていった。
というお話です。
堤真一さん、麻生久美子さん、田中哲司さん、3人の舞台です。青山円形劇場での上演なので、360度、観客席があり、面白いだろうなぁと期待していたのですが、期待以上でした。凄い舞台装置ではないのに、そのテーブルとか机だけで、十分にその場面に見えてしまうような、そんな感じなんです。
このお話、すごく良かったです。SF的な話なんですね。クローンが人々の生活に溶け込んできている時代、クローン保険なるものが出来ていて、自分の臓器が病気に汚染された場合、そのストックとして、クローンを作っておくというものなんです。同じような映画で「アイランド」というのがあったけど、この話でも、やっぱり、ストックとしてのクローンが、問題となってきます。
クローンをストックしていて、本人が亡くなった場合、そのクローンは必要無くなりますよね。それをどうするかって事なんだけど、本来なら処分するべきでしょうね。だって、困るでしょ。死んだ人間の変わりが出てきちゃったら、人工統制出来ないよ。でも、処分か解放か選べるんですよね。不思議でした。
お話の中では、クローンを解放してもらい、お金が無いから自分で面倒を見るっていうんです。自分より若い姿で現れる母親のクローン。それって、やっぱり問題だよねぇ。いくら母親のクローンだからって、若い男女が一緒に住んでいたら、そりゃ、色々な問題が出てくるよね。まして、母親のクローンは、ずーっと世界から隔離されていたせいで、性欲も旺盛で、人間の常識というものが、良く理解出来ていないようなので、とんでもない下ネタを話したりするんです。

いやぁ、麻生さんの口から、あんなに凄い下ネタがこぼれてくるとは、大笑いしてしまいました。この下ネタ、オトナのコトを知っていないと、解らないでしょうね。面白かったです。結構、マニアック的なことも言ってましたよね。その下ネタを聞いて、困って、汗かいてる堤さん演じる息子の姿も、超笑えました。二人の掛け合いは、最高でしたね。
そして、私の大好きな田中さん。真面目なセールスマンなのに、いきなり豹変して、そんな事や、あんな事をしちゃって、ちょっとぉ~って思いました。イチゴのパンツはかわいかったです。私も、主人にイチゴのパンツ、買ってこようかしら。(笑) とても人間的な人物像で、一番、人間ぽかった、と言うのがちょっとネタバレになっちゃうんですけどね。欲望が渦巻いているのは、やはり、人間が一番なのでしょう。
クローンを造る時代になったら、やっぱり、たくさんの規制が必要になると思います。私は、クローンを造っても、カプセルの羊水から出さないことが基本だと思っています。ほらほら、あのマトリックスの世界のように、カプセルに入ったままで、産まれてから死ぬまで起きないの。そうしないと、必ず、個々に意思が生まれてしまい、悲劇が起こるでしょ。それならば、意思を造らせないのが一番だと思うのです。本体が亡くなったら、一緒に処分するのが、誰も悲しむことは無いと思うんですよね。
この話は、まるでコメディーのように始まるのですが、段々と深い闇に包まれて、恐ろしい沼に導かれて行きます。3人が、どんどん絡み合って、運命が変わって行ってしまう。もし、クローンを処分していれば、こんな事は起きなかったのに。愛が悲劇を呼んでいくことになってしまいます。
これ以上は、お芝居を観てくださいね、と言いたいけど、この演劇、7月7日までなんです。また再演はあるのかな。このお話、すごく良いので、ぜひ、再演して欲しいと思うのですが、劇団新幹線の細川プロデューサーが、この作品を最後に、芝居から距離を置かれるとの考えを出していらっしゃるので、どうなのかしら。他の方が引き継いで、また、やって下さると良いなぁ。
本当に、大人が観るお芝居として、とても楽しめると思いました。下ネタはもちろんながら、親子でありながら男と女であり、保険会社はクローンを制作しているクローンの親であり、色々な思いが交錯して、それぞれの人物の内面が表面に出てくる過程が、とても良いんです。キャストの方々が、とても表現が上手いのだと思うのですが、笑いながら、心に迫ってくるものがあり、感動が湧いてくる、すごい舞台でした。
(パンフが無くて、インタビューのあるシアターガイドを購入しました。私が観た他の演劇も沢山出ていて、とっても面白い本でした。年間購読してみようかな。)
私は、この舞台、超超お勧めしたいと思うのですが、もう終わっちゃうんですよねぇ。これ、ゲキxシネとか、DVDにならないのかしら。円形劇場だから、映像にするのは難しいのかなぁ。はっきり言って、また観たい舞台です。
ぜひ、皆さんも楽しんでくださいね。