イタリア映画祭、7作目は、「家の主たち」を観ました。
ストーリーは、
タイル張り職人のコジモとエリアの兄弟は、ローマからアペニン山脈の小さな村にやって来る。有名だった歌手の家のバルコニーのタイルを張り替えるためだ。重病の妻のために歌手は引退したと言うが、二人の仲はそうは見えない。村にも不穏な空気が漂っていて、次第に住民と外部からの兄弟の間で緊張が高まっていく。兄弟役はヴァレリオ・マスタンドレアとエリオ・ジェルマーノで、ベテラン歌手のジャンニ・モランディが歌を披露する。ロカルノ国際映画祭コンペ部門出品。
というお話です。

この作品、ヒューマンドラマだけど、ホラーと言っても過言ではないと思ってしまいました。すごい内容で、日本という島国に居ると、こういう縄張りを守るという気持ちが、とっても良く解かるのではないかと思いました。いやぁ、この映画、面白かったなぁ。
まず、最初に、小さな村の村長の息子が、自然保護区域でオオカミを撃ち殺してしまいます。これが、この映画を象徴しているのですが、自分に向かってくる者は、何であっても倒してしまう。たとえ、保護動物であっても、容赦が無い。それは、大きな社会のルールには従わず、自分の中だけのルールで対応してしまう。あってはならない事だけど、その地域では、それが通ってしまうという恐ろしいルールです。

そんなルールで生きている村人たちの中に入ってきた、タイル職人の兄弟は、ローマから村に来たよそ者で、村の住民は、よそ者にはとても冷たいんです。自分たちだけの村だと思っているので、よそ者を受け入れるという体制が無いんですね。でも、村に済む有名な歌手の家の工事ということで、よそよそしくも、一応、キチンとした対応をしている村人たちなのですが、村長の息子だけは、村の中で逆らう者は居ないと思っているので、よそ者に対しても、横暴な態度を取ります。
もう一つは、有名な歌手ファウストと妻の関係。ファウストは、妻のモイラを本当は愛しているとは思うのですが、どうも上手く行っていないように見えます。モイラはパーキンソン病なのかな、身体がほとんど動かなくなってきているんですね。ファウストは、愛しているんだけど、どんどん動かなくなり、介護が無くては生きられないような状態が酷くなっていく妻を、段々と、見ているのが辛くなってきたのだと思います。

そして、モイラの方も、夫が自分の事を愛しているけど、迷惑に思ってきているというのを感じて、自分でも、死にたいと思っていたのではないかと思います。薬を飲まないんですよ。この二人の関係も、どんどん悲劇に向かっていきます。いやぁ、これは、介護でノイローゼになっていく人の気持を表しているような気がしました。たとえ、自分で面倒を見ていなくても、愛していた時の妻とは、どんどん変わってしまって、見ていられなくなるのって、すごく解かるんですよね。愛していれば愛しているほど、見ているのが辛い。
そんな二つのお話を軸に、話は、どんどん酷い方向に向かっていきます。それは、静かに、恐ろしいほど美しい自然の中で、誰もが狂って行く姿は、本当に凄かったです。
歌手のファイストには、イタリアですごく有名なポップス歌手だったそうです。昔は、イケメン歌手として大人気で、今でも、ある程度の年齢の方は、写真を持っているような、そんな感じなのかな。日本で私の時代で言うと、近藤雅彦とか田原俊彦みたいな感じなのかしら。今は、年をとってしまって、お休みしているのかな。そんな彼が、すごい役を演じています。
そして、音楽にもこだわりがあり、出演している大御所歌手の昔の曲と新曲を使ったり、音楽を、「嫌われ松子の一生」を担当した日本在住のイタリア人音楽家がやっていたりして、ストーリーに合った感じを与えてくれて、迫ってくる感が良いんです。
この映画、私、超お薦めで、ぜひ、日本公開して欲しいんだけど、どうかなぁ。単館系だとは思うけど、この恐ろしさは、面白いと思うよぉ。ぜひ、公開を希望する1作です。
もし、観れる機会があったら、ぜひ観てくださいね。楽しんでください。
イタリア映画祭 2013 http://www.asahi.com/italia/2013/