【フランス映画祭】「母の身終い」自分の最後の時を決める選択は、誰にも口出しさせない。 | ゆきがめのシネマ。劇場に映画を観に行こっ!!

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観てきた映画、全部、語っちゃいます!ほとんど1日に1本は観ているかな。映画祭も大好きで色々な映画祭に参加してみてます。最近は、演劇も好きで、良く観に行っていますよ。お気軽にコメントしてください。
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フランス映画祭の12作目は、「母の身終い」を観ました。


ストーリーは、

48歳のアランは、長距離トラックのドライバーだったが、麻薬の密輸に加担したため服役し、出所したばかりだ。彼は母親が一人暮らす実家で人生のやり直しをしようとしている。だが几帳面な母親とは昔から折り合いの悪いアランは、なかなか希望しているような仕事につけない焦燥感もあり、事あるごとに母親とぶつかり合う。ボウリング場で知り合い一夜を過ごした女性ともちゃんとした恋愛関係を深める事ができない。しかし、ある時アランは、母親の脳腫瘍が進行しており、母親がスイスの会社と契約を交わし尊厳死を実行しようとしていることを知る・・・。そしていよいよ母親がスイスに出発する朝が来た。アランは母親の選択にどう対処するのか。

というお話です。


ゆきがめのシネマ。試写と劇場に行こっ!!-母の身じまい


このお話は、すごく考えさせられる内容でした。自分の母親が、最後の時を自分で決めていたら、子供は、母親に何をしてあげられるのか。母親をどう送ることが、一番の親孝行なのか。


アランは、刑務所から出てきて、母親の家で暮らしています。何歳になっても、母親にとって、アランは息子であり、彼が鬱陶しいと思っても、つい、小言を言い、世話を焼いてしまいます。そんな、外から見ると、微笑ましい親子なのですが、アランからしたら、大人の自分を子供のように扱う母親に嫌気がさして、家出することもしばしば。


大人なのに家出って、ちょっと笑ってしまうんだけど、私、解るんです。だって、私も、実家に帰ると、食事も母親頼みだし、洗濯も任せっぱなし、あれが食べたい、これが食べたいって、甘えてしまいますもん。もちろん、ちゃんと食事をしているかとか、夫と上手くやっているのかとか、たくさんの小言を言われ、あー、面倒くさいなぁって思ってしまいます。だから、一緒に住んでいたら、たまに、家出もしたくなるわよね。


ゆきがめのシネマ。試写と劇場に行こっ!!-母の身じまい


喧嘩もするけど、でも、深いところで繋がっている親子なんです。親子の繋がりをとても良く表している場面があるのですが、ある日、親子喧嘩をして、アランが家出して、向いの家に転がり込むんです。アランも母親も意地っ張りで、アランが居る場所を知っても、声をかけたり、誤ったりが出来ないんです。そんな時、いきなり母親が、かわいがっているペットの犬に殺鼠剤を与え、何をするのかと思ったら、向いの家に電話をして、犬の具合が悪いから助けてくれと助けを求めるんです。もちろん、その家にはアランが居るので、駆けつけてきて、一緒に動物病院へ。それで仲良くなるんです。犬は、二人の仲を取り持って、満足したように、腹を出して寝ているという場面があります。犬も苦労するなぁ。(笑)この場面で、親子がとても深く繋がっているということが解りますよね。


そんな親子なんですが、母親は、末期のガンであることを息子に隠しています。そして、脳への転移が確認された時、母親は、スイスの尊厳死を補助してくれる会社と契約をしていることを息子に打ち明け、自分の病気が酷くなる前に、美しい状態で死ぬことを選びたいと話します。


ゆきがめのシネマ。試写と劇場に行こっ!!-母の身じまい


母親は、意識も無くなり、管を身体にたくさん付けられ、ただ心臓が動いているだけというような自分の姿を考えたくなかったのだと思うのですが、自分の死を自分で決めるというのは、すごい勇気の居ることだと思いました。強い意志を持っていれば決断出来るけど、家族に泣かれたりすれば、やっぱり命が惜しくなってしまうのではないかと思います。人間には、欲と恐怖がありますからね。


アランは、そんな母の決意が固いものと解り、静かに、その事を受け止め、母親を送ろうと決めます。アランは、あまり話をしませんが、その表情と仕草で、彼の決意も理解することが出来ます。普通なら、お母さん、死なないでくれとか、俺を一人にしないでくれとか、泣き叫ぶ人もいると思うのですが、アランは、静かに、受け止めます。それだけ、母親を信頼し、母の決めたことは尊重しようと考えたのだと思うんです。



ゆきがめのシネマ。試写と劇場に行こっ!!-母の身じまい


とても静かな映画なのですが、すごく考えさせられました。自分の生き様、死に様を、どうプランニングするか、自分という人間のエンディングをどうプロデュースするかということが、それまでの人生全ての価値を決めることになるということを感じました。”終わり良ければ総て良し”という言葉があるように、最後が醜いと、すべてが醜くなってしまう。それは、人間のプライドなのだと思います。


フランスの映画ですが、最後の美という面では、日本と、とても似ていると思いました。見た目では無く、精神の美ですね。映画の中に、静かな和の美しさが見えました。



ゆきがめのシネマ。試写と劇場に行こっ!!-母の身じまい


私は、この映画、超お勧めしたい映画だと思います。必ず、誰もが体験する、親との別れ。そして、子との別れ。親のことを思い、子のことを思い、静かに送ることが、相手のためになるのだと、感じさせてくれます。どんなに仲が良くても、悪くても、お互いを尊重し、尊敬し、送り、送られたいですね。


この映画は、今年の秋に日本公開されます。ぜひ、観に行ってみてくださいね。

ぜひ、楽しんできてください。カメ