「愛、アムール」を観ました。
ストーリーは、
パリの高級アパルトマンで悠々自適の生活を送る音楽家の老夫婦、ジョルジュとアンヌ。しかしその生活はアンヌの急な発病で暗転する。入院したアンヌを、本人の希望により自宅に連れ帰ったジョルジュは、家で介護する事にするが、アンヌの病状は悪化する一方。看護師に加え雇ったヘルパーに心ない仕打ちを受けた二人は次第に孤立していく。娘のエヴァが心配してアパルトマンを訪ねてみると、そこには憔悴したジョルジュがいた…。
というお話です。
ごめんなさい。私、この映画、作るべきだったのかなって思ってしまいました。確かに、映画としては、素晴らしいと思うし、演技も素晴らしいし、文句のつけようは無いんですけど、あえて、今、まだ健康に生きている人たちが、この状況を知る必要があるのだろうかって思いました。
老々介護って、確かに問題になっているし、自宅での介護で家族が壊れてしまうという事も、実際に良くある話です。それは、言われなくても解かることですよね。老夫婦が二人で暮らしていて、一人がアルツハイマーになってしまい、まして身体も動かなくなってくるとなると、どうしようもない。子供は居るけど、迷惑はかけたくないし、なんとか二人で暮らして行きたいと誰もが思うのでしょう。でも、そんな簡単に済む問題ではありません。一人の人間を一人で背負うのは、難しいんです。

ニュースで、介護疲れで、父親や母親を殺してしまったとか、夫や妻を殺してしまったとか、結構、聞きますよね。必死で介護をしていればいるほど、もう治らない相手に対しての不満やストレスが溜まって溜まって、絶えられなくなり、爆発してしまうのだと思います。それは、はっきり言って、仕方ないと思います。
家族を愛していれば愛しているほど、面倒を見なければと思うし、治って欲しいと思うし、その為だったら、なんでもしてあげたいと思うのだと思います。だけど、何年も何年も、それが続いてしまうと、限界が来てしまうのも当たり前です。介護をしている人間の方が壊れてしまう。
昔のように家が大きくて、座敷牢が作れれば、そこに監禁して面倒を見れば良いけど、小さなマンションで一部屋をあてがって、騒がれたら近所から文句を言われ、徘徊しないように気をつけて、頭にきて叩いてしまえばDVと言われ、もう、手の尽くしようが無くなってしまう。だから、悲しいニュースが多いのだと思います。もちろん、介護保険とか、色々あるのだと思うけど、やっぱり自分で見てあげたいって思っちゃうんだと思います。私だって、親や夫がそうなれば、自分で見てあげたいって思うもん。

毎日毎日、愛している人が壊れていく姿を見ていたら、胸がえぐられるようだと思います。以前は、輝くような美しさで、この映画の中の女性はピアニストだったので、美しい音色を奏でていたんです。美しく、優雅で、才能豊かな私の妻と思っていたのに、その天使が壊れていくなんて、絶えられなくなりますよね。
これからの老人介護の問題を提起しているとは思います。でも、この苦しみは、見ていなくても、経験していなくても、誰もが心で解かっているのではないでしょうか。いつの日か、死が訪れるのは当たり前だし、その死が、いつ来るのか、どう来るのかは解かりません。でも、介護というものが、老いていけば、必ず付いて回ることを知っているし、それが、そんなに簡単な事ではないと解かっている。

だから、解かっていることを、これでもかみたいに見せないで欲しいんです。良く、評論家とか解説者が、老人介護にはこういうことが付いて回るんだから直視しろとか言うけど、そんなもの、見なくても解かってるってーの。あまりに見せられると、もし自分がそうなりそうになった時、直ぐに自分で死ねるように薬とかを用意してしまう人だって出てくると思います。私は、迷惑になってしまいそうだったら、先に死のうと思ってるもん。
日本には、姥捨て山というものが昔あったでしょ。それは、老人が若い人に迷惑をかけない為に作った風習だったんだと思うんです。労働力で無くなったなら、迷惑をかけないために、その地を離れる。それは、老人たちの思いやりだったのでしょう。今は、人間も寿命が延びて、100歳近くまで生きるようになりました。元気であれば良いけど、もし人に迷惑をかけるようなら、自分から施設に入ったり、病院に行ったり、自分で動くことが大切ですよね。私も年を取ったら、そう心がけたいし、もし自分で判断が出来なくなった場合のために、署名、日付、捺印をした書面を書いておきたいと思います。

この映画、私は、あまりお薦めしたいと思いませんでした。映画としては、素晴らしいと思いますけど、あまり観たくないし、観せたくないなって思いました。自分の未来を見るようで、辛いです。
アカデミー賞を取ったので、気になる方は、ぜひ、楽しんできてくださいね。
・愛、アムール@ぴあ映画生活

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