先日、「クラウドアトラス」の試写会に行ってきました。
ストーリーは、
1849年、太平洋諸島。若き弁護士に治療を施すドクター・ヘンリー・グース(トム・ハンクス)だったが、その目は邪悪な光をたたえていた。1973年のサンフランシスコ。原子力発電所の従業員アイザック・スミス(トム・ハンクス)は、取材に来た記者のルイサ(ハル・ベリー)と恋に落ちる。そして、地球崩壊後106度目の冬。ザックリー(トム・ハンクス)の村に進化した人間コミュニティーのメロニム(ハル・ベリー)がやって来て……。
というお話です。
この映画、どうやって感想を書いたら良いのかしら。とても悩む映画です。系統でいうと、「インセプション」系の考え方が必要かな。但し、人の夢ではなく、人間の人生の連鎖なので、ちょっと違うんだけど、考え方は一緒と思っていただければ。
「クラウドアトラス六重奏」という音楽が主軸になり、6重奏なので、6時代の人間の繋がりを描いています。6時代、大体、100年置きくらいの人々かな。違う時代なんですけど、同じ人間が、同じ人々と出会い、関わっていきます。でも、その時代時代で、同じ人物に見えるけど違う人物であり、性格も、生きてきた経歴も違う。だから、悪人として生きていたり、善人として生きていたり、それぞれに違うんですけど、それでも、同じ人間に出会ってしまう。同じ人を好きになってしまう。

それって、仏教で言う輪廻と思って良いのかしら。前の時代の事を何も覚えていなくても、何故か、同じ人と出会い、同じ道を歩いてしまう。たとえば、どの時代でも同じ人に出会って好きになるのに、どうしても一緒になる事が出来ずに別れる事になってしまう。その理由は様々でも、結果を変えることは出来ない。それは神様が決める事だし、神の意志を変える為には、何か行動を起こさなければならない。神は気まぐれで、望めば、きっと、未来を変えてくれる。
だから、今の時代を精一杯生きて、自分が出来る事を悔いの無いように生きていれば、神の気まぐれで、どんどん未来が良い方に転がり始めるかも知れないと思えるようなお話でした。未来は、不確定要素がたくさんあり、ちょっとした事で変わっていく。自分の時代では良くならなくても、次の時代で良い方向に向いていくのかも知れない。たとえ地球が滅びても、人間の未来は輝いているんです。そこには、愛があるから。
なんか、ステキでしょ。愛で地球は救えないけど、未来の自分を良い方向には導く事が出来るかも知れません。それは、また、未来の事。今すぐに結果が出るものではないけれど、希望がそこにはあります。
この旋律に合わせて、人間が笑ったり悲しんだり、人間とはこう在るべきだというものはなく、人間は、それぞれ違っていて、色々な音を奏でているからこそ、集まると音楽になる。それが、素晴らしい旋律になるのだということが、ひしひしと心に響きました。
私は、とっても好きな映画です。きっと、何度観ても、新しい観点が見つかるでしょう。どの時代に、どんな生き方をしていても、すべてが美しい音楽となる。それって、素晴らしい事ですよね。私たちが生きている今も、美しい音楽を奏でているのだと思えました。それが、ソナタでもワルツでも、ピアニシモでもフォルテでも、クレッシェンドでもデクレッシェンドでも、短調でも長調でも、すべて美しい旋律で、最後に弦が切れるまで、振り向かずに音楽を奏でて行きたい、いや、生きたい。
この映画は、それぞれの話の感想などを書いても、ただの説明になってしまうんです。全体の旋律を観て、考えていかないと、映画のすべてが見えません。だから、観る時に、あまりそれぞれの話の細かい事を考えすぎないで、流して観て下さい。最後に必ず繋がってきます。但し、キーとなる4人の人物を見分けてくださいね。それが重要です。
私は、超お薦め映画なんですが、あまり考えたりする映画がダメな方は、辞めた方が良いと思われます。途中でイヤになっちゃうかも知れません。この映画も、「インセプション」のように、何度か観て、考察をまとめていくのが良いようなお話です。

たくさんの俳優の7変化が観れて、面白いですよ。トム・ハンクスとハル・ベリーだけではなく、たくさんの俳優が色々な役を演じています。エンディングを最後まで観ると、色々解かりますよ。直ぐに出ないで下さいね。
・クラウド アトラス@ぴあ映画生活