「くちづけ」を観てきました。
ストーリーは、
知的障害を持つ娘のマコ(貫地谷しほり)を、男手ひとつで育てる愛情いっぽん(竹中直人)は、かつては人気漫画家だったが休業し、すでに30年がたっている。知的障害者のためのグループホーム「ひまわり荘」で住み込みで働き始めたいっぽんと、そこで出会ったうーやん(宅間孝行)に心を開くようになったマコ。しかしそんなある日、いっぽんに病気が見つかる。
というお話です。
この作品、衝撃でした。でも、この映画で描かれていることが現実だと思いました。障害者にやさしい社会と言いながらも、まったく現実がそれに付いて行っていなくて、彼らは普通に社会に馴染む事が出来ていませんよね。やっぱり、隔離と言うか、一般の仕事にも就けず、同じ教育を受けることも出来ず、同じようには生活が出来ていません。確かに、普通の人と同じようにするのは難しいのだと思うし、勉強も付いていくことが出来ないとは思います。でも、何か、一緒に生活することが出来たら良いのにと思うのですが、キレイ事なんですかね・・・。

障害者の娘マコを持つ”いっぽん”は、とても責任感が強くて、ずーっと、一人で娘マコの面倒を見てきました。妻が先に死んでしまい、自分の仕事を止めて、娘の面倒を見るようになりました。障害者を持った親なら、娘の面倒を自分で見なければいけないと思うのは当たり前で、でも、すべてを自分ひとりで背負うのは辛いことで、もう少し、無責任な親なら、施設に預けて、自分の仕事を優先するとか出来ただろうに、本当に、観ていて辛くなるような親子愛でした。
障害者を取り巻く環境や、問題、色々な事が、この映画から読み取れます。障害者手当てで優雅に暮らし、息子を施設に預けてお金も払わない親。逢いに来ない家族。障害者を見てはキモいと騒ぐ高校生。一般の人は、障害者と言うと、やっぱり恐いという気持ちが先に立ってしまうと思うんですよね。いきなり興奮すると何をするか解からないとか、頭は子供でも身体は大人だから押さえられないとか、私だって、もし、そういう状況になったら恐いと思います。だから、一概にこういう人の事を責められないですよね。誰の心の中にも、色々な思いがあるんです。

キレイ事では済まされない、障害者の問題。だから、出生前診断が、今、議論されているけど、私は、診断するべきだと思います。親は、どんな子供でも愛せるだろうし、命だからというかも知れないけど、苦しむのは、子供なんですよね。一生、その子供は、周りの人間から奇異の目で見られるし、人に出来る事が自分に出来ないのだと苦しむことになる。しあわせと言いながらも、もし面倒を見てくれる親が先に死んでしまったら、どうやって生きていくのか。産む親の問題じゃなくて、子供が生きていけるかという問題なんです。それは、本当に辛い選択を強いられる事だと思いますが、自分の事より、子供の未来を考えて欲しいです。
この映画でも、いっぽんが、もし死んでしまったら、マコちゃんはどうなるの?ってことも考えなければならないし、マコちゃんもお年頃の女の子だから、結婚だってしたいだろうし、いろいろな問題が出てきます。それは、どこまで行っても、スッキリした解決方法なんて無いんです。世界のすべてが、彼らの時間に合っていれば何の問題もないんだろうけど、世界は、一般の人間の時間に合っているから、障害者には息が切れてしまうと思います。どうしようもない、現実です。

色々な問題をかかえる”ひまわり荘”は、どうなっていくのか。そして、”いっぽん”とマコちゃんは、マコちゃんと恋に落ちたうーやんは、どうなっていくのか。最後の最後まで、涙涙のお話でした。でも、この映画で描かれていることは現実であり、ボランティアや行政のいう事は、キレイ事で、現実離れしているのだということを、良く認識出来ると思いますし、自分の心の中を見透かされたようで、それも、悲しくなりました。
お父さんのいっぽんが、どれほどマコちゃんと愛しているかということが、心に突き刺さります。竹中さん、すごく良い役ですね。そしてマコちゃん役の貫地谷さんとうーやんの宅間さん、障害者の役が上手くて、ビックリでした。宅間さんは、舞台でも演じていらしたのかな。この原作はセレソンの舞台でしたよね。宅間さん、すごいです。
私は、この映画、ぜひ、たくさんの方に観ていただきたい。とても良い映画だし、すごく感動出来ると思います。私、大泣きでした。出来たら、若い人から大人まで、みんな観て欲しいです。
超お薦めいたしますので、ぜひ、楽しんできて下さいね。
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