「フライト」の試写会に行ってきました。アカデミー賞の主演男優賞を取るかどうかって、話題ですよね。
ストーリーは、
パイロットのウィトカーは、睡眠不足と飲酒の状態が抜けないままアトランタ行きの旅客機に乗り込む。激しい乱気流での離陸になったが、彼の操縦テクニックは抜群で、機体は安定する。そんな中、アクシデントが発生！機体は制御不能となり急降下。ウィトカーはそのテクニックで緊急着陸に成功し、多くの乗客の命を救った。“奇跡の着陸”と一躍ヒーローとなった彼だが、事故後に行われた検査の結果、血液からアルコールが検出される。
というお話です。
飛行機事故がクローズアップされていますが、これは人間の尊厳を問う映画です。人間とは、どうあるべきか。自分を守るための嘘は許されるのか。そして、その嘘を自分が許せるのか。その究極の部分を描いていきます。
ウィトカーは、天性のパイロットであり、彼ほど危機対応能力に優れている人間はいないと言って良いほどの腕を持っていました。だからこそ、旅客機の墜落という状況でも、素晴らしい対応が出来て、ほとんどの人間を生還させることが出来たんです。そんな素晴らしい彼なんだけど、アル中でヤク中という、抜けられない闇の部分を持っていました。
誰でも、良い面と悪い面を持っているのは当たり前だと思います。でも、極端だと、判断に困りますよね。あまりにも素晴らしい人だったりすると、悪い事をしても、見るこちらの目が鈍ってしまいます。でも、悪いことは悪い。すごい才能を持っているのは認めるけど、やっぱり、ルールは守らないといけません。その素晴らしい部分で、悪い部分を大目に見てもらおうなんて事は、許されないんです。
この映画を観て、柔道の金メダリストの内柴さんを思い出しました。たとえ、世界一の金メダリストでも、ダメなものはダメなんです。犯罪は犯罪。同じように、以前、ミラーマンと呼ばれた、野村総研の植草さんという方もいましたよね。東大を出て、野村総研から早大の教授になった方ですけど、痴漢行為と盗撮で捕まりました。どんなに素晴らしい人でも、もう一方で犯罪を犯していたら許されない。
この映画でも、周りにいる人々は、目が曇ってしまっています。飛行機事故でたくさんの人々を助けた彼を、助けるために、証拠を隠蔽し、なんとか彼を無罪にしようとします。もちろん、彼のことを思ってですよ。彼を犯罪者にしないために、飲酒の事や薬の事は話さないように、彼に言いくるめるんです。でも、これって、どうなのかなぁ。
私も、観ている内に、段々と分からなくなってしまいました。だって、彼しか出来ないテクニックを持っていて、それによって、助かる人がたくさんいるのに、飲酒のせいで、その腕を使えなくなる。隠蔽しちゃって、リハビリでアル中を治せば、またその腕に頼ることが出来るのではないかと、一瞬思ってしまいました。
でも、罪は罪。今回は、彼の腕で助かった人が居たかも知れないけど、今度は、彼のアル中のせいで、犠牲者が出るかも知れないんですもんね。人間は弱いから、どうしても、これくらいなら良いや。飲酒くらい、どうってことない。自分は飲酒しても運転を間違うことは無いなんて、思ってしまうんですよね。ダメな事はダメ。許されるべきではないんです。ルールは守らなければ、社会が成り立たない。
デンゼル・ワシントンの演技が、今回、すごいんです。ヒーローの顔と、堕落したアル中の顔、二つの顔を見事に演じきっていました。これなら、アカデミー賞にノミネートされるだろうと思いました。でも、他のノミネート俳優の演技を観ていないので、貰えるかどうかは、なんとも神のみぞ知るです。
私は、この作品、とってもお勧めしたい作品だと思います。でも、飛行機事故の部分はほんの少しで、後は、じっくりしたヒューマンドラマなので、そういうのが苦手な方には、ちょっと大変かも。時間が２時間を超えるので、覚悟して観にいってくださいね。でも、感動すると思いますよ。
ぜひ、楽しんできてください。
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