「しわ」を観てきました。スペインのアニメーションです。ジブリが紹介しているアニメだったので、気になって、観に行きました。あまり上映している映画館が無いんですけどね。
ストーリーは、
養護老人ホームに預けられた元銀行員のエミリオ。お金に細かい同室のミゲルなど、施設に集まった老人は人それぞれ。完全に介護を要する老人は2階の部屋に入れられることもわかった。そんなある日、アルツハイマーのモデストの薬と自分の薬を間違えられたことから、エミリオは自身がアルツハイマーだと確信する。ショックを受けたエミリオのために、ミゲルは何とかしようと考えた結果……。
というお話です。

レディースデーだったのに、何故か、ほとんどが年配というか、ご老人の方ばかりで、アニメーション映画に、これほどお年寄りが観に来ているということに驚きました。でも、お年寄りの行く末の映画なので、気になられたのかなとも思って、考え深いものがありました。
老人ホームに入れられたエミリオは、周りの人に段々と溶け込みながらも、同室のミゲルの悪癖を良く思っていないんです。だから、あんまりミゲルを信用していなくて、時々、衝突したりしているんです。ミゲルの方は、エミリオを最初は、良いカモくらいに考えていたんだけど、段々と情が移ってきて、彼の面倒を見るようになって行きます。
老人ホームの中でも、ちゃんと一つの社会が出来上がっていて、それなりの序列とかもあり、助け合いもあるんですけど、やっぱり、物忘れが酷くなり、アルツハイマー病で、何も解らなくなる人も多くて、誰もが、そうなる事を恐れながら生活しているんです。何度も同じ事を言ってしまったり、同じ行動を繰り返したりと、自分ではそんなつもりが無くても、やってしまっているという事に気が付く内は恐怖があるんですけど、気が付かなくなったらそれでお終い。アルツハイマー病ケアのフロアに移動することになるんです。
誰もが年を取り、誰もが出来事を忘れて行く、そんな日を向かえるんですよね。そればかりは、どんなに努力をしても、止めることは出来ないし、何時そうなってしまうのかも、神のみぞ知るなんです。本当に、それまで偉そうなことを言っていても、どんなに地位があっても、お金があっても、名誉があっても、なんの足しにもならなくて、ただ、老いて死んでいくだけ。
それは、不幸と言う人もいるでしょうけど、私は、幸せな事だと思ってしまいました。だって、最後はみんな一緒っていうことですもんね。どんなに悪い事をして人を出し抜いたと喜んでいても、結局は、同じように死んでいく。何の役にも立たない。

誰もが同じように、嫌なことや、辛い事をすべて忘れて、しあわせな事だけ頭に浮かべながら、静かに消えて行くというのは、人間として最高のことじゃないかな。家族の事なんて忘れて、自分がしあわせだった瞬間だけ、頭に浮かべていられるなら、そんなしあわせな事、ありませんよ。
辛い映画のように見えるけど、それまでの下らないこだわりを捨てて、忘れてしまうことはしあわせな事なのだと思ってしまえば、年を取ることも、アルツハイマー病も、それほどの恐怖にはならないでしょ。周りの人に迷惑をかけないように、病院に入るか、安楽死(「母の身終い」を観てください。)を選ぶか、どちらにしても、早いうちに自分の選択を決めて、文書にしておくことが、迷惑をかけずに、しあわせに忘れて行ける道筋の最初だと思いました。
この映画、出来たら、たくさんの年代の人に観て欲しい。こういう良い映画は、NHKとかが購入して、人々に提供するべきじゃないのかな。高い給料を社員に払うなら、こういう映画にお金を払えっつーの。
超お勧めしたい映画です。でも、あまり上映している映画館が無いので、もし、観れないようなら、DVDを待って、観てくださいね。
ぜひ、楽しんでください。