今日は、「耳なし芳一」の舞台を観てきました。神奈川芸術劇場で上演している、宮本亜門さん演出の舞台です。先日、ぴあの企画で稽古場を見せていただいて、とても面白そうだったので、母親と一緒に観に行く事にしたんです。
ストーリーは、
阿弥陀寺に芳一という盲目の琵琶法師が住んでいた。ある夜、寺の和尚が留守の時、突然一人の武士が現わる。芳一はその武士に請われて「高貴なお方」の屋敷に琵琶を弾きに行き、 壇ノ浦の戦いのくだりを演奏すると、皆熱心に聴き入り芸の巧みさを誉めそやすのだった。和尚は目の悪い芳一が夜出かけていく事を不審に思い、寺男たちに後を付けさせた。 すると芳一は一人、平家一門の墓地の中におり、安徳天皇の墓前で無数の鬼火に囲まれて琵琶を弾き語っていたのだった。
というお話です。
驚きました。舞台稽古で観ていた時は、演技指導などが中心で、実際の舞台が、こんなにも沢山の仕掛けで動かされていくというのは、一切解からなかったんです。観てみたら、本当に豪華で、こんなにも幻想的に見えるのかということに驚きました。
もちろん、演技や内容でも、充分幻想的なんですけど、それを、大きな舞台上で、大きな人形が襲ってきたり、映像を使って、海の中を表現したり、亡霊を表現したり、様々なもので幻想的な亡霊の世界を表現していて、とにかく、惹き込まれました。なんて美しくて悲しくて、冷たい空気なんだろうって感じると思います。
あの明るい山本くんが、悲しみと憎しみのようなものを内に秘めて、段々と死の世界に引き込まれて行く様子が、すごいんです。人間って、普通、明るい面と暗い面を持っているでしょ。だけど、不遇な人生を送って来た芳一は、真っ暗と言っていいほど暗いんです。ちょっとは、楽な気持ちになりなさいよぉって言っても、緊張してしまうような人なのよ。そんな役を、山本くん、良くやりました。素晴らしいです。驚いちゃった。
暗い芳一を、どーせ暗いなら一緒に亡霊の世界に来なさいよっていうのが、平家の亡霊で、安倍さんが演じています。安倍さんも、亡霊の役だから、海の底から響いてくるような低い声で、恐ろしくて悲しい雰囲気を醸し出していました。平家が壇ノ浦で海に飛び込む場面では、涙ぐんでしまいました。それくらい、悲しそうな声でした。
そんな「耳なし芳一」を執筆しながら、自分も、その亡霊の世界に入り込んでいく小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)。物語の中と、現実の世界の隔たりが、どんどん無くなっていき、自分が飲み込まれていってしまう姿が、悲しくもあり、もしかして幸せなのかもしれないと思わせて、とても良かったです。
芳一は亡霊に、”こんな世の中に生きている意味があるのか。”と言われ、確かに、苦しいことばかりだし、生きる意味などあるのかと考えてしまい、平家の亡霊に近づいてしまうんです。それって、すごく解かりますよね。人って、楽しいことより辛い事の方が覚えているから、そう言われたら、死の方に磁石が向いちゃいますもん。でもね、死は必ずいつかはやってくるものなのだから、そんなに急いで行かなくてもいいんじゃないの?芳一も、一時は引き込まれるけど、和尚などの話を聞いて、やっぱりそれは間違っていると思い直したんじゃないかな。確かに、死にたくなっちゃう時ってあるけど、芳一と亡霊の姿を観て、生きるということの大切さを感じられたお話でした。
そして、最後は、ちょっと原作とは違うラストが待っています。面白いですよぉ。目が話せません。それは、ネタバレになるから言えないけど、そこに行くまでの途中で、耳のお経を書き忘れたという下りは、今回、ちょっと違っています。ちゃんと耳にも書いていましたよ。後は、観てのお楽しみ。
21日までやっているので、ぜひ、お時間があったら、行ってみてください。17日は、安倍さんのアフタートークもあるようだし、とにかく、お薦めの舞台だと思います。
宮本亜門さんの舞台、すごくステキ~!!親子で、またファンになってしまいました。亜門さんの次回作も楽しみです。
そうそう、今日は、アフタートークで、山本さんと宮本さんが出てくれました。山本くんが、アンコールが1回しか無かったって心配していたけど、アフタートークがあることを皆さん知っていたので、わざと、長引かせなかったんだと思います。私も、早くトークが聞きたくて、ワクワクしてしまったもん。お話、とっても楽しかったです。肉まんを買いに行くときは、変装してくださいね。危ないです。(笑)
あー、また、山本くんの舞台も観たいな~。
「耳なし芳一」 神奈川芸術劇場 http://www.kaat.jp/pf/miminashi2013.html
写真を神奈川新聞などのニュース記事からお借りしました。問題があるようでしたら、直ぐに対処いたしますので、ご連絡をお願いいたします。m(__)m