フランス映画祭の8作目は、「ウェリントン将軍~ナポレオンを倒した男~」を観ました。
ストーリーは、
1810年、ナポレオン皇帝はマッセナ元帥にポルトガル征服を命じる。フランス軍は難なくポルトガルへの進攻に成功したが、それはウェリントン将軍の罠だった...。本作はウェリントン将軍率いる、イギリス・ポルトガル連合軍が、ナポレオンを破るまでの戦いの中で巻き起こる、数々のドラマ。
というお話です。

フランス映画なのに、ナポレオンを倒した男の側から見た戦争の悲惨さを描いていて、フランスのナポレオン軍が悪者のように描かれていて面白いなって思いました。イギリス側から見たナポレオンの侵攻は、結構、お粗末な作戦で、ウェリントン将軍の方が戦略的には長けていたような気がしました。
但し、この映画は、英雄の映画ではなく、一般市民が、自分たちを守ってくれるであろうイギリス軍との関係と、侵略してきているフランス軍との関係を、色々感じながら、ある者は殺され、ある者は生かされ、どちらの軍とも敵対してしまう村人や、戦争を良いことに、略奪を重ねる聖職者などなど、火事場泥棒のような人間が居たり、どこまでも慈悲深い人もいたり、色々考えさせられる内容でした。
こういう映画を、群像劇っていうのかな。戦争というものを中心として、人々がそれぞれに行動をしている姿を、淡々と細やかに描いていくので、目を皿のようにして、それぞれの人物を覚えて行かないと、誰が、どこに繋がっているのか、途中でこんがらがると思います。私も、あれっ?この人は、死んだと思われてたけど助かった人だなとか、フランス軍から逃げ出したポルトガルの兵士だったかなとか、それぞれの場面で、それまでの場面を反復しながら観なければならなくて、ちょっと忙しかったかな。(笑)

でも、歴史の話としては、とても面白いと思いました。ほとんどが、あまり文書などになっているものではないので、今まで人に触れられることのなかった歴史が紐解かれていて、とても勉強になると思います。この映画を観て、ナポレオンの侵攻とはなんだったのか、少し、歴史の本を読んでみようかなって思いました。
邦題は、「ウェリントン将軍」となっていますが、原題は、「ウェリントン将軍の砦」という意味だそうで、砦を作って、フランス軍を阻止したという事柄を中心に、たくさんの人が動いていたのだということを描いたそうです。

ウェリントン将軍役のマルコヴィッチさんは、ほんの少ししか出演しませんが、とても強烈な印象を残します。ウェリントンは、ナポレオンを生涯の敵とみなし、何度も戦ったそうで、私生活でも、敵対心をむき出しにしていたそうです。観ていると解りますが、ナポレオンの肖像画に対抗して、同じような構図の自分の絵を描かせていたり、彼の性格が解ると思います。

この映画は、故ラウル・ルイス監督が準備していた作品で、準備中に亡くなってしまったので、ラウル監督のパートナーであるバレリア・サルミエント監督が引き継いで、作り上げたそうです。ラウル監督の最後のプロジェクトだったこともあり、フランスの名だたる俳優たちが出演希望を出してきて、本当に豪華なキャストがそろっています。ジョン・マルコビッチを筆頭に、メルヴィル・プポー、マチュー・アルマリック、ヴァンサン・ペレーズ、カトリーヌ・ドヌーヴ、イザベル・ユペール、ミシェル・ピコリ、キアラ・マストロヤンニなど、誰もが主役をはれる人ばかり。本当に豪華でした。え、それだけの為に、その人っ!!って感じでキャストを使っていて、驚きますよ。

私は、この映画、歴史ものが好きな方には、すごくお勧めしたいです。歴史に興味がなくても、豪華なキャストを観るだけでも、価値があると思います。話は、群像劇的なので、途中で気を抜くと、ちょっとわからなくなる部分もあるかもしれませんが、ま、あまり考えずに楽しむことをお勧めいたします。
2014年の春に、日本公開が決まっていますので、少し待っていてくださいね。
ぜひ、楽しんできてくださいね。