フランス映画祭3作目は、「短編作品集」でした。
「全てを失う前に」
学校をさぼって橋の下に隠れている少年。恋人との別れを惜しみ、バス停で涙にくれている少年の姉。彼らを順番に車に乗せていく母親。3人はスーパーマーケットの駐車場に到着し、急いで店内に入っていく。夫の暴力から逃げるため、子供をつれて他の土地へ逃げることを決めた彼女は、勤務先に給料の精算を頼みに来たのだ。ようやく未払い分の一部を手にしたものの、店内や周辺で彼女を待ち伏せる夫を避けて店から出ていかなくてはならないが・・・。
というお話です。
夫のDVから逃れるというのは、本当に大変な事ですね。子供も一緒だったら、もっと危険だと思いました。一緒に逃げなければならないけど、夫だけを残して移動すると、見つかりやすいし、既に疑っているだろうから、気をつけないと、捕まって、もっと酷いことになる。もしかして、殺人まで起きてしまうかも知れない。こういう時は、必ず協力者を何人か作ってからでないと、怖ろしいですね。短編ながら、その緊迫感と恐怖が伝わってきました。すごい力作だと思います。

「妻の手紙」
大戦の前線で、看護士のシモンは負傷兵の壊れた体を彼らの恋人や妻、故郷で待つ女性たちの手紙を使って「修理」していく。女性からの手紙には治療の力があるのだ。しかし、予期せぬ死に襲われても紙に書かれた言葉はまだ人を救えるのだろうか。
というお話です。
人形アニメーションで、とても良く出来ていました。戦争で、家族や恋人と別れなければならない人々の苦労や悲しさを表現していて、感動しました。死んでしまった戦士に当てられた手紙を使って、まだ助かる兵士を助ける衛生兵。死んでいった兵士と想い人の思いが、きっと傷を治すのだろうと思います。悲しい作品ですが、最後に希望があるので、とても感動しました。

「からっぽの家」
17歳のヴァンサンは、1人で夏休みを過ごしている。お金を稼ぐ為に、錠前屋の父親を手伝っている。ある日ヴァンサンは誰もいない家に空き巣に入るが... 。
というお話です。
空き巣に入った家で、ヴァンサンが出会う不思議な出来事。悪い事をするために入ったのだろうけど、今は、もう逝ない人の思いを受け取って、それを伝えることになります。それは、生きている人を、もう一度、生きている世界に戻すための思い。いつでも、大切な人を残して逝った人は、大切な人の事を心配しているのだという事が伝わってきて、これも感動作でした。

「日本への旅:捕縄術」
捕縄術は人を紐で縛る日本の伝統武術。緊縛はいわゆるボンデージで、セクシーな大人の遊び。作者が日本を旅して知った、幅広い捕縄術の使用法がイラストとともに紹介される。
というお話です。
不思議な国、日本を、縄縛りというものを通して描いています。超短編なのですが、日本という国が、どれほど面白いか、不思議なのかということが表現されていて、面白く見ることが出来ました。

「オマール海老の叫び」
ロシア出身の6歳のナタリアは両親とともにフランスに移住したばかり。チェチェンに闘いにいった兄ボリスの帰りを心待ちにしている。そして遂にその日がやってくるが、ナタリアは戸惑い、いぶかしがる。これが本当に兄のボリスなのか...?
というお話です。
短編ながら、戦争の悲劇を強烈に印象付けてくれる作品でした。やさしかった兄が、戦争によって変わってしまったと感じたナタリア。兄が近づいてきても、逃げるばかりで、家族は心配しているが、家族は、兄の変化に気が付いていなかった。気がついていたのはナタリアだけ。そして、悲劇が起こります。これほど短い中に、長編に負けないほどの訴えることが詰まっていて、考えさせられました。

「移民収容」
フランスの移民収容所。マチルドは、そこに閉じ込められた外国人たちの権利を守るために奮闘している。ある日、ウクライナからユリがやってくる。彼の強制退去を防ぐため、マチルドの時間との闘いが始まる...。
というお話です。
不法移民を強制送還する施設の中で、不法移民ながら、しっかりとした仕事を続けていたユリを、なんとか送還しないで済む方法を色々模索し、手を尽くすお話です。この移民の問題は、どの国でもありますよね。不法移民に働かれると、自国民の働く場が無くなることもあるし、治安も悪くなるので、強制送還するのが良いとは思うのですが、でも、移民側からすれば、自分の国では生活していくことが出来ないから移民してくるのだろうし、本当に、はっきり白黒付けられなくて困ります。日本も、フランスと同じように、色々と対処していくことが必要ですね。
「次で最後(63年秋)」
開かれた窓から田舎の風景が広がる「Sun in an empty room」(1963年制作)を映し出す。 フレデリック・ワイズマンによって演じられるホッパーの声と妻のジョセフィーヌの声が流れる中、アマルリックのカメラが絵の隅々を追い、そこに隠された謎を追って行く。
この短編は、ごめんなさい、良く、意味が解かりませんでした。絵の色々な部分を映しながら、詩的なナレーターで、その心情などが綴られていくのですが、どーも、私は、集中することが出来ずに、何が言いたいのか解かりませんでした。全体に美しいとは思うのですが、何とも感想が書けません。ゴメンネ。
「春」
森の奥深くの神殿。マスクをかぶった人形たちが春の祭を待ちわび、準備をしている。音楽が鳴りだす。生け贄がつながれた檻が一つ運ばれてくる。そして春を祝う祭りが始まる...。
不思議なアニメーションで、森の中での色々な精霊らしきもの達のお祭りが描かれていきます。人形アニメーションで、ちょっとティム・バートン的な感じと、「もののけ姫」的な感じが感じられました。きのこみたいな森の精が、あのもののけ姫の”こだま”のように見えたんです。とってもかわいくて、あれで、頭がカラカラ回ったら、もっとかわいかったなって思いました。お気に入りの作品です。
フランスの短編って、本当に良く出来ていますね。もっと、日本でも、若手がたくさんショートフィルムを作って、上映する場所があれば良いと思うんですけど。最初から、長編なんて無理だし、予算も無いでしょ。だから、短編で力をつけていって、認めてもらえたら、長編製作に繋がると思うんですけど、もう少し、若手にチャンスを与える短編の発表の場があると嬉しいです。
もっと短編という映画に窓口を開いて、たくさんの人が、身近に、簡単に楽しむ事が出来るようになると良いですね。そうしたら、もっと映画という世界が広がるように思います。
この短編は、ほとんど観ることが出来ないかも知れませんが、もしかしたら、横浜のブリリアショートショートシアターなどで観ることも出来るようになるかも知れません。それまで待ってくださいね。