「カルテット!人生のオペラハウス」を観てきました。
ストーリーは、
第一線を退いた音楽家たちが生活している「ビーチャム・ハウス」では、経営難のホーム存続を懸けてコンサートの準備に追われていた。そこで余生を過ごすレジー(トム・コートネイ)、シシー(ポーリーン・コリンズ)、ウィルフ(ビリー・コノリー)たちのもとに、かつてのカルテット仲間だったものの確執を残して去っていったプリマドンナのジーン(マギー・スミス)が入居する。コンサートを控えたメンバーは、疎遠だった彼女との再会に当惑するが……。
というお話です。
年を取った音楽家たちが過ごしているビーチャム・ハウス(老人ホーム)で、毎年行なっているコンサートがあり、それで寄付を募っていたらしいのですが、今年はチケットの売れ行きが悪いようで、経営難でホームが潰れてしまうのではないかと住人たちは心配しているのですが、何故か、その不安は、あまり職員に伝わっていないようで、何故か、住人は大騒ぎしているのに、そこの経営者や職員は、倒産しない為に、何か手を打とうとかっていう態度が一切見えないんですよ。普通、経営者がそういうことは心配するべきなんですけど、何故か、そこが一番不思議でした。

ま、経営者たちの態度は措いといて、経営難の老人ホームに、その昔、オペラのスターだったジーンが入所してきます。コンサートの花として、カルテットで歌ってくれれば、昔の大スターが歌うということで、人が集まるのではないかと思った、他の老人たちは、期待に胸を膨らませ、ジーンに歌ってくれるように促すのですが、ジーンは、年を取って、声が昔のように出ないことを悲しみ、歌うことを拒みます。

プロであればあるほど、自分の仕事が完璧で無くなるのは辛い事だし、認めたくないというのは良く解かります。でも、誰もが年を取るんですよね。それは仕方の無いことだし、きっと、失っていくものより、自分の内部に増えていくものの方が多いのではないかと思います。失くしたもの以上の、たくさんの経験が、自分の中に増えて、人の苦しみ悲しみも解かり、心が広くなり、素直になれる。それって、見栄も欲も無くなって、すべてを理解したお釈迦様みたい。生きている内に、そんな悟りまでたどり着けたら、なんてしあわせなんだろうって思います。

年を取るって、悪い事ばかりじゃないと思うな。 この映画でも、ガンコじじいとか、意地悪なおばあさんとか、色々いるけど、主人公たちは、人の痛みを感じながら、少しづつ心が広くなっていって、人のため、自分のために歌おうとします。それは、心からの歌で、誇らしげな歌声。そして彼らは、また階段を1段上がり、人間としての徳を積んでいく。そうやって、人というのは差が出てくるのでしょう。地べたで這い蹲って死んでいく者と、柔らかなベッドで静かに死んでいく者、どちらを選ぶかは、自分次第なんです。

私は、この映画を観て、年を取っても、それなりにしあわせだと思って生きていく方が得だし、堅くなって人を受け入れなくなるより、人と交わって自分を高めていくことが、最後の日までのしあわせを確実にするのだと思いました。年を取っても、閉じこもって生きるのではなく、やっぱり、外に出て行きましょう。
この映画、私は、年齢の高い方にお薦めかなと思いました。若い人だと、この映画で描かれている老いの苦しみと、経験への賛辞があまり解からないのではないかと思います。観る人に内容があればあるほど、この2つの重要性が解るのではないかと思います。
ぜひ、楽しんできてくださいね。