明日から、また「イタリア映画祭」が始まります。あと2作、観る予定ですが、それまで、今、公開されている映画の感想をアップしますね。お楽しみください。(*^。^*)
「孤独な天使たち」を観てきました。
ストーリーは、
孤独を愛する14歳のロレンツォ(ヤコポ・オルモ・アンティノーリ)は、家でも学校でも煙たがられていた。そんな彼が、学内恒例のスキー合宿に参加すると言い出し、母親のアリアンナ(ソニア・ベルガマスコ)は大喜びする。だが、ロレンツォは最初からアパートの地下室に隠れ、羽を伸ばして思い切り好きなことをするつもりだったのだが・・・。
というお話です。
淡々としたお話なんです。大きな出来事がある訳でもなく、じんわり、ゆっくりと、少年がさなぎから蝶に脱皮していく姿を描いているんです。その脱皮は、強烈な異母姉が現れることから始まり、少しづつ少しづつ、今まで知らなかった出来事や、自分で抑制していたものを開放していったりして、変身していくんですね。
きっと、どんな人にでも、このさなぎから蝶に変わる時ってあると思うんだけど、ほとんど気がつかないですよね。この映画の彼も、自分では、ほとんど気が付いていないんだと思うんです。でも、知識が増えて、世界に生きているのは自分だけではなく、たくさんの人間が居て、その中で、自分も生きていかなければならないのだということを理解していく。それは、意識してのことではなく、知らず知らずの内に、理解して行ってしまうんです。
自分のテリトリーに、人が入ってくると、子供の頃って、イヤですよね。それがいじめにつながったり、引きこもりに繋がったりすると思うんです。だけど、そのテリトリーを突き破って相手と交わることが、社会性を持たせて、大人になっていくということだと思うんですね。その突破が出来なかった人が、結局、社会に出れなかったり、お荷物と呼ばれる人になるのだと思います。
そんな子供から大人への変化を、丁寧に細かく描いていて、ああー、これ、繊細な映画だなぁって思いました。変化がゆっくりだから、ほとんど気がつかないんだけど、フッと前の段階を思い出すと、全然変わっているんです。それが、ほぉ~って思うんですよね。だから、観流してもいいんだけど、頭に印象を残していかないと、まったく、成長が理解出来ないと思います。
異母姉が出てくるのですが、これが、強烈なんですよ。異母姉にとって、ロレンツォは弟でもあるけど、自分と母親から父親を奪った女の息子なんです。だから、かわいいと思いながらも、内側に憎しみも抱えていて、最初は、憎しみなどは表に出さないんだけど、段々と一緒に生活して行くうちに、それが出てきちゃうんです。でも、ロレンツォは、異母姉が、そんな憎しみを抱いているなんて、全く思っていないので、どうしてこんなに性格が悪いのかと、素直に思っていて、そのギャップも笑えました。男の子って、女の憎しみのようなものを、あまり理解出来ないのでしょうね。
既に、女に成長した異母姉と、まだまだ子供のロレンツォの組み合わせは、結構、観ていて面白いですよ。いじめっ子が、嫌がらせをして怒るのを楽しんでいるように見えたり、姉が苦しんでいる時は、ちょっと心配になって近寄っていったり、この雰囲気が面白いと思いました。
この映画、私は、単館系の映画に慣れている人にはお薦めします。結構、細かくて繊細なので、深く考えて観てあげないと、眠くなっちゃいそうなんです。
お時間があったら、ぜひ、観に行ってみてくださいね。楽しんできて下さい。
・孤独な天使たち@ぴあ映画生活